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AMは「できる」が先か「こうしたい」が先か?

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。

「次世代3Dプリンタ展 東京」に行ってきました。

例年より遅いと報道されていましたが、6月末になり北海道をのぞく全国が梅雨入りしたとのことです。昔の梅雨はしとしと弱い雨が降り続くという感じでしたが、最近は極地的な大雨が降ったり、合間には急に猛暑になったり、また寒暖差も大きく、我が家の家族含め体調を崩す方も多いようです。雨も降らなければ水不足になりますので、適度に降る梅雨であってほしいと願っています。

さて、毎年梅雨のこの時期に開催されるAM/3Dプリンター関連の展示会「次世代3Dプリンタ展」が6月19~21日 東京ビッグサイトで開催されました。ご出展、ご来場された皆さんにおいては大変お疲れさまでした。昨年までのコロナ禍での中止や延期を除き20年以上毎回出展社ブース説明員として参加してきましたが、今回は初日と2日目にシェアラボの調査取材を目的に参加してきました。

個人的にも、お会いし、お話が出来た多くの方々には、感謝の意をお伝えしたいと思います。主なトピックスについてはシェアラボニュースやこれからの機会の中でお伝えすることとしまして、このコラムでは日本のAMに今起きている、または起きつつある傾向について展示会を通して感じたことをお伝えしようと思います。

AMは「できる」が先か「こうしたい」が先か?

AM業界関係者との話の中で、「タマゴが先かニワトリが先か問題」は昔からよく出てくる話題のひとつでした。例えば、「AM技術の発展は3Dプリンターという装置の性能があってこそより良い材料ができる」か「良い材料があってこそ、それを3Dプリントできるような3Dプリンターができる」のどちらか?とか、「AMのコストが安くなったら使う人が増える」か「使う人が多くなればAMのコストは下がる」のどちらか?などです。結局どの問題も両方正しく、両方必要ということになるのですが、これまでもよく出た問いである

「AMで必要なレベルのことができるようになる、または何ができるかわかったら、何に使うかを探す、または見つかる」

「何に使いたい、こうしたいを見つける、または想定したら、どのAMを使う、または使えるようにする」については、もちろん両方間違いではなく、ケースにもよりますが、今回の展示会では後者の方、つまり「こうしたい」が先にあって、それを「できるようにする」という方に進みましょう、その方がうまくいくというという提案や働きかけや事例が多く見られたと感じました。

例えば世界的な3Dプリンターのトップメーカーである3D Systems社とStratasys社それぞれの日本法人のブースでは3Dプリンター製品を全く展示せず、用途や使い方、それで得られる利益を展示されていました。もちろんこれまでは両社とも大きなブースで多数の3Dプリンター実機展示をされていましたし、今回も販売代理店ブースでは3Dプリンターが展示されていましたが、両社が同じような展示に変えたことは、まず「こうしたい」を先に見つけましょうという売り手提案の変化の現れだと感じました。

また、セミナーではAMでの量産が共通したテーマでしたが、その中でもこれまではユーザーが「できる」を待っていたが、これからはユーザーが「こうしたい」を先に明確に表明し、それをできるようにユーザーもメーカーも協働することという提案がありました。またこれまでは、

A.まず装置があって、それで使える材料制限の中で出来ることを探すという順
を、
B.「これを作りたい」があって、それに適した材料選択肢があって、その材料ができる装置を選ぶ、または作るという順
に変えてはという提言もありました。

AMの装置、材料、ソフトウェア、サービスが少なかった時代では「A」の順しかできなかったと思いますが、現在日本で販売されていないツールも含め、今は「B」の順でも成立する、またはその方が早くAM活用の利益が得られるのではないでしょうか。

また、次世代3Dプリンタ展の同時併催展示会の方で、金属加工を主業とする企業がAMを導入することでビジネスを広げられている例をいくつか知ることができ、日本のAM活用も出来ている企業は出来ていることが分かったことも参加した収穫でした。

6月から来年にかけて各地でAM関連の展示会や個別企業のイベント開催が多数予定されています。シェアラボのイベントページも参考にしていただきながら、実際に見て、触れて、話すことで日本のAMの変化について知っていただき、みなさんの活用へ活かしていただくことをお勧めしますし、シェアラボでもいろいろなルートでお伝えしていきたいと思います。

最後に展示会のこぼれ話ですが、機械要素技術展に出展されていたマブチモーター株式会社のブースで、前回のコラムで触れたテレビ番組 「魔改造の夜」の「電動マッサージ器25mドラッグレース」(NHK総合の5月30日放送)で実際に出場した機体(詳しくは特設ウエブサイト)が展示されていて、許可を得て写真を撮らせていただきました。


やはり左の青いケースは3Dプリンター製だったことを確認できました。

オンラインイベント JAMM#17開催のお知らせ

既にご存じ、または参加された方もいらっしゃるかと思いますが、私が前職の時から企画運営に参加していて、15回目からシェアラボが協力して開催されてきたオンラインイベントJAMM(Japan Additive Manufacturing Meet-up)はAMに関わるみなさんの人と人のつながりをつくるためのオンラインイベントです。その17回目を下記のとおり開催予定です。参加無料ですので、はじめての方もリピーターの方も、みなさんお気軽にご参加ください!

JAMM#17
開催日時:2024年7月26日(金) 16:00-18:00 ZOOMオンラインにて
プログラム、詳細と申込ページはこちらのウェブページをご覧ください。

ShareLabニュースにもう一言

【独占インタビュー】マテリアライズ社 ヴァンクラーン会長に聞く「日本のAM活用の課題と解決策」

ヴァンクラーン会長は創業者でありマテリアライズ社を30年以上経営、成長させてきた経営者ではありますが、早くからAMを深く広く理解され、AMでより良く健康な社会を目指す信念から、実際に工業・医療など様々なAM製造プロジェクトに関わり、立ち上げてこられた方で、その方から聞く「世界のAMと日本のAMの今とこれから」は、ネットや展示会からは得られにくい情報で、もちろんそれが全て正しく有用なわけではありませんが、「海外のことだから」と決めつけず、まずは知って、それぞれがどうするかを考えるきっかけになることは大事だと思います。

単独インタビュー Materialise社 ヴァンクラーン会長に聞く「日本のAM活用の課題と解決策」

左:Materialise NV ヴァンクラーン会長 右:シェアラボ編集部 丸岡

ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!

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