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EOSが描くAM業界のエコシステム(後編)ーJAPAN EOS DAY 2022レポート

EOS JAPAN DAY

独3DプリンターメーカーEOS社が2022年9月6日 (火)に開催したハウスイベント「JAPAN EOS DAY 2022」。前編に続いて、後編である本稿では当イベントレポートとして、EOSが提供しているコンサルティングサービス(Additive Minds, AM Academy)、EOSが描くEcosystem、パートナー企業Hyperganic社の取り組みをお伝えする。(写真・資料提供:EOS Japan、Hyperganic)

>>前編:EOSが描くAM業界のエコシステム(前編)ーJAPAN EOS DAY 2022レポート

EOS コンサルティングについて (EOS Japan: Christopher Schmitz)

EOSは装置メーカーとして、樹脂・金属の業務用3Dプリンタ―の開発・製造・販売だけでなく、コンサルティングサービスをグローバルに提供している。当サービスについて、 EOS JapanのChristopher Schmitz氏が「How to scale your Additive Manufacturing Business」と題し、プレゼンテーションを行った。

プレゼンテーション風景  EOS Japan: Schmitz氏
プレゼンテーション風景 EOS Japan: Schmitz氏

世界最大規模のAMコンサルティング「Additive Minds」

EOSは120名以上のAM専門家を有し、68の国・地域でAM活用のコンサルティングサービス「Addiive Minds」を提供してきた実績がある。その内容は人材の研修・教育、用途開発、コンサルティングと多岐にわたる。

EOS AM Journey
EOSのAM Journey (講演資料抜粋)
顧客のAM導入段階を5つに分け、EOSが支援を行っている。

「我々は顧客がAMを導入するためのプロセスを独自に「Additive Manufacturing Journey」と名付け、5つのステップに分類し、支援を行っている」 (EOS Japan:Schmitz氏)

EOSは顧客のAM適用度に応じて、5つの段階に分けて顧客を支援している。初期段階の「Understand AM Why」では、AMでの生産方法、サプライチェーンなどの検討から始め、「Find an Application」にてAMならではの用途の見極め、「Develop your Application & Business Case」にて顧客の従来の生産方法からAMへの適応、認証や品質管理(特に医療や航空宇宙分野などは規制が多く、顧客単体では解決が難しい)の問題をクリアしていく「Industrialize and Quality」、最後にAMをフルに使い倒すために大規模な自動化、更なる稼働率の向上、部品コストの低減を進める「Produce and Scale」。

実際にこれらの 「Additive Manufacturing Journey」 の各ステップに照らし合わせ、EOSはグローバルで、Airbusの航空機部品やChanelのマスカラの量産など多くのプロジェクト立ち上げ、支援してきた。

EOS Airbus Case
EOSが実際にAirbus A350 XWB “Latch Shaft”のAM製造を支援した際の支援ステップ (講演資料抜粋)
当プロジェクトは10か月にわたってEOSが支援を行った。

EOSはこれらステップに応じたコンサルティングはもちろん、オフライン・オンラインでの学習コンテンツ「Additive Minds Academy」を提供している。個人に合わせたカスタマイズコース「Learning Program」に加えて、2か月にわたるDMLS方式とSLS方式やAM設計について学べるコース「Learning Paths」、20種以上のE-ラーニングと、顧客のレベル・ニーズに合わせ展開している。学習コンテンツ「」に興味がある方は以下URLを参照いただきたい。

>>Additive Minds Academy(外部サイト、英語)

EOS Ecosystemについて (EOS Japan: 橋爪 康晃)

次いで、EOS Japan Regional Managerの橋爪氏が「EOS Ecosystemについて」と題した講演を行った。

デジタル化の波に取り残された日本

海外に比べて、AM活用の浸透が遅れているという日本。実際にはEOS、昨年11月に北米地域での累計1,000台の産業用3Dプリンタ―機器の納入実績を発表した。(参考情報:EOS プレスリリース 3D Printing Industry Milestone: EOS North America Celebrates Delivery of 1,000th Machine 英語)また、今年2022年の5月にはバイデン大統領自らが「Additive Manufacturing Forward (AM Forward)」と称し、米国内での製造業におけるサプライチェーンの復活を目的とし、中小企業においても3Dプリンティング技術が活用されるよう、新たなプログラムを発表した。

 EOS Japan:橋爪氏
EOS Japan: 橋爪氏

橋爪氏はこのような、海外での更なるAMおよびデジタル・マニュファクチャリングの浸透は欧米に限られた話ではなく、そしてそれらは米政府が後押しをしているように、ある一企業が単体のみ活動している訳ありではない、と述べている。「例えば、韓国では、大手自動車メーカーKIA社がSiemensらとの協業でAM技術を用いたダイカストの活用が進んでいる。このような話が表に出で来ているということは、裏ではさらにAM活用が進んでいると推察される。」橋爪氏

『自前主義の終了』

AM活用検討・浸透のステップを大きく三つに分けた時、「AMは使えるのか」、「使うか・使わないか」、「どこにどのように使うのか」、海外では既に3つ目のステップに入っている企業が多いが、一方日本では、まだ3段階目に達していない企業が多いように感じられる。

この現状を打破すべく橋爪氏は「デジタル化社会において、あくまで手段の一つであるAM技術を国内で浸透させる・国内においてAMを適切に進化させるにはには装置メーカーだけでは足りない。従来工法との比較、各アプリケーション・業界の知識、導入企業内でのシステム・ソフトウェアの連携、造形前後プロセスとの連携など、取り組みべき事項は多岐にわたる。ここで重要なのが『自前主義の終了』である。」

国内3Dプリンタ―業界にでは「EOS」と聞くと、一産業用3Dプリンタ―メーカーである単体企業のEOS社を想像される方が多いと思われるが、実際にはEOSはグループ企業である。

装置メーカーとしての顔だけでなく、オーナー企業であるLanger Family Holdingの傘下には、EOSを含め多くの産業用3Dプリンタ―の中に用いられているレーザースキャナーのサプライヤーScanlab、AM技術のコンサルティング・人材育成サービスを提供しているAdditive Minds、VC(ベンチャー・キャピタル)のAM VenturesなどAMに関わるさまざまな領域で活躍する企業が存在している。またハードウェアだけでなく、マテリアライズ社などをはじめソフトウェアの側面でも多くのパートナー企業と提携をして、EOSはAM活用の浸透を促進している。EOSはこれらのエコシステムを用い、そして国内でさらにこのエコシステムを成長させていくとのこと。

Hyperganic社 講演(Hyperganic: Lin Kayser, Josefine Lissner)

Hyperganic:Josefine Lissner氏
Hyperganic: Josefine Lissner氏

そんなAM業界のエコシステム構想を描くEOSが実際にEOSグループ外企業と協業を行っている例が、Hyperganic社である。彼らは、アルゴリズム工学を用い3Dプリンティング技術の新境地を開拓しているドイツのスタートアップ企業である。AIを組み込んだエンジニアリングソフトウェアの開発を行っている同社は、独自アルゴリズムを用いて、造形物の設計を行っている。「Hyperganic Core」と呼ばれるこのソフトウェアは、特定の機能を持つ対象物の作り方をインプットさせ機械学習させることで、さまざまなパターンの3D設計モデルを製作することができる。

Hyperganic社のCEO、Lin Kayser氏は「製造業では数十年前と比べハードウェアの進化スピードは速いが、ソフトウェアはそこまで進化できていない。」と述べ、AI技術と3Dプリンティングを掛け合わせたデジタル・マニュファクチャリングを実践している。

Hyperganic社の独自アルゴリズムが設計したロケットエンジンの設計モデル
Hyperganic社が設計したエアロスパイクロケットエンジン

この一見禍々しく、脈を打ちそうな造形物は、同社が設計した「史上最も複雑な3Dプリント造形物」と称するエアロスパイクロケットエンジンだ。主流の「ベル型ノズル」のロケットエンジンにはない、スパイク(突起)がエンジン内にあり、ガスが膨張するスパイクに噴出されることで推進力を生むことができる。そのため「ベル型ノズル」と比べ、燃料効率が15~20%程度向上されており、数パーセントの改善が非常に大きな価値を持つロケット工学の分野においては劇的な改善である。

またベル型エンジンは外部圧力による影響を受けるため、大きなノズルのエンジンは宇宙空間で、小さなものは大気圏内で、というように最適なサイズのノズルをロケットに搭載する必要があったが、エアロスパイクロケットエンジンは、外部圧力の影響を受けないとされる。

彼らのアルゴリズムモデルを用いれば、熱伝達システムや燃焼室の形状、スパイクのサイズなどさまざまなパターンの3Dモデルをものの数分で作成でき、その反復(イテレーション)にも数分しかかからない。正しくデジタルを最大限活用して、アディティブ・マニュファクチャリングの効果を最大限引き出している。

Hyperganic社の独自アルゴリズムが設計したロケットエンジンの設計モデル

同モデルは現在テスト検証段階であり、これからの実用化が期待されている。 Hyperganicの動向はこれからもウォッチしていきたい。

閉会の辞(EOS APAC: Jack Wu)

海外での実績が豊富にあり、国内のAM業界でもであるEOS。装置メーカーであるEOSは国内でのAM技術の浸透のため、Additive Mindsによるコンサルティング・人材教育・教育コンテンツ提供をはじめ、自社・グループ・パートナー全体でさまざまな取り組みを始めている。

最後に閉会の辞として、EOS APAC代表のJack Wu氏は以下のように述べている。

EOS APAC: Jack Wu氏

「EOSはこれからも産業用AM(アディティブ・マニュファクチャリング)のリーディングカンパニーである。今回のJAPAN EOS DAYを期に、改めて日本国内で皆さまと一緒にAMのエコシステムを作り上げていきたい。COVIDを経て、EOSは尚さらにグローバル全体で成長してきた。そこで培った経験・ケイパビリティを用いて日本でのAM活用を支援していく。もしAM活用において些細なことでも困り事があればEOSにぜひご相談いただきたい。無料の相談会E-learningコンテンツなどこれからAM活用を始める人のサポートも豊富に用意している。」(EOS APAC: Jack Wu氏)

編集後記

国内でのAM技術浸透のため、業界全体で必要なピースを丁寧に埋めていくEOSの取り組み

欧米レベルでの3Dプリンターによる量産ラインの構築は、力技で3Dプリンターを並列稼働させるだけでは実現できない。各装置で行われる工程を連結させる工程間のつなぎこみが必要だし、今日的課題として手作業からの脱却も求められる。また高度の連携した製造管理システムとのつなぎこみも必要だ。

やることが無数にある中、EOSはプロセス全体をきちんと把握した上で、各プロセスごとに必要な要素を洗い出し、そして何よりも重要なこととして、「自前主義」ではなくグループ、パートナー、そしてAM業界全体で、丁寧に具現化しようとしている印象を持った。Additive Mindsというサービス名でコンサルティングサービスを提供しながら、世界中で数千システムを納入してきた実績を持って、正攻法での装置開発と製造ライン化に取り組んでいるEOSの取り組みには、今後とも多くの点を学ぶことができるだろう。

>>前編:EOSが描くAM業界のエコシステム(前編)ーJAPAN EOS DAY 2022レポート

写真は、同イベント会場に併設されていた展示物
Hyperganic社のロケットエンジンに加えて、EOSやパートナー企業が設計・造形した造形物が多く展示されていた。

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森口 雅史
シェアラボ編集部

文系出身ならではの視点を活かし、難解複雑な話をかみ砕き読者に分かりやすく伝えることを大事にしています。AM業界を盛り上げるため、溢れ出る情熱(パッション)とともに現場の生の声をみなさまにお届けいたします。

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