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PBF式金属3Dプリンターが電気自動車などに使用する電気モーター部品を開発-ExOne

バインダージェット方式金属3DプリンターのパイオニアであるExOneは、8月にDesktop Metalによる買収が進む中、電気自動車などの活用に注目される電気モーター用の銅製電子巻線設計の開発を発表した。(写真は今回デザインされた銅製電子巻線設計 / 出典:ExOne)

ExOne は、米テネシー州を拠点とするスタートアップ企業 Maxxwell(以下、マックスウェル社)と協力し、電気自動車やその他の大型車両、産業用機器に使用可能な軸流式電気モーターのために、独自の銅製電子巻線デザインを開発したことを発表。

バインダージェット方式について詳細はこちらの記事でご紹介しているので、興味ある方は併せてご覧いただきたい。

マックスウェル社とは

2018年に設立されたマックスウェル社は、レアアース磁石を使わない電気モーターを作るというミッションの一環として、これまでに 10KW の空冷式モーター発電機と150kWの液冷式モーターの2製品を商品化している。Maxxwell Motorsが製作したモーターは独自の軸方向のフラックス設計を採用しており、電気自動車のほか、大型車両や産業機器にも使用できる。

レアアースとは
La、Ce、Nd、Dyなどを含む性質の似た17種類の元素の総称で永久磁石である。強力なNd(ネオジム)磁石を自動車用途などの高温環境下で使用するには、一般的にDy(ジスプロシウム)を添加することにより高温でも磁力を高く保つようにする必要がある。しかし、Dyはレアアースの中でも高価で希少なレアメタル(希少金属)に分類され、地政学的なリスクの高い金属であるため、Dyを使わない磁石の開発は資源枯渇の観点から、使用を控えていく必要に迫られている。特に今後、レアアースを多く必要とする電気自動車や風力発電機のために早急に解決したい事項である。

なぜ3Dプリンター技術で開発されたか

化石燃料からハイブリッド車や電気自動車への移行に銅製の巻線やローターは、乗用車の駆動を司るうえで不可欠な部品のひとつだ。従来の設計・デザインでは、一般的に非効率的で製造コストが高い。さらに形状が限定されており、全体的な性能の妨げとなっていた。

しかし、3Dプリンター技術を活用することでより複雑な銅のデザインを作ることができる。マックスウェル社の 9 件の特許の中には、モーターを包む固定子巻線に 36 個の銅コイルを使用した電気モーターのデザインがある。同社は ExOne 協力のもと、これらのコイルを1つの3Dプリント部品に統合することを目的としている。

Maxxwell Motorの特許取得済みの電気モーター設計(出典:ExOne)

これまでのところ、両社は銅製の部品を3Dプリントすることでコンセプトの実現性を証明している。マックスウェル社 CEO のマイケル・パリティー氏は3Dプリンターを活用するメリットについて以下のようにコメントしている。

3Dプリントすることで、多くの課題が解消され、実際にモーター自体の性能を向上させることができます。マックスウェルでは、真の意味で効率を高め、廃棄物を減らし、性能を最適化するために、可能な限りサステイナブルな、アディティブ・マニュファクチャリングの視点を取り入れています。

マックスウェル社 CEO マイケル・パリティー氏

銅のAM活用

銅はアディティブ・マニュファクチャリング(AM)で盛んな分野である。

この分野で主流となっているのが粉末床融合法(PBF)だ。パウダーベッド方式の金属3Dプリントでは各種材料が使われているが、今後開発が進んでいくと思われる材料の一つに銅がある。銅は熱伝導率が高く、アルミの約2倍、ステンレスの約20倍と大きく、放熱用途などで活躍する。

しかし、一般的には溶接難易度が高く、扱いにくいといわれているのが銅でもある。特にレーザーを使うタイプの3Dプリンターでは密度を上げにくく、3Dプリントする際に高反射率と高熱伝導率の2つの難しい課題がある。研究は進んでいるもの、すぐに実用化するのは時間がかかる。

しかし、バウンドメタル印刷は、レーザーや電子ビームを使用しないため、このニッチな分野に新風を吹き込もうとしている。これまでにマークフォージド社やデスクトップメタル社は、バウンドメタルエクストルージョンシステムを使って純銅で3Dプリントできることを実証してきた。メタルバインダージェッティングは、銅を使った3Dプリントのスループットを向上させられるので、ExOneを使えば、銅パーツの真の量産が可能になる。

金属3Dプリンターで容易に銅が扱えるようになれば、放熱フィンや熱交換器など複雑な部品の造形に向いている材料と考えられており、注目があつまっている。

今後の展開

パートナーシップの進展に伴い、マックスウェル社は、バインダージェットを使用して巻線アセンブリを単一のユニットとして3Dプリントすることを目指している。

これにより、コイルの巻き付け、曲げ、金型、溶接といったいままで別々に行っていた工程が不要になる。ExOne社は今後、バインダージェット式金属3Dプリンターが企業の大量生産の恒久的な一部となるように着実と知識とノウハウ、技術を提供し続けていくだろう。

コイルのような形状をする必要があり、複雑な形をしている。
3Dプリンターでデザインされた高効率の銅電子巻きデザイン(出典:ExOne)

関連情報

シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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