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製造業を知り尽くしたリコーだからこそできる3Dプリンター出力サービス

高機能材料(ナイロンやPP)で造形できるリコー製高性能3Dプリンター「RICOH AM S5500P」の前で。(写真中央が江本氏)

現在、3Dプリンターの出力サービス事業者は数多く存在する。しかしリコーは製造業の企業としてもの作りの現場に精通すると同時に、3Dプリンターを20年以上活用してきたユーザーとしての顔を持つという、他にあまり例のない企業だ。

リコーの取り組みと3Dプリンターを取り巻く状況について、事業開発本部AM事業センター RMマーケティング室 シニアスペシャリスト江本氏にお話をお聞きした(以下、インタビュー本文ではリコーで記載(敬省略))。

製造業としての知見を活かした、設計・コンサルティング支援

3Dプリンター出力サービスを提供するリコー厚木事業所は、リコーの複合機、プリンターのキーパーツの試作、技術開発を行う生産拠点として1971年に設立、半世紀近くの歴史を持ち、以下のような特徴がある。

  • 厚木事業所では各種の材料を扱える大型の高性能3Dプリンターを複数台導入し、出力サービスを提供している。
  • 大企業から中小企業まで業種も幅広く、全国からリコーのウェブサイトを経由して、様々な依頼を受けている。
  • 依頼内容の意図を理解し、事前に質問があればメール、電話で確認を行い、設計までを行うケースもある。

—— 他のサービス会社は、そこまでやっているのでしょうか?

リコー:造形に特化したサービス会社の場合、設計までできる人はあまりいないのではないでしょうか。「リコーには、設計者もいるのがいいよね」とお客様からは言われます。

設計まで行った一例としては日本光電(医療機器メーカー)様から、商品の立ち上げの中で必要になってくる治具(*1)の一つをもっと使いやすく、コストを下げたいという相談がありました。実際の治具の使い方をヒアリングして、要望や条件に併せて設計自体をリコーで行い、正式な治具として使えるよう、3Dプリンターで少量作って提供しました。傾向的にはそういった生産改革の上流で支援するケースが多いです。

*1 治具:機械工作の際、刃物や工具を加工物の正しい位置に導くために用いる補助工具(大辞林)

リコーとして従来からの「製造業の経験」を、プラスアルファして提供

製造の下流工程において、ラインの中で必要となるもの、生産工程の中で「従来よりも何%早く生産したい」となったときに、「組み付けの一部のものを改善することができないか」といった相談などもあるという。

リコー:お客様側で改善できていない特定部分の課題に対し新しい技術で解決できないか、相談が来るのが現状です。しかし社内では、アセンブリのラインに対して、現状の作業工数を算出、実際使っている治具を見て、そこでの課題をヒアリング、置き換えの評価を行い、「一つのライン全体に対して(置き換えを)実行する」ということを、リコーインダストリーの東北事業所などで既に行っています。最終的にはそういった範囲までを目指しています。

我々がやっているのは、Additive Manufacturing (*2) にフォーカスしたメニューですが、グループとしては生産コンサルとしてのメニューもあります。その二つを組み合わせることでサービスを提供することも出来ます。5Sや工程の整流化といったメニューの中から、「3Dプリンターで解決できるもの」というくくりで問題解決をしています

元々、リコーは20年以上にわたって3Dプリンターを活用してきた歴史があります。そのためユーザーとしての視点とノウハウを持っています。いきつくところは「もの作りの革新」をしていきたい、と考えています。自分たちがもの作りをしていて、それを改善するために、3Dプリンターは非常にいい道具だと気づきました。例えば治具の軽量化による生産現場での作業準備の短縮化、自社内で治具を使いやすい形に素早く改善できるなど、生産納期の短縮につながる様々なメリットがあります。もの作りをやってきた経験がなかったら、そういった視点やアプローチはなかなか持てなかったと思います。

*2 Additive Manufacturing : 付加価値製造法

—— 3Dプリンターと言えば「試作品」というイメージがありますが、「最終製品」の製造を手掛けることもあるのでしょうか?

リコー:提供しているケースもあります。保守パーツやスペアパーツなど、在庫を抱えるとコストが掛かりますが、絶対必要なものをなるべく少なく持っておきたいというケースや、あとはなくなったもの、生産終了したものが条件としてはマッチします。

しかし現状、国内で最終製品まで手掛ける案件はまだ少ないと言う。

—— 3Dプリンターの持つメリットに気づいていないメーカーは多いのでは?

リコー:多いと思います。まったく3Dプリンターを使っていない大手製造業はないと思いますが、セクションによっては知らない、というのはあると思います。その場合は「3Dプリンタのメリットは何か」から説明します。

リコー厚木工場にずらりと並ぶStratasys社製「FORTUS 900mc」をはじめとしたハイエンドタイプの3Dプリンター。材料の種類や製造にかかる時間を考慮して、複数台のプリンターを効率よく稼働させている。

国内と海外の活用状況の違い:「試してみよう」の精神で進む、海外での3Dプリンター活用

国内は試作品製作に3Dプリンターを使うことが多く、大量生産を見越したものをあえて3Dプリンターで作るという発想は、まだまだ難しいと考えられており、日本企業の品質に求めるこだわりが、3Dプリンター活用の上で重要なテーマとなっていると言う。

リコー:日本は金型によるもの作りの精度が非常に高く、更に大量生産でコストを下げることを実現しています。

日本の場合、「これができたら使います」という要求水準が高く、「どこまでのことができるの?」、「品質保証はどうするの?」、「強度はどうするの?」となりがちで、何でもやってみるという文化がありません。しかし海外では「どんなことができるのか」、「こんなことに使える可能性がある」、「じゃあ試しに使ってみよう」となりやすいのです。全ての企業がそうではないですが、そういう傾向がより強くなります。

海外と日本では、企業文化の違いという側面も

リコー:日本では、何か新しいことをやろうとすると、関連セクションとの検討整合が必要になりますが、海外ではトップダウンで進めやすい点でスピード感が違います。

3Dプリンターの展望「最終製品」の生産に活用されはじめた3Dプリンター

日本で3Dプリンターの活用が遅れる中、海外では航空機エンジンの部品生産に3Dプリンターが使われるなど、最終製品の量産を行う動きも出てきている。国内でも意識する企業は今後増えてくるだろうと言う。

—— 3Dプリンターを「最終製品」の量産で使用する際の課題は?

リコー:「生産のスピード」、「ある程度の品質維持」、「顧客の意図した材料で製造できるか」、この三つが大きなテーマです。その派生として、「どのくらいのサイズで作れるか」が重要になります。
海外ですと、既に大量生産を視野に入れて「本当に3Dプリンターが主になった工場って何だろう」と考えはじめています。

3Dプリンターで試作品ではなく、最終製品を提供したいというのが究極の目標です。今の装置は良くも悪くも課題が多く、それらを崩しながら、作りこんでいきたいと考えています。試作品や治具への利用については普及してきましたし、大手でも使われるようになってきました。
この装置でしか使えない材料や作れないもの、射出成型品とは違う土俵でこの技術が活かせる領域を作っていきたいと考えています。

—— リコーにとっての今後のテーマは?

リコー:「3Dプリンター事業に取り組み日本のもの作りを元気にする、技術を革新する」というスタンスで業界をリードしていきたいです。そのためには様々な材料、造形方式の製品、国内だけでなく北米やドイツメーカーなど様々なものを扱い、もの作りをするうえで豊富なラインナップをもって価値提供し、メーカーとして新しい装置や材料を提供することも積極的に進めていきたいと考えています。

厚木工場内で利用されている工程検査用カメラは3Dプリンターで製作されたもの。大幅な部品点数の削減と軽量化を実現している。
厚木工場内で利用されている工程検査用カメラは3Dプリンターで製作されたもの。大幅な部品点数の削減と軽量化を実現している。

ごく当たり前のものとして、製造業での3Dプリンター利用は進んでいく

2012年にクリス・アンダーソンの「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」が日本で発売された頃の過熱ぶりが懐かしくなるくらい、現在では落ち着きを見せている3Dプリンターへの注目度。しかし一時期の「3Dプリンターがあれば何でもできる」といった風潮から、もっと現実的な課題解決の手段として、今ではモノづくりの現場で着実に利用が広まっている。

これからは日本でも、ごく普通の道具として、3Dプリンターを活用したモノづくりが本格的に普及していくだろう。

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RICOH 3D PRINT ONLINE
株式会社リコーが提供する3Dプリントのオンラインサービス。お客様からお預かりした3Dデータをもとに、熟練の技術者が造形物を3Dプリントしてお届けします。

【基礎知識一覧】業務用3Dプリンターを学ぶ
3Dプリンターの仕組みから企業が3Dプリンターを導入するために知っておきたい基礎知識など、3Dプリンターについて知っておきたい情報を網羅的に知ることができます。

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