2030年の金属3Dプリンターによる造形品の市場規模を考察
金属3Dプリンターはどの程度世界に普及しているのか。自動車販売数などのような正確な統計は存在しないので調査会社の推計に頼るほかないが、ここではNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の技術戦略研究センター(TSC)が公開している「TSC Foresight」セミナーで発表された井関 隆之氏(NEDO TSC ナノテクノロジー・材料ユニット 研究員) の発表資料から市場規模を紹介する。
増加を続ける出荷数と2016年以降の成長の加速に注目
円グラフのシェアはGlobalNewswireの発表、棒グラフで表現されている年次推移はwohlersAssociateの発表をもとにNEDO技術戦略研究センターがまとめたもの。これによると、全出荷台数は2000年から2017年で世界各国の累計で5768台、生産国はドイツが過半数を占める状況だったが、GEによるM&Aで米系資本が台頭している結果となっている。
この統計が市場のすべてを網羅できているかはひとまず置くとして、注目するべきは2012年から一貫して出荷がのび、2016年から2017年に大きな成長を見せている点だ。市場性が急速に高まっていることは間違いない。
2030年には2兆円規模の造形品市場に成長
金属3Dプリンターは最終製品の生産に用いられる以外に、治具や試作、補修部品生産で利用されるケースも多いので、2017年までの出荷累計台数のすべてが最終製品用途ではない。
ただ今後最終製品の生産に関与する度合いが高まっていく傾向にあることを見据えて、2030年の金属3Dプリンターによる造形品市場規模を推定したのが上記の図表だ。この図表をもとに表組を用意してみた。
金属3Dプリンタ対象市場 (2030年推定) | 金属3Dプリンタ 造形品市場規模 | 対象市場 全体の市場規模 |
金型工具 | 8000億円 | 8兆円 |
医療 | 5600億円 | 5.9兆円 |
エレクトロニクス | 4000億円 | 7000億円 |
航空・宇宙 | 1100億円 | 5.7兆円 |
ロボット | 1000億円 | 1.9兆円 |
自動車 | 600億円 | 3.4兆円 |
補修部品 | 210億円 | 4兆円 |
発電 | 200億円 | 24兆円 |
金属3Dプリンターによる造形品で上位を占めるのが、金型、医療、エレクトロニクス分野。実際に展示会などでも、自動車を念頭に置いた金型や試作などの展示会で金属3Dプリンターの紹介は始まっており、熱心に説明に聞き入る人を見かけるが、複雑な形状や難削材を使った金型作成なども今後は3Dプリンターをつかって新しく広がっていく可能性がある。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。