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タイヤ切断用Ti合金ブレードの修復にDED方式3Dプリンターを活用

Hankookの研究開発施設

韓国のタイヤ生産大手、ハンコックタイヤ(Hankook)は、韓国原子力研究所、及び3DプリントのスタートアップであるHM3DPと研究協力を通じて、「損傷部品修復の3Dプリント技術」を開発したと発表。材料の消費を削減し、経済効率向上、環境負荷低減に寄与する。

金属3Dプリンティング技術のアプリケーション

金属3Dプリントは、鋳造や冶金などの金属加工プロセスと比較すると、より複雑で高品質な製品の生産に向いている。しかし、コストは高額であるため、一般消費者向けの製品に金属3Dプリントが用いられることは少ない。これまでは主に航空宇宙産業の重要部品生産に役立てられてきた。

その他、金属3Dプリントが優位になる数少ない場面が原子炉部品の開発だ。事故が重大な被害につながる原子炉においては、高コストであっても部品の信頼性が優先される。韓国原子力研究所は早くからこの技術を取り入れ、原子炉用高性能部品の研究開発を進めてきた。

ハンコックタイヤのタイヤ切断用Ti合金ブレード修復技術

ハンコックタイヤは1941年創業のタイヤメーカーで、韓国で1位、アジアで3位、世界で7位の規模を有する。近年では様々な分野とのコラボレーションを通じて、革新的なイノベーションを生み出している企業だ。そうしたコラボレーションの一環として、ハンコックタイヤは韓国原子力研究所、及び3DプリントスタートアップのHM3DPと協力し、「損傷部品修復の3Dプリント技術」を開発した。本技術はTi合金でできたブレードの修復に用いられる。

タイヤ生産においては、多量の硬化剤を含むタイヤの切削加工が必要だ。ここで、安価なステンレス鋼ブレードでは硬化タイヤを切り裂くことができないため、Ti合金ブレードが用いられている。しかし、いかに強靭なTi合金といえど、繰り返し使用による損耗は激しい。これまでは摩耗、または損傷したブレードは速やかに廃棄されてきた。

この状況を変えたのが、韓国原子力研究所の有するDED(Direct Energy Deposition:指向性エネルギー堆積法 )方式、金属3Dプリント技術だ。DED方式では、金属粉末を吹き付けながらレーザーを照射し、狙った場所のみに金属を盛り付けることができる。

これまで損傷すれば破棄するしかなかったブレードだが、損傷個所をDED方式の3Dプリンティング技術によって正常に復元することで材料の消費を削減し、コスト効率を向上させることができた。部品の生産や廃棄に伴う炭素排出量の削減にも繋がり、環境負荷低減にも貢献する。

DED方式による3Dプリントの様子(出典:ハンコックタイヤ)
DED方式による3Dプリントの様子(出典:ハンコックタイヤ)

ハンコックタイヤのR&D

ハンコックタイヤは上記のような他分野とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。

他の例として、KAIST(韓国先端科学技術研究所)と協力して、「道路ハザード予測と検出ソリューション」の開発プロジェクトに取り組んだ。本プロジェクトは、人工知能と深層学習技術によって道路状況を特定し、潜在的な危険を未然に察知、対応するシステムの開発を目指す。

3DプリントやAIなど、近年新たに登場した技術群は革新的ではあるものの、産業界全体がその価値を測りかねており、導入が思うように進んでいない。ハンコックタイヤのコラボレーション事業は、これら革新的技術群に光を当て、産業界への導入を促すものだ。

こうしたコラボレーションが活発化することで3Dプリンタの新たな活用方法が発掘され、導入スピードが加速していくことに期待したい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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