AMの活用はオールジャパンで!
10月になったと思ったら、急に朝晩が涼しくなり、家から見える公園の木の葉も、気づいたら色づき始めていました。それでも昼間は暑い日もあり、「あー、もう一枚着て来ればよかった」と思った後で「やっぱりこれで良かった」という日が続いています。また家族でも咳やくしゃみが急に出だしたり、何かの花粉症らしきものが起きているようで、みなさんそれぞれ、体調管理されながら、短い「ちょうどよい秋」を楽しんでお過ごしください。
そのような秋から冬にかけて、AM界隈では国内外で様々なイベントがたくさん予定されていて、いろいろな人と情報に出会う機会の増える楽しみな時期でもあります。今回はその中で気づいた「AMの活用はオールジャパンで!」についてお伝えします。
まず、ShareLabでは情報提供方法のひとつとして、YouTube「ShareLabTVチャンネル」を先日開設しました。今の世の中、動画配信自体はいまさら感もあり、シェアラボ編集部内でも議論がありましたが、ポータルサイトの文字や写真ではやっぱり伝えきれない情報があること、またいわゆる「飲み屋での雑談」の中で「これこそ広く知ってもらうべき話」が良く出たり、なによりAMに関わる人には素晴らしい魅力や考えを持った方が多く、それはAM技術やビジネス同等以上に、広く伝えるべきと考え、それらを伝えるには動画が良いのではと考えたのが新チャンネル開設のきっかけです。そうとは言え、当編集部にはユーチューバーも動画のプロもおらず、どうしたものかと考えた結果、大きなお金と工数をかけて高品質な動画を作るより、自分たちで出来る範囲で、情報量を優先して作っていけるチャンネルにすべく、まず立ち上げてみようとなりました。
そこで、第1本目の動画として、国内外のAM界で長年活躍され、広い人脈を持つLayered代表 Peter Rogersさんのご協力により、私との対談「米展示会から見た海外と日本のAM業界の違い(前編)」を公開しました。実はすごく厳密なシナリオを決めず、会話の流れをそのまま録画しましたが、話が尽きることなく約1時間通して話してしまい、動画はほぼ編集せずに前後編に分けた感じです。いい加減にもほどがあると怒られそうですが、上述の通りのコンセプトなので、休み時間や移動時間に、息抜き程度に観ていただければと思います。後編は近日公開予定で、ShareLabメールマガジンでお知らせします。
ネタばれにはなりますが、その中で日米のAMの違いのひとつに「失敗の共有」や「ユーザーや企業の連携」の話題があります。それは本コラムのタイトル「AMの活用はオールジャパンで!」と、次の話題につながることでもあり、参考にしていただければと思います。
フォームネクストフォーラム東京2024セミナー講演から
前回のコラムでもお伝えしましたが、フォームネクストフォーラム東京2024が2024年9月26 – 27日に開催されました。シェアラボもブース出展し、その結果はイベントニュースとして前編、後編でお知らせしました。その中で、主催者セミナーの中で経済産業省 製造産業局 素形材産業室 室長 星野 昌志 氏により「素形材産業を巡る動向とAMへの期待」の講演についてもお知らせしました。星野室長は日本の製造産業、特に川中と言われる金属鋳造などの素形材産業の現状と課題を豊富な統計から説明され、またご自身が実際に国内外の企業や研究施設に足を運び、見聞きされた上でのAMへの期待、課題をわかりやすく支援されました。その最後のまとめとして、室内担当者と作ったばかりとのことで初公開された「AM普及に向けたオールジャパンの取組の必要性」の内容は、大変勉強になりました。以下にその内容を簡略化した図を作りましたので参考にしてください。
この内容にはいろいろな見方や意見があると思いますが、AMを製造に活用するのに必要な課題が網羅されていると思いますし、これだけのことを同時に進めて行くには、広い産業の産学官様々な人がかかわらないと、出来ないことを示していると思います。もちろんオールジャパンで取り組むとは言うは易しで、また国、経済産業省による基盤としての大きなグランドデザインと人、モノ、お金の支援も必要でしょう。しかし、特に今の国際競争と変化の時代では、国頼みで一つの方向に全員が向かうというより、それぞれの地域、産業、企業が実情に即した取り組みを行い、その失敗も含めた成果やノウハウが、オールジャパンで共有利用されるプラットフォームを国と産学官が共同で作る手もあるかと思います。また製造でこれまでのゲームでは日本に勝てないので、ゲームを変えるためにデジタルエンジニアリングやAMを使う海外と、変えたくない、変える動機がない日本とは、AMへの期待や課題は違うことを前提に、すぐに結論が出るものではありませんが、この提言をきっかけにオールジャパンで議論し、行動に移していくきっかけとなることに期待をし、シェアラボとしても微力ながら貢献していきたいと思います。
樹脂3Dプリンターで金属の微細構造物を製造?スタートアップ「3D Architech」の全貌に迫る
私も3D Architechの成田 海CEOとオンラインでお話をさせていただきました。正直初めは開発された技術と、金属体が出来る仕組みや原理について想像が出来なかったのですが、実際の説明はとても分かりやすく、もちろん根幹は機密で分からないこともありますが、おそらく世界的にも類を見ない、可能性のある技術だと思いました。また成田氏が技術開発と起業した経緯は、「3Dプリンター」が先ではなく、「エネルギーの課題解決」という出口から遡り、かつAMの課題や限界を理解したうえで、市販安価の小型プリンターを使う現実解を見つけ、それに適した材料と工程を開発された「バックキャスト的開発」の好例だと思います。こういう日本発の人材と技術をオールジャパンで速く社会実装し、内外需要で稼げる産業にしていくような、夢が広がる話でした。
中国で金属3Dプリンターの出荷が加速、産業用ポリマープリンターは大幅に減少
フォームネクストフォーラム東京2024でもう一つ大きなトピックスとなったのは、中国のAM事情だと思います。シェアラボのイベントニュース後編でも触れましたが、中国AM市場や企業の急成長は事実であり、数年前の予測以上であることは疑う余地がないでしょう。また単に国の支援という背景ではなく、国内外の様々な需要に応えるための設備投資や、技術開発を産学官協力して行ってきたことが分かり、同時に欧州企業はそれと戦うというより、優れた点を認め、共に成長する動きがあるようです。もちろん日本は中国と同じことは出来ず、するべきではないと思いますが、冷静に中国の製品やサービスを評価し、使えることは使うということも、日本の製造業やAM産業にとってプラスの効果は高いのではないでしょうか。こちらも「海外のことだから」とせず、自分事として捉えるきっかけになればと思う記事でした。
ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!