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10分でつくれる「皮膚包帯」、宇宙空間で3Dバイオプリンターが活躍

創傷治療用3DバイオプリンターBioPrint FirstAidがISSに届けられた。宇宙空間での創傷治療を前進させるため、地上と連携した研究が進められている。

手のひらに収まるサイズの小型3Dバイオプリンターが作る「皮膚包帯」の特徴や、なぜ宇宙空間で皮膚包帯を利用するのか、気になるポイントを解説する。

宇宙飛行士の傷口を素早く治す「皮膚包帯用の3Dバイオプリンター」

BioPrint FirstAid の外観。ハンドガンの様なフレームに、針の無い注射器を取り付けたような様子。
BioPrint FirstAid の外観(出典:DLR)

ドイツ宇宙局(DLR)の第24回商業補給ミッションでは、BioPrint FirstAidと呼ばれる小型の医療機器が搭載され、国際宇宙ステーション(ISS)に届けられた。BioPrint FirstAid は、傷口に包帯を巻くことに利用する小型の3Dバイオプリンターだ。

宇宙飛行士自身の細胞をバイオインク内に保持するよう設計されており、傷の治療を早める。

宇宙空間だからこそメリットを活かせる「皮膚包帯」

実は、患者自身の細胞を用いて創傷治療を行おうとする取り組み(皮膚包帯)は特段新しいものではない。

しかし、「傷口を素早く治療する」というメリットに対し、細胞を採取する工程、培養する工程、シート状に成形する工程などでコストが掛かりすぎるというデメリットがある。普段、地球に住む私たちなら傷口に絆創膏を貼り、数日間の不自由を我慢すればよい。成形手術や火傷治療などを行う場合を除いて、皮膚包帯はコストとメリットがつり合わなかった。

このコストとメリットの関係は宇宙空間では逆転する。

これまでの研究で、微小重力条件下では、細胞間で生じる圧力が地球上と異なり、皮下への薬剤沈降効果にも違いがあるため、傷の治癒が遅くなる場合があることが分かった。宇宙ステーション内で様々なミッションを効率的にこなす必要のある宇宙飛行士にとって、創傷は致命的だ。

宇宙空間での治療補助の取り組みから見るBioPrint FirstAidの特徴

こうした宇宙空間での創傷を素早く治療しミッション遂行を手助けするため、さまざまな企業や団体が問題解決に取り組んでいる。

2018年、ロシアの研究所である3D Bioprinting Solutionsは、「Organ Avt」という3DプリンターをISSに送り宇宙で生体組成を印刷するための実験を行った。

3DプリンターメーカーのnScryptと宇宙船部品メーカーのTechshotが共同で開発した 3Dバイオプリンティングシステム BioFabrication Facilityも 2019年にISSに届けられた。こちらは心臓組織を無重力化で3Dプリントするという野心的な試みだ。

こうした従来の取り組みに対し、DLRはより実務的な領域の実証実験を進める。同社が目指すのは治療器具の小型化と、宇宙空間における治療の迅速化だ。皮膚の再生に使われる医療用3Dバイオプリンターは、通常かなりの容積を占める。これは細胞組織の培養、成形にそれなりのスペースが必要となるためだ。

一方で、BioPrint FirstAidは、事前に宇宙飛行士から採取した細胞を培養させてバイオインクとするため、巨大な培養装置群が必要ない。創傷治療を行う際には、生体高分子と架橋剤を架橋させ、10分程度で皮膚包帯が出来上がる

こうした、限定的な小型化、迅速化によって、宇宙飛行士のミッション遂行をサポートすることが期待されている。

BioPrint FirstAid のデモンストレーションを行う様子(出典:DLR)

地球上と連携して研究を進める

ISSに届けられたBioPrint FirstAidは研究段階のプロトタイプだ。宇宙飛行士自身の細胞は使われておらず、傷の治療には使われない。

今回は、宇宙空間で利用した場合の創傷治療効果と、地球上で同様に使った場合の効果の比較が目的とされている。人間の細胞が宇宙空間でどのように成長していくかを研究することで、今後の創傷治療を発展させていくことだろう。

また、BioPrint FirstAidのコンセプトは、宇宙空間だけでなく地球上でも利用可能なものだ。将来的には皮膚包帯のコストを大幅に低減し、創傷治療器具として気軽に利用できるようになるかもしれない。私たちの身近で起こる創傷治療の変化も、今後の研究成果次第となる。

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