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月面で3Dプリンターを使用するための実証実験が国際宇宙ステーションで始動

2024年までに月面に人類を着陸させる「アルテミス計画」がアメリカ航空宇宙局(以下、NASA)の主導で進められている。計画の一環として、月面で使用を予定しているREDWIRE社製3Dプリンター「Redwire Regolith Print」が2021年8月10日の打ち上げで国際宇宙ステーション(ISS)に送られ、低重力下での実証実験が行われる。

NASAが描く月面着陸計画「アルテミス計画」とは

ギリシャ神話で太陽神アポロンの双子として登場する月の女神、アルテミスの名前を冠した「アルテミス計画」は、NASAが主導する月面着陸計画だ。1969年に成功した人類初の月面着陸から、最後の月面着陸となった1972年まで、月に降り立った宇宙飛行士はいずれも男性。この「アルテミス計画」では、2024年までに「最初の女性を」月面南極付近に着陸させることを目標としている。

1972年以来となる月面着陸を目指すNASAの「アルテミス計画」(写真はイメージ)

アメリカを始めとして、欧州、日本、カナダ、オーストラリアなどの各国宇宙機関 および 多くの民間企業との国際的連携を元に実施され、民間企業の果たす役割も大きい。「アルテミス計画」は、継続的に月で活動を行うために、月軌道プラットフォームゲートウェイ(月周回軌道上に建設予定の国際宇宙ステーション)や月面拠点の建設も計画されている。今後の宇宙開発への足がかりとなる一大プロジェクトだ。

RPPミッションへの期待

月面拠点の建設には、たくさんの建設資材が必要だ。しかし、一度に打ち上げられる資材の量は限られており、何度もロケットを打ち上げていてはコストが膨大になる。

この問題を解決し、月面拠点建設で重要な役割を担うのが3Dプリンターだ。月表面の砂礫(レゴリス)を建設資材の主原料とすれば、ロケットの打ち上げ回数を減らすことができ、結果として費用も安価に抑えられる。上手くいけば持続的に月でのインフラ構築が可能となる。

月の砂「レゴリス」を素材に3Dプリンティング技術で生成された建材(出典:ESA 欧州宇宙機関)

このような構想のもと、月表面のレゴリスで3Dプリンティングできるのかを調べるため、さまざまな実証実験が行われた。月表面のレゴリスを模した成分の砂礫で3Dプリントを行った結果、適切な加工処理を施すことで、十分な強度を持つ構造物が建設可能であることが示されている。原料の観点からすれば、月面での3Dプリンティングは十分に可能となった。

ただし、これら実験はすべて地上で行われたもので、低重力下で3Dプリント実験を行った例は未だない。原料は問題ないとしても、低重力下で3Dプリンターが上手く動作するのか、という技術的問題は残っている。

ISSでの実験で用いられるREDWIRE社製3Dプリンター”Redwire Regolith Print”(RRP)(出典:REDWIRE)

これら背景から、ISSでの3Dプリント実証実験が決まった。使用されるのは REDWIRE の3Dプリンター「Redwire Regolith Print」(RRP)だ。RRP は2021年8月10日に、Northrop Grumman の商用補給ミッションで打ち上げられ、ISSに届けられた。同機種は、すでに ISS に設置されているプリンターシステム「In Space Manufacturing Device」(ManD)と連動して動作する。一連の実証実験は、3Dプリンターの名前から「RRPミッション」と名付けられた。

RRPミッションの成功は月面基地建設の実現を大きく前進させるものであり、期待が集まっている。

アルテミス計画の先、火星移住へ

「アルテミス計画」は月面開拓において重要な役割を果たす。一方で、すでにその先の計画も動き出している。火星移住計画だ。NASAの火星移住計画については、以下の記事でも紹介しているので是非ご一読いただきたい。

「アルテミス計画」は、この火星移住計画のための準備ステップという意味もある。火星で活動を行う際にも、3Dプリンターを使った拠点建設が予定されているため、RRPミッションで得られた知見は火星移住計画にも大いに役立つことだろう。

月面基地ができて人類が滞在できるようになれば、次なる目標は火星だ(出典:NASA アメリカ航空宇宙局)

月、そして火星。これまでSFの世界で描かれてきた空想の物語が現実になろうとする日が、3Dプリント技術の発展とともに着実に近づいてきている。

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国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関する情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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