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米ベンチャーSakuuがシリコンバレーに3Dプリント製の固体電池生産工場を開設

sakuu社

2016年創業の全固体電池製造ベンチャーのSakuu社は、シリコンバレーに3Dプリント技術を使った全固体電池量産の新工場を建設した。同社は世界に先駆けて3Dプリント技術をつかった全固体電池(solid-state battery)の製造に取り組み2023年には量産に入る構えだ。79,000平方フィートにもなる広大な施設の建設費用は数百万ドル規模になる。

現在顧客向けに電池を製造しているSakuuの全固体電池パイロットラインの開設と、今年初めに実施した6,200万ドルの追加資金調達の成功に続く、大きな動きだ。(画像はシリコンバレーに建設されたSakuuの新施設 出典:Sakuu社)

Sakuu社の新施設について

シリコンバレーの新施設は、Sakuu社の主要なエンジニアリング拠点として使用され、Sakuu社が掲げる3Dプリンティングのためのギガファクトリー(Sakuu G-One)づくりへのステップとなる。
施設には電池、エンジニアリング、材料科学、研究開発、3Dプリンティングの各チームが集結し、新しいギガファクトリーのための従業員へのトレーニングや顧客製品のデモを監督する予定だ。2023年の第一四半期までには115名の従業員を従事させる予定となっている。

 Sakuu社の3Dプリント電池生産の様子 出展:Sakuu社

Sakuu社の3Dプリント製の全固体電池生産ライン 出典:Sakuu社

新施設では、Sakuu社を代表する製品として、安全でリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度を持つ全固体電池をカスタム形状・サイズで高速プリントできる世界初の3Dプリントプラットフォーム「Kavian」が展示される。また、医療機器、IoTセンサー、その他の最先端電子機器を、持続可能かつ効率的な方法で製造可能な、電池以外の製造プラットフォームも展示される予定だ。

KavinプラットフォームーSakuu社が開発した3Dプリント製の全固体電池製造ライン

 
開発がすすめられている固体電池 出展:SAKUU社

開発がすすめられている全固体電池 出典:Sakuu社

現在、電気自動車にはリチウムイオン電池を使用するのが一般的だ。リチウムイオン電池は電流を発生させるために必要な電解質が「液体」だが、それが「固体」となることで多くのメリットがある。その筆頭が「安全性」だ。固体電池であれば、損傷や過熱による発火の危険性がなくなる。また、それにより冷却装置や安全装置も不要となる。

さらに、全固体電池は従来のリチウムイオン電池に比べ2倍のエネルギー密度を持つ可能性があるという。同じエネルギー密度で半分の大きさの電池、または同じ大きさで2倍のエネルギー密度の電池を製造可能になるという大きなポテンシャルを持っている。

しかし全固体電池は製造が難しいため量産部品に採用されるケースが少なかった。液体を介して電荷を交流させる仕組みを固体に置き換える技術的ハードルが高いため、研究段階でとどまっているケースが多かった。この壁を打ち破る知らせが今回のSakuu社の大幅設備増強だ。

Sakuu社がAdditiveManufactringMediaで語ったところによると、Kavian と呼ぶ独自開発の製造ラインではセラミック、ガラス、金属、および樹脂材料を 1 つの層に造形するマルチマテリアル造形を実現している固体電解質の組成や噴射する材料の種類、材料噴射プロセスの詳細は企業秘密だというが、バインダー ジェット方式で厚さ 25 ミクロンのセラミックの層を造形し、その上に、ミクロン単位の厚さの集電体をマテリアルジェット方式で造形していくこと、独自のセラミック パウダーと結合剤、および PoraLyte と呼ばれるサポート材料を含む、すべての材料を独自に開発していることは明らかにしている。マルチマテリアル材料による造形や複数のAM技術を組み合わせて、大きな技術的ブレイクスルーをなしとげ、実際の製造現場レベルまで落とし込んでいる点からも同社の強さが伝わってくる。

3Dプリンティングプラットフォーム「Kavian」を導入した施設の完成予想図 出展:SAKUU社

3Dプリンティングプラットフォーム「Kavian」を導入した施設の完成予想図 出典:SAKUU社

3Dプリンターによるマルチマテリアル造形のノウハウを活かして、2023年から全固体電池量産を開始予定

今回のSakuu社の工場設備増設は、2023年からの量産のための設備投資で、すでに量産案件を受注しているとみられる。Sakuuの全固体電池開発には、開発パートナーとして2019年に全固体電池製造ベンチャーのKercelに出資した武藤精密との連携もあるということで、将来的には日本車や日本の製造業とも関連性があるかもしれない取り組みだった。全固体電池以外にも、マルチマテリアル造形のノウハウを持っているSakuu社は「セラミックを絶縁体として使用し、金属をコイルとして使用して、電気モーターの部品を生産する」など他分野でも応用が可能であるとしており、自動車以外にも微細造形分野への広がりに意欲を見せているようだ。

自動車の電動化にむけた3Dプリンター活用事例/導入事例

今後、欧州のEV対応がどのような変化を見せるかにもよってくるが、自動車の電動化をふくめCASE対応は100年の一度の大きな波として、世界の製造業に技術革新を迫っている。ブレイクスルーの手段の一つとして3Dプリンター活用は今後も重要な役割を果たすだろう。自動車業界における3Dプリンターの活用に関しては過去も何度かとりあげているので、ShareLabNEWSの関連記事も参照してほしい。

>>PBF式金属3Dプリンターが電気自動車などに使用する電気モーター部品を開発-ExOne

>>日産自動車、スペイン工場で3Dプリンターを導入し製造コスト削減

>>3Dプリンターでつくる自動車は安さだけではない。注目される安全性と環境負荷軽減

>>武藤精密工業が3Dプリンターで全固体電池を作る米ベンチャーKercelに出資

>>東北大学などの研究グループがナトリウムイオン電池製造にAM技術を利用し容量4倍を実現

 

関連情報

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