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製造業界への実用化が進む金属3Dプリンター、2,500億円に成長見込み

ShareLabでは以前、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公開した調査データをもとに、2030年の金属3Dプリンターによる造形品の市場規模を考察記事をご紹介したが、金属3Dプリンター市場では新たな動きも増えてきたため、ここで改めて今後の金属3Dプリンター市場について考えたい。

今回は、JMAR(株式会社日本能率協会総合研究所)が提供するMDB Digital Searchで世界の金属3Dプリンター市場を調査し市場規模を推計した公開データからご紹介する。

2025年度、金属3Dプリンター市場は2,500億円に成長見込み

金属3Dプリンター市場概要

・2025年度の世界の金属3Dプリンター市場は、2,500億円となる見込み
・金属3Dプリンター導入効果:部品点数の削減、リードタイムの短縮、多品種少量生産を可能
・製造業への展開:航空宇宙分野、自動車分野、医療分野など付加価値の高い製品を中心に導入が進む
・各国での普及:中国の国営企業(CISRI)は2025年までに中型・大型を含む約200台の金属3Dプリンタを導入予定
・日本でも産官学連携プロジェクトなどを後押しに実用化が加速し市場の拡大が期待される

世界の金属3Dプリンター市場規模・予測グラフ(プレスリリースより引用)

金属3Dプリンター市場は、2025年度に2,500億円に成長すると予測されている。今まで試作品がメインだったが、今では海外を中心に実用化が進んできている。なぜ金属3Dプリンターが注目されているのか。

製造業における革新的な技術を提供する金属3Dプリンター

すでにご承知だと思うが、ここで改めて金属3Dプリンターが製造業で注目されている理由について整理する。そもそも金属3Dプリンターとは、CADなどで作成した3次元(3D)の設計データをもとに、レーザーや電子ビームを使って材料の金属粉を固め、立体の形状に積み上げて造形品を作る装置である。切削や鋳造などの加工方法では製造が難しい複雑な形状を造形することが可能なため、従来は複数の部品を組み合わせて作成していたものを、1つの造形品として一体成型できることが特徴である。

また、金属3Dプリンターは設計データと造形材料があれば製造が可能なため、多品種少量生産や一品物の生産が容易になる。このような特徴から金属3Dプリンターは、「大幅な部品点数の削減」「リードタイムの短縮」「在庫の削減などを可能にする」製造業における革新的な技術になると期待されている。

また、顧客のニーズに合わせての商品ラインナップが展開されていることも普及が増えている要因のひとつだ。金属3Dプリンターといえば、大型が多く価格帯が高額なイメージがあるが、設計部門などオフィス環境での使用も想定したデスクトップ型が2017年頃から登場し、大きく売上を伸ばしている。直径25cm程度のものを造形できる中型機が5,000万円以上、50cm以上の造形が可能な大型機は1億円以上という価格帯の中、デスクトップ型は小型品の造形に用途を絞ることで5,000万円を下回る低価格を実現し、需要を獲得している。

さらに、金属3Dプリンターは造形の精度や速度の技術進歩が進み、欧米の製造業を中心に実際の製造現場へ積極的に採用されている。幅広い分野に活用されており、航空宇宙分野では素材単価の高い部品の製造での活用や、自動車分野ではポルシェやブガッティなど高級車部品の量産、部品の試作、医療分野では人工関節の部品やインプラントなどの製造に使用されている。

こちらの記事では鉄道産業での金属3Dプリンター事例を以前ご紹介しているので、併せてご覧いただきたい。

各国で広がる金属3Dプリンターの普及

2019年度の市場を地域別にみると、金属3Dプリンターの市場は欧州と北米が中心となっており、両エリアで60%以上の売上を占めている。しかし、昨今ではアジア地域でもその動きが活性化してきている。

大規模導入を進める中国ー中国鉄鋼研究所グループ

中国の国営企業である中国鉄鋼研究所グループ(China Iron & Steel Research Institute Group 以下、CISRI)では、2025年までに中型・大型を含む約200台の金属3Dプリンタを導入する計画を発表している。国家の冶金分析・試験技術を牽引する役割を担う組織であるCISRIは、2019年にアディティブ・マニュファクチャリング(AM)・センター「CISRI G-Light」の建設を設立。中国の金属3DプリンターメーカーであるHBDと協力して、アディティブとサブトラクティブのハイブリッド技術を統合したレーザーパウダーベッド装置の開発を進めてきた。

大型造形可能な医療用の金属3Dプリンター「HBD-1000」(HBDより引用)

現在16台の中型・大型金属3Dプリンターの導入を完了させ、2021年度中に金属3Dプリンタメーカー HBDから23台の大型金属3Dプリンタの導入を完了見込みである。既に導入されている金属3Dプリンターは、HBD製品の大造形サイズ1立方メートルに達する超大型金属3Dプリンター「HBD-1000」や、EOSのクワッドレーザーシステム「EOS M 400-4」4台が導入されている。

CISRIは長期的な発展過程において、多くの国家プロジェクトやテーマを引き受けており、海洋、陸地、航空、航空宇宙、原子力技術、国民経済の産業分野と幅広い活用が予想されている。

経済産業省主導のもと、産官学連携を進める国内

日本は欧米に比べ、製造業への金属3Dプリンターの導入が遅れており、日本の市場が世界に占めるシェアは10%に満たない現状。

しかし、2014~18年度にかけて経済産業省主導のもと、産業用3Dプリンター技術を開発する産官学連携プロジェクトが実施され、装置や材料の金属粉末の開発に関わるメーカー、ユーザー企業、大学などの研究機関が同プロジェクトに参加した。2019年度以降その成果の実用化が進み、今後は国内市場においても需要の拡大を期待したい。

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シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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