三浦工業社と慶應義塾大が高性能熱交換器を共同開発!
慶應義塾大学 田中浩也研究室と三浦工業株式会社は、3Dプリンターを用いた高性能熱交換器の開発に取り組んでいる。このプロジェクトは、従来の製造法の限界を超え、熱交換器の性能向上を目指している。(上部画像はソフトウェアでジャイロイド構造を生成している画面。出典:三浦工業社)
三浦工業社と熱交換器
三浦工業社は、日本においてエネルギー関連機器の開発、製造、保守を専門とする企業である。ボイラーや水処理設備を主力製品とし、効率と環境配慮に力を入れている。そんな三浦工業社が慶應義塾大学 田中浩也研究室と取り組んだのがジャイロイド構造の高性能熱交換器の開発だ。ジャイロイド構造はTPMS構造(Triply Periodic Minimal Surface:三重周期極小曲面)の中でも複数のリングが互いに絡み合いながらも接触しない独特の形状をしている。構造的に非常に高い強度と軽量性を兼ね備えている複雑な内部構造の高性能熱交換器だ。
TPMS構造とジャイロイド構造
TPMS構造は、周期的な最小面構造を持つ幾何学的形状だ。TPMSは局所的には最小の表面積を持つが、その形状が非常に複雑で、多くの曲がりくねった部分を含んでいるため、全体としての表面積は大きくなる。そのなかで、流体の流れを妨げない局面構造をもち、大きな表面積で熱伝導効率に優れるジャイロイド構造。材料の使用を最小限に抑えつつも、効率的な強度や熱伝導性を提供することができるため、航空宇宙や自動車産業などの分野での応用に適しているとされる。
熱交換器分野とAM技術
熱交換器は、AM(アディティブ・マニュファクチャリング)分野で注目されている。ジャイロイド構造は先に触れたように複数のリングが互いに絡み合いながらも接触しない独特の形状をしているが、切削などの既存工法では加工が難しい。また複雑な形状は人の手で設計することが難しい形状でもある。
金属3Dプリンターで造形することを前提に、生成系AIを活用してジェネレーティブデザイン技術を活用することで、従来不可能だった複雑なデザインの熱交換器が製造可能となり、効率と性能の向上が期待できる。こうした手法は3Dプリント技術の活用では注目されている。
この共同開発は、熱交換器の性能向上を目指し、エネルギー効率の高い環境に優しい製品の開発に貢献することを目的としている。3Dプリントとジャイロイド構造の組み合わせにより、従来工法の加工限界を超えた高性能部品を生産できる。
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