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フォームネクストフォーラム東京2024報告(後編)

フォームネクストフォーラム東京2024につき、前編では数多くの出展ブースの中からファストレヴューという形で出展内容に関してご紹介した。この展示会は、毎年国内外のAMに関わる、多彩な講演が多数提供されることも特長のひとつである。今回も2日間にわたり、国内外講演者による「主催者特別セミナー」8本、AM業界を牽引する協会・団体による「業界団体セミナー」12本が聴講無料で提供され、大勢の立ち見の方が出る講演もあり、AMについての関心の高さは続いていることが伺えた。本記事では後編として、シェアラボ編集部 丸岡が聴講した講演の中から4講演のをピックアップし、注目ポイントをお伝えする。(写真は会場で開催されているセミナー風景)

素形材産業を巡る動向とAMへの期待(経済産業省 星野氏)

【演題】 「素形材産業を巡る動向とAMへの期待」
【講演者】 経済産業省 製造産業局 素形材産業室 室長 星野 昌志 氏

素形材産業を巡る国内外における産業構造の変化が加速する中、日本企業のさらなる技術革新や経営力の強化は欠かせません。素形材産業全体を見渡し、将来のものづくりのゲームチェンジャーとなりうる技術である、金属積層造形技術の現状と未来の可能性についてお話します。

「素形材産業を巡る動向とAMへの期待」の注目ポイント

  • 素形材産業は、サプライチェーンの川上(鉄鋼、非鉄金属などの素材メーカー)と川下(自動車、産業機械、情報通信機器などの最終製品メーカー)の間に位置する川中産業。
  • 日本の素形材産業は対GDP(国内総生産)比が約20%と他国より高い。素形材需要先における自動車の割合は約7割(ドイツ=約5割、アメリカ=約3割)を占める。
  • 自動車産業の変化により、川中に比して川上川下の付加価値が増加するスマイルカーブ化が起きている。また日本は2050年までにカーボンニュートラル化を宣言しており、脱炭素化に向けた企業の取組が増加、企業活動に浸透しつつある。
  • 経済産業省として、金属AMに寄せる期待は大きい。複雑形状・軽量化構造、複合素材、多品種少量生産の実現には必要な認識。造形速度はおよそ10年で10倍スピードアップしている。課題は高速高精度化、コスト低減、アプリケーションの拡大、製造拠点の分散化、人材育成など。
  • 日本の政策支援としては、「経済安全保障重要技術育成プログラム(K-program)/高度な金属積層造形システム技術の開発・実証」の公募に関して近々採択結果を公表予定。技術開発から社会実装を図る。産業総合技術研究所 製造プロセス部会では産学官連携を推進していく。
  • オールジャパンでの横断的取り組みが必要。目的として、製造拠点の分散化、在庫レス化、省資源化を挙げ、普及させるカギとして技術面では、高速・高精度化、コスト低減、市場拡大、ネットワーク面では、中小企業、地域集積、国際連携を挙げる。その基盤は品質保証、人材育成、普及啓発であり、経済産業省として支援していく。

設計段階からの量産最適化する重要性と、3Dプリンター活用の意義 (スワニー 橋爪氏)

【演題】 「設計段階からの量産最適化する重要性と、3Dプリンター活用の意義」
【講演者】 有限会社スワニー 代表取締役CEO 橋爪 良博 氏

有限会社スワニーは、「メイドINジャパンを再構築する」をビジョンに掲げ、設計を軸とし、試作、小ロット生産、量産化支援まで幅広く製造にまつわるサービスを提供しています。
三次元設計、生産技術に精通し、3Dプリンターを含む最新のデジタルツールを使いこなすノウハウを持つスワニーだからこそ実現できる新たなものづくりを、さまざまな異なる強みを持ったパートナー企業と連携し、真の価値を持つ「メイドINジャパン」の再構築を目指します。

「設計段階からの量産最適化する重要性と3Dプリンター活用の意義」の注目ポイント

  • 設計段階から量産最適化するために必要なデジタルツールを導入整備し、生産技術の再構築により中国と同等の価格での製造を目指している。最近の取り組みとして、スタートアップ支援と金型レス量産のため、クリーンルームを新設しCarbon社プリンターを導入。クリーンルームに置く理由は、品質に影響する変化点を減らすため。
  • また長野県伊那市、伊那市社会福祉協議会、日産自動車株式会社など6者共同によりペットボトルのキャップを回収しアップサイクルする取り組み「NISSANエコ キャップ アップサイクル プロジェクトin 伊那」を行った。
  • 今年PCもスマホも使わずに、安全に3Dプリントが楽しめるキッズ向け 3Dプリンター「Kidoodle」をクラウドファンディングで資金調達、目標額を達成し、発売した。

日本にAMを浸透させる -DMM.makeの挑戦と未来展望- (DMM 井上氏)

DMM社ブースでの展示サンプル(許可を得て記者撮影)

【演題】 「日本にAMを浸透させる -DMM.makeの挑戦と未来展望-」
【講演者】 合同会社DMM.com 3Dプリント事業部 Sales Manager 井上 悠 氏

日本最大級の3DプリントサービスのDDM.make 3Dプリントにおける日本の3Dプリント事例とお客様の抱えるニーズについて具体的な事例を交えてご紹介いたします。当日は実際に利用されたお客様とのパネルディスカッションも予定しております。

「日本にAMを浸透させる -DMM.makeの挑戦と未来展望」の注目ポイント

  • 日本にAMを浸透させるためには、具体的な事例まで提案し、アライアンスを組んでビジネスを作る各社の強みを活かして粛々と歩むこと、各社の強みを組み合わせて業界を広げていくが重要。DMMはその発信力、知名度を活かし、様々な業界とのつながりを作る方針。
  • ユーザーである株式会社SUBARU アクセサリー企画部 デザイン主査 須崎 兼則 氏とのパネルディスカッションでは、東京オートサロン2024での「東京国際カスタムカーコンテスト ドレスアップ・SUV部門」の最優秀賞を獲得したSUBARU LEGACY OUTBACK・TOYO TIRESのオーバーフェンダー、フロントグリルについて開発背景を紹介。
  • 開発のきっかけは、自分で車を買うときにデザインが2種類しか選べなかったこと。金型費、在庫、環境問題でパーツ種類を容易に増やせないが、AMなら可能なので、今回AMで作り、知ってもらおうと考えた。
  • 従来はデザイン表現として、型や塗装の制約があり、それをデザイナーが言い訳にしている面もあるが、AM使うとデザイナーが言い訳できなくなる。「こういう形は出来ない」という呪いを解きたい。
  • フェンダーはMEXプリントのまま未塗装としたのは、AMのイメージを変えたいため。固定概念を変える参考になるのは、dyson社が掃除機外観樹脂パーツで、従来は品質不良とされるフローラインを、デザインの一部としてそのまま採用したこと。SUBARUとしてAMを全体で使おうとはまだなっていないが、用品部門では使いたく、今後社内コンセンサスを取っていく。
  • コストや大きなものが作れるかが課題。これからはお客様がアクセサリーをデザインすることも考えられる。

海外でのAM活用事例とAMノウハウの活用方法について (オリックス・レンテック 袴田氏)

【演題】 「海外でのAM活用事例とAMノウハウの活用方法について」
【講演者】 オリックス・レンテック株式会社 事業戦略本部 事業開発部 副部長 袴田 友昭 氏

AMの最終製品への適用、量産適用が急速に拡大している海外、特に中国マーケットの情報と、オリックス・レンテック株式会社が考えるAM活用に必要なノウハウをご案内します。

「海外でのAM活用事例とAMノウハウの活用方法について」の注目ポイント

  • オリックス・レンテック社は東京技術センターに金属3Dプリンター3台を有し、海外含め500台以上による3Dプリンター出力サービスを行っている。
  • 2023年度のFormnext展示会(ドイツ フランクフルト)の出展状況では、開催国ドイツに次いで中国が多かった。2023年のグローバルAM装置販売シェアは、北米=32.7% 欧州=30.7% アジア=30.0%の3極化。中国市場規模 は約6700億円で世界シェア約25%。工業用3Dプリンターを100台以上所有する企業は8社存在する。中国内の主要な3D関連投資額は1340億円とみられ、アプリケーション比率は航空宇宙=16.7% 自動車=14.5% 医療=15.5% 家電電子機器=11.9%とのこと。
  • AM関連株式上場企業は44社あり、リーディングカンパニーとしてはFARSOON(樹脂・金属PBF)、UnionTech やZRAPID(樹脂VPP)、BLTやH3D(金属PBF)、SHINING 3D(3Dスキャナー)などがある。

中国AM市場急成長の理由

  • 政策: 2012年以降 AM関連の支援政策を国家と各省市で継続的に施行
  • 産業構造: 世界の工場としての役割 ゲームチェンジになり得るAMで勝負 工作機械では日、独に勝てない
  • 事業環境: 主要企業がベンチャーとして起業 国有企業、産業クラスター存在 産学官連携 政府政策支援
  • 商流: AM産業サプライチェーンが中国国内で完結
  • コスト: 欧米を100とすると装置価格は50-70 時間チャージは40-60 低い材料費、人件費、エネルギー価格

中国の代表的な装置メーカーとアプリケーション

  • Zrapid 
    樹脂UVレーザー光によるVPPプリンターメーカー 二次硬化不要で造形領域 1900✕1000✕800mm 世界で3,500台以上販売実績
  • BLT
    金属PBFプリンターメーカー 2023年売上高は前年比40%増 自社出力サービス用金属3Dプリンターを500台以上所有し、来年度末には1,000台に達する見込み AIRBUS社から量産サプライヤー認定 APPLE WATCHのベゼル部品も量産 5割は航空宇宙用途 その他折り畳みスマホヒンジを月間3万個量産 自動車ではタイヤ金型やサスペンションサブフレーム、ブレーキキャリパーなど

フォームネクストフォーラム東京2024のセミナー参加報告まとめ

まずは今回も幅広い分野の講演を多数無償で提供いただいた、主催者であるメッセフランクフルト ジャパン株式会社及び関係各位、講演者各位のご努力に敬意と感謝をお伝えしたい。

次に全体の傾向として、3Dプリンター装置、材料、ソフトウエアなど技術やツールについての講演ではなく、日本でAMを何のために、何に、どうやって活用していくかの提言、事例の講演が多く、需要側の関心がこれらについて高まっていることを反映していると感じた。

特に経済産業省から、オールジャパンによる取り組みの重要性と、目指す全体像を示した図が今回初めて公表され、これからの政策によるAM産業支援には大いに期待するところではあるが、単に頼るだけでなく、産学から情報や提案を積極的に提供し、共に取り組みをより良いものに作り上げていかなければならない。

また今回特に急成長する中国のAM市場について実情を知ることが出来た良い機会であった。上海交通大学特殊材料研究所(ISM)とドイツのアーヘン積層造形センター(ACAM)の共同研究組織ACAM China代表でもある、3D Science Valley創業者 Kitty Wang氏からも講演があり、2020年ごろからセラミック強化アルミアロイや安価ステンレス、バッテリーなどの需要と用途が先行して急成長したこと、2025年には630億RMB(約1.3兆円)に成長する予測があることも示された。日本でも既存産業市場と並行し、新しい需要、用途となる産業の創出と成長が先行するAM市場の成長は、産学官連携で起こし得ることであり、中国に学ぶ点もあると考える良いきっかけとなった。

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今回の記事に関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきたセミナーイベントに関する記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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