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カナダのコンコルディア大学が超音波を利用する新しい3Dプリンティング技術DSP方式を発表

DSP方式

カナダのコンコルディア大学による研究成果で、超音波を用いて複雑で精密な構造体を造形する「ダイレクトサウンドプリンティング(DSP:Direct Sound Printing)」と名付けられた新しい造形方式が発表された。

超音波は、細胞組織や腫瘍に対するレーザー処理のような、破壊的な処置をする際に既に使われているが、DSP方式は超音波を利用して液体材料を振動させることで瞬間的に熱源となる気泡を作り出し造形を行うという全く新しいアプローチをとる造形方式で、3Dプリンティングに新たな選択肢をもたらす可能性がある。

(画像はDSP方式のイメージ 出典:コンコルディア大学)

ダイレクトサウンドプリンティング(DSP)方式の概要

コンコルディア大学の研究チームは、超音波を特定の周波数と出力で用いると、非常に局所的かつ集中的に化学反応が起きることを発見した。DSP方式は、この現象を利用した造形方法になる。

液体に超音波を照射することでマイクロサイズの気泡が発生する。さらに音波によって気泡を振動させることで気泡の温度を瞬間的に非常に高い温度(約1万5,000℃)まで上昇させ、液体樹脂を熱硬化させることができるという。超音波照射装置を特定の経路に沿って移動させれば、複雑な形状の立体の構造物の造形が可能だ。

気泡内部では、振動による反応はごくわずかな時間(1兆分の1秒)しか持続しないため、周囲の材料に影響を与えることはないという。気泡は、液体樹脂を固体または半固体に変化させる化学反応を促進するための触媒として使用できるという。

レーザー照射で熱溶融させる方式やUV光をあてて材料を硬化させる方式、バインダーや材料を噴射する方式などいままでの造形方式は、造形させたい材料に直接働きかける必要があったが、この超音波による造形の最大の特徴は、超音波を壁や皮膚を通過させれば、障害物に直接影響をあたえることなく向こう側に構造物を造形できる点にある。

DSP方式は、航空宇宙工学や修理の分野、医療分野への応用が期待される。超音波は金属製のシェルのような不透明な表面を透過するため、従来の3Dプリントでは不可能な、機体の奥深くにある部品のメンテナンスも可能になるだろう。また、人間や動物の体内に対してDSP方式を用いれば、切開を行うことなく内部に医療用インプラントを生成することなども期待される。

実際にDSP方式で樹脂材料の造形実験が成功

DSPで造形された耳や鼻のモデル 出展:-nature-communications

DSP方式で造形された耳や鼻のモデル 出典:nature-communications

コンコルディア大学の研究チームは、幅広い用途に用いられているポリジメチルシロキサン(PDMS)という樹脂材料で実験した。PDMSは、コンタクトレンズや医療用器具、ゴム製品、防水剤、潤滑油、耐熱タイルなど、幅広い分野で使用されている樹脂材料だ。実際に超音波照射装置を特定の経路に沿って移動させることで、ピクセル単位の複雑な立体構造物を造形することに成功しており、樹脂以外にもセラミックなど、さまざまな材料の3Dプリントに成功している。造形する構造物の性質は、超音波の周波数が持続する時間と使用材料の粘度で調整できるという。

今後は、樹脂と金属の複合材料(マルチマテリアル)に挑戦し、最終的には金属をプリントすることを目指し研究をつづける模様だ。

DSPで造形されたカエデのモデル 出展:nature-communications

DSPで造形されたカエデのモデル 出典:nature-communications

現在使用されている3Dプリント方法のほとんどは、樹脂材料などの材料を造形するために、光や熱、結合剤などを直接照射するアプローチをとっていた。音波を利用して新しい物体を作り出すDSP方式は、間に障害物があっても設定次第で壁を通り越し、その向こう側に構造物を造形できる。これまでの限界を打破し常識を覆すブレイクスルーであるといっても過言ではないだろう。

さまざまな3Dプリンターに関する造形方式に注目!

3Dプリンターの造形方式は、主に扱う材料やアプローチ方法によってさまざまだ。ここでは基本的なおさらいから応用的な造形方式まで改めて紹介しておく。材料押し出し方式(MEX方式/FDM方式) 光造形方式(液相光重合方式) 結合剤噴射法(バインダージェット方式)材料噴射方式 / MJT(Material Jetting) | マテリアルジェット方式粉末床溶融結合法 / PBF(Powder Bed Fusion) | パウダーベッドフュージョン方式指向性エネルギー堆積 / DED(Direct Energy Deposition) | 3Dプリンターの造形方式各分類のなかにも、実施方式や取り組み方でさらに細分化できる。興味がある方は簡単にまとめた記事もご用意しているのでご確認いただきたい。

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