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3Dプリンターの販売から造形受託へ。デジファブへ回帰するYOKOITOの現在

yokoito 中島氏

シェアラボ編集部では、最も3Dプリンターを活用しているのは、日常的に顧客からの依頼で造形を行う3Dプリンターを導入しているサービスビューロだと考えている。ここ数年で3Dプリンターを20台、30台と保有する造形受託サービスを行うサービスビューロが日本でも情報発信を行うようになってきた。そんなサービスビューロの現場を取材し、いまサービスビューロが何に取り組み、何をチャンスと感じているか。前回取り上げた光造形方式の雄JMC社に引き続き引き続きお話を伺ったのはFormlabsの正規販売代理店として日本有数の販売実績をあげ、自社でも30台以上の各種3Dプリンターで造形受託を行う京都のYOKOITO社だ。

形状確認用の試作のみならず機能性材料を手軽に交換できるFormlabs社の3Dプリンターをはじめ様々な装置を扱うYOKOITO社だが、実際に機器を購入し、サービスビューロに造形を依頼しているのはどんな顧客層なのか。またユーザーの声にこたえて、 YOKOITO社はどんな展開を考えているのか。同社の代表取締役中島 佑太郎氏にお話を伺った。

機器の販売ではじまったお付き合いから受託造形へ広がるAM拠点

シェアラボ編集部: YOKOITOさんは2021年10月にFormlabs社のForm 3を大量に導入してYokoito Additive Manufacturing Centerを立ち上げられていますが、どういった狙いで始められたのでしょうか?

YOKOITO 中島氏:弊社はもともとデジタルファブリケーションを活用した新しいモノづくりビジネスに取り組みたいということで、学生の時に起業したのがはじまりです。最近まではデジタルファブリケーションを活用したものづくりがテーマで『3Dプリンターは手段の一つです』とお伝えしていたのですが、3Dプリンターの販売を中心に事業が拡大しまして、現在では3Dプリンティング技術を主とし様々な事業を行う企業として、全体で20名ほどにて活動しています。

その中でも特に YOKOITO Additive Manufacturing(YAM)という部門が、機体販売・サポートサービス、受託サービス(設計、受託造形)などといった、3Dプリンティング技術の活用にまつわる様々なサービスを一気通貫型で展開しています。

3Dプリンターでものを作る際はデータが必要になりますし、後処理も必要です。機器販売をきっかけにお付き合いが始まったお客様に「ちょっと設計を変えたらコストも納期も改善できる」という現場の知見をお伝えしながら一緒にモノづくりしていく場所としてYokoito Additive Manufacturing Centerを立ち上げました。

Form 3を多数導入。「Form 2と大きく違うと感じたのは造形の安定性です」こうした機種の手ごたえを知るのもサービスビューロの強み。

シェアラボ編集部:もうすぐ一年が経ちますが、手ごたえはどうですが?

YOKOITO 中島氏: 20台以上のForm 3シリーズを備えている公開された施設は日本ではうちだけです。アジア圏でも最大級といえると思います。SLS方式のFuse 1も2台導入しているのですが、すでにほぼ毎日稼働しており、積極的に設備強化をしていきたいと考えています。またこの一年で造形する部品点数は大幅に増えまして、一年間で数万点のパーツを造形していると思います。

シェアラボ編集部:順調に稼働しているということですね。装置販売も含めてですが、YOKOITOさんのお客さんはどんな方が多いのでしょうか?

YOKOITO 中島氏: 弊社はWEB集客を軸に幅広くFormlabs社の3Dプリンターを販売しているので、お客様の業種は様々です。メディカル業界でいうと人手不足に悩んでいる歯科技工士の方々への装置の販売もおこなっていますし、手術の練習用模型や研究用途での試作などで受託造形のご依頼も定期的にいただきます。

大学や研究室からのご相談も多く、実際にあった事例として、すでにForm 3を導入いただいた後に、パーツが合計1000個以上作りたいけど、研究室にあるリソースでは全てを作ることができない。なので、そのうちの700個はYOKOITOで作って欲しい、など、3Dプリンターをすでに購入されたお客さまへ量産時のアシストをさせていただくこともあります。

光造形方式は仕上がりがきれいなのですが、洗浄やサポート除去など後工程には時間がかかります。複数同じ部品を出したい時や、たくさんの部品を作りたい時には、私たちのように台数を持っているサービスビューロに依頼したほうが確実に、早く部品を手に入れることができるでしょう。その際に、お客様ご自身が使っている3Dプリンターと同じ3Dプリンターで造形できると安心感があると感じていただいているかもしれません。

シェアラボ編集部: 製造業の方々のご利用はいかがですか?

YOKOITO 中島氏:そうですね、受託サービスについては大企業の方からのご相談よりは、ベンチャー企業や中小企業の方々のご相談が多いです。1点だけの造形依頼もあれば、数百個の部品を作ることもあります。データについても一から設計や3Dスキャンデータの修正、3Dプリントのための最適化などさまざまなご依頼をいただきます。近場の方は、実際に弊社に来ていただいて、見本を見たり、装置の説明をしながらできることをご説明できるようにしています。機器の販売だけではなく、実際に設計や造形を行う技術者からもご説明できますので、すり合わせはしやすいんじゃないかと思います。

シェアラボ編集部:実際に造形に関わる方の説明が聞けるのは、安心感ありますね。京都ならではの伝統産業とのお仕事もありますか?

YOKOITO 中島氏: 以前西陣織の織機で使うシャトル(杼とも呼ばれる横糸を収めて糸を織る道具)の再生にまつわるプロジェクトのお手伝いをさせていただいたことがあります。また文化財クラスの芸術品を運ぶ際に、絶対に輸送中に傷をつけたくないということで、京都の老舗古美術店からのご依頼で専用の梱包容器を制作するためのレプリカを造形したこともあります。その際は、保管している場所までお伺いして3Dスキャナーで計測をさせていただきました。

シェアラボ編集部: 光造形方式は耐候性に難があると思うのですが、最終部品として利用されるケースも多いのでしょうか?

YOKOITO 中島氏:ご相談いただく際に用途をお伺いして、対策が必要な点はお伝えするようにしています。お客様側で塗装などをされるケースもあるとおもいますが、最終製品に使用される場合はSLS方式での造形をおすすめすることが多いです。最終部品として使うものもあれば、展示用途というか芸術用途のものもご依頼いただいています。

Fuse1の稼働状況を確認する中島氏。造形タスクがずらっと並んでいる。

装置を購入しなくてもAM(3Dプリンターならではのモノづくり)に取り組める

シェアラボ編集部: サービスビューロを運営していく中で見えてきたお客さんのニーズのようなものはありますか?

YOKOITO 中島氏:どんなものを作りたいのかなどお話を伺う中で『たまにしか利用しないです』とか『操作できる人が忙しい』という場合は、私たちが作りましょうかというお話をすることが増えてきました。従来のものに比べてコストメリットがあったり納期が短かったりするけれど、自分たちで作るのはハードルがあるというものは、私たちが代わりに作ってお届けすることができます。数百個の少量生産するお手伝いを行う場合も増えてきました。3Dプリンターを使いこなしていくともっと部品を3Dプリンターで作るというニーズが生まれてくるようです。

シェアラボ編集部: サービスビューロさんに相談することに慣れていない方もいると思うのですが、上手に相談するための方法ってあるのでしょうか?

YOKOITO 中島氏: すでにご自身で装置の特性や材料、サービスビューロ側のメニューをご存じの方は別ですが、慣れていない場合に一番よいと思うのは、「こんなことがやりたいけれど、どういう方法があるか教えてほしい」と相談していただくのが良いのではないでしょうか。納期や予算が決まっている場合は事前にお伝えいただけるとスムーズだと思います。

シェアラボ編集部:わからないなりに考えるよりも、素直に聞いたほうが早いこともあるということですね。

YOKOITO 中島氏:私たちは3Dプリンター販売だけではなく、造形受託も手がけています。3Dデータの制作も支援できます。状況にあわせたご提案ができると思います。

「『中小・ベンチャー企業のものづくりのお手伝い』と『デジタルなモノづくりプロセスの国内普及』という原点へ回帰する」(中島氏)

シェアラボ編集部: YOKOITOさんのようなサービスビューロは今後、全国にどんどん増えていくものでしょうか?

YOKOITO 中島氏:私たちのようなサービスビューロの数は、そこまで増えないのではないでしょうか。ただ装置があるだけではお客様のニーズにこたえられないからです。光造形に詳しい、この業種に強いとか、そういった強みがないと期待に応えられないと思います。政令指定都市に一つか二つ、生き残っていくのではないでしょうか。

シェアラボ編集部: そんな中で今後はどのような活動を行っていくご予定ですか?

YOKOITO 中島氏: 新しい展開に関しては、年内の然るべきタイミングに発表しようとおもっていますので、いまはお伝えできることが限られますが、施設の増強を考えています。大型機械の導入するなど設備を強化していきます。方向性としては中小・ベンチャー企業の方々のものづくりのお手伝いとデジタルなモノづくりプロセスの国内普及という私たちの原点へ回帰する動きをとっていくことになると思います。

***

汎用型サービスビューロと兼業型サービスビューロ

YOKOITOの中島氏への取材で、見えてきたのは、3Dプリンターの受託製造業としてのサービスビューロはYOKOITO のような製造業ベンチャーとしての「汎用型サービスビューロ」と既存の製造業のデジタルなモノづくりに対応する「兼業型サービスビューロ」の2種類の文脈があるということだった。

20台以上のForm 3シリーズがならぶ。写真はForm 3L。

中島氏が語ったように、YOKOITOのような汎用型サービスビューロが、日本で爆発的に増えるということはないだろう。直近の10年を振り返ると、地元に寄り添う形で展開しようとしたファブスペースの多くは撤退するか規模を縮小している。少なくとも現時点では個々人に寄り添うモノづくりや汎用的にさまざまな業種の相談に乗るという業態では、ビジネスとして採算をとるには政令指定都市レベルの人口や産業集積を必要とするようだ。

この延長線上で、特定のアプリケーションに特化したサービスビューロになることができれば、商圏を全国に広げることができると中島氏は語ってくれたが、まさに YOKOITOは試作から始まり、量産を支援できるようにSLS機の導入を増やそうとしている。利用者の活用度合いに足並みをそろえ、支援を行う構えには危なげがない。

同じように試作の高速造形に取り組むJMCも先駆者として確固たる地位を築いているが、よりアプリケーションをしぼり電子部品に特化し独自の製造ラインを開発するエレファンテック米国で全固体電池の生産に特化するsakuuなどの進化系専門事業者も見逃すことができない。

『より専門的に。より付加価値高く。』サービスビューロの進化はまだ始まったばかりだ。

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伊藤 正敏
シェアラボ編集部

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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