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ヨーロッパの鉄道産業では補修部品調達に金属3Dプリンターを活用【動画あり】-導入事例

耐用年数が長い産業用輸送機器の代表格である鉄道だが、部品点数が多く耐用年数も長いため、補修用部品の調達は大きな課題だった。ドイツ鉄道とロシアの鉄道会社RDZの事例を取り上げ、補修部品製造の3Dプリンターによる調達に関して紹介していきたい。(写真はドイツ鉄道フランクフルト駅)

耐用年数が長い鉄道は部品の調達も長期間におよぶ

鉄道業界ではスペアパーツをいかに効率よく調達するかが大きな課題だ。鉄道車両のように利用者の生命を預かる重大な責任を負っているにもかかわらず、数多くの部品から構成されており、耐用年数もまちまちだ。定期点検時に必ず交換する部品は在庫計画も立てやすいが、耐用年数が長く耐久度のある金属部品が不意に故障すると、別注扱いで調達に時間がかかることになる。

ドイツ鉄道とGefertecの事例

こうした補修部品の調達は3Dプリンターが得意とする分野で、活用が進んでいる分野でもある。ドイツ鉄道はしばしば引き合いに出されるように、AMによる部品調達に積極的な取り組みを行っており、シーメンス、テュフズードと共にAMの品質管理を強力に推進してきた先駆者だ。

そんなドイツ鉄道だが、金属3Dプリンターの活用に際しては、ドイツの金属3DプリンターメーカーGefertec社のWAAM方式(Wire and Arc Additive Manufacturing:ワイヤーアーク放電方式)の金属3Dプリンターを活用し、交換頻度の少ない金属パーツの調達にかかる時間を10か月から5か月に短縮したと語っている。

ニアネットシェイプ(完成品の形状に近い造形)を狙って短期間で造形し、切削で仕上げる。調達方法の比較検討や、加工会社の手番待ち、輸送のリードタイムなどを考慮しなければ、実働時間は数日レベルに短縮できるという驚くべき結果を生み出すことに成功している。

3Dプリンターを活用した鉄道部品の30年メンテナンス計画―シーメンスとRDZの場合

シーメンスも前述のドイツ鉄道の部品調達では大きな役割を果たしているといわれているが、その他の実績としては、グループ会社のSiemens Mobilityでロシアの鉄道会社RDZに対して納入した29台の車両に対して30年にもおよぶ長期の保守契約を締結しており、2台のStratasysの3Dプリンター「 Fortus 450mc」 を導入して対応しているという事だ。

2台のStratasysのFortus450mcはロシアのサンクトペテルブルクとモスクワに設置されており、オンデマンドで迅速かつ費用対効果の高い3Dプリンティングを活用してレール交換コンポーネントなどの鉄道用パーツを製造する体制を整えている。

3Dプリンターを当初から想定した長期メンテナンスの実施に際しては、部品の3Dデータを一元化されたデータベースにオンラインで保存するなどの体制整備を行っている。保守チームは故障部品や消耗部品のデータに迅速にアクセスし、造形、交換でき、列車のダウンタイムを最小限に抑えることができる。

従来の製造技術だけでは達成することは物理的に不可能なレベルで、素早く補修部品を内製することで、保管スペースを削減しリードタイムを削減できる。シーメンスモビリティロシアのカスタマーサービス部長であるアレクセイ・フェドセエフ氏は、「Siemens Mobilityでは’Easy Sparovation Part’というサービス名でビジネス上の成功を見てきました。AM技術を活用した調達により従来の製造方法と比較して部品あたりの調達時間を最大95%節約しています。」と語っているという。

AMでの補修部品製造は産業用輸送機器分野で活用が進む

また同じような事例で、オランダのオランダ鉄道がデジタルサプライチェーンサービスプロバイダーのDiManExと複数年契約を結び、 3Dプリンティングによるスペアパーツ調達を行っている実績もあるが、鉄道以外でもイバルディグループが北欧船舶運航大手ヴィルヘルムセンと提携し船舶用補修部品のAM調達を進めているように、部品点数が多く、寿命が長い産業用輸送機器分野では大きな市場が生まれているようだ。部品には樹脂もあれば金属もあるし、大きいものから小さいものまで幅が広い。部品の一体化や材料置換で腕を振るう余地は多分にありそうな市場だけに今後の拡大が期待できそうだ。


編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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