Eplus 3D社とLEAP 71社が、Formnext 2024で世界最大級の金属3Dプリントロケットスラスターを発表
金属3Dプリンティングと計算工学の分野で長年にわたり協力を続けてきたEplus 3D社(中国、杭州)とLEAP 71社(UAE、ドバイ)が、世界最大の単一部品で3Dプリントされたロケットスラスターを共同製作した。(上部画像はEplus 3D社のプレスリリース。出典:Eplus 3D社)
挑戦的な設計
推力200キロニュートン(kN)のスラスターは高さ1.3メートルを超え、LEAP 71社が独自に開発したNoyron Large Computational Engineering Modelによって設計された。このモデルは、工学的知識、論理、物理、製造制約を統合し、複雑な機械設計のための初のAIシステムである。
このスラスターは、LEAP 71社が2024年6月に燃焼試験を成功させたNoyron TKL-5ロケットエンジンの発展型であり、その推力は40倍に増加している。従来は別々の部品として存在していた要素を統合した大胆な設計となっており、高性能アルミニウム合金AlSi10Mgを素材に、Eplus 3D社のEP-M650-1600 Metal Powder Bed Fusion(MPBF™)プリンターを用いて製造された。製造には6台の500Wレーザーが使用された。
LEAP 71社のマネージングディレクターであるジョセフィン・リスナー氏は、下記のように述べる。
LEAP 71の計算モデルは、CADを使用せずに宇宙関連機器を自律的に設計する。しかし、産業用3Dプリンターの多くは造形サイズが小さいため、積層造形プロセスの制約が我々を阻んでいた。Eplus3Dは造形サイズのみならず、高品質な結果を繰り返し実現する能力においても限界を突破した。
Eplus 3D社のEP-M650Hプリンターは、650×650×1600ミリメートルという大容量の造形空間を持ち、LEAP 71社に完全統合されたスラスターの設計を可能にした。この造形プロセスは中断なく354時間連続で実施された。
技術革新
従来、ロケットスラスターは多くの部品で構成され、それぞれを組み立て、熱ガスに対するシールを行い、個別に品質保証を行う必要があった。今回のスラスターは燃焼室、ノズル、冷却チャネル、マニホールド、構造要素をすべて統合した設計を可能にした。
エンジンの製造にはAlSi10Mgが使用される。このアルミニウム合金は、溶融温度が低く酸素と反応しやすいため、推進用途では難しい素材とされている。ロケットモーターは、主燃焼室を冷却するために液体酸素を再生冷却に使用し、ノズルの上部にはケロシン燃料を使用する二重熱管理戦略を採用している。また、チャネル壁の粗さを最小限に抑え圧力損失を軽減するため、60µmの層厚で造形が行われた。
金属3Dプリントが切り拓く航空宇宙の未来
このロケットエンジンの成功は、Eplus 3D社が大規模で複雑な部品を製造する能力を示し、プロセス開発における豊富な専門知識を裏付けるものである。高性能素材のために印刷パラメータを精密に調整することで、Eplus 3D社は印刷精度と表面品質を非常に高いレベルに引き上げ、後加工の必要がない製品を実現した。
特に航空宇宙産業における3Dプリント技術の進展を象徴し、LEAP 71社とEplus 3D社の協力は、複雑な構造を持つ機械を設計・製造する上で、計算工学と積層造形の融合が持つ可能性を証明するものだ。この緊密な統合により、先進的な航空宇宙部品やシステムの開発が加速し、他産業における革新の可能性も広がる。
LEAP 71社について
LEAP 71社は、ドバイを拠点とするグローバルテクノロジー企業であり、計算工学という新興分野の先駆者である。同社の高度なソフトウェアアルゴリズムは、複雑な物理製品を自律的に設計する。その中核となるのが、Noyronと呼ばれる大規模計算工学モデルであり、人間の手を介さずに高度な機械を迅速に設計可能にする。
2024年6月、LEAP 71社は完全にNoyronを用いて設計された液体燃料ロケットエンジンの3Dプリント燃焼試験を成功させた。同社は世界中のパートナーと協力し、航空宇宙、電動モビリティ、熱システムなどの産業で革新を加速させている。
Eplus 3D社について
Eplus 3D社は、1993年に中国で初のPBF装置を開発して以来、MPBF™(金属粉末床融合)およびPPBF™(高分子粉末床融合)を用いた産業用積層造形システムおよび応用技術の研究開発を進めてきた。同社は航空宇宙、エネルギー、自動車、ツーリング、医療、精密製造などの分野にプロフェッショナルなソリューションを提供している。
Eplus 3D社は、北京、杭州、シュトゥットガルト、ヒューストンに施設を構え、年間収益の20%以上を研究開発に投資している。同社は、特許やソフトウェア著作権を含む包括的な知的財産を有しており、ヨーロッパ、アメリカ、中東、東アジア、東南アジアなど40以上の国と地域で成功を収めている。
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