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『AM Forward (AMフォワード)』~バイデン米大統領が掲げる3Dプリンターを活用した内需拡大施策

バイデン

『AM Forward (AMフォワード)』 とは?

2022年5月、ジョー・バイデン米大統領は、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)を活用して、米国国内のサプライチェーンの回復力を向上させることを目的とした新しい政策方針AMフォワードを発表した。『AM フォワード』は、米国の大企業が米国に本拠地を置く小規模なサプライヤーからAM部品を調達することを奨励するものである。

『AM フォワード』プログラムは、コロナによるグローバルなサプライチェーンの寸断への反省の元、米国の国内製造業がAMに取り組むことで、ローカルなサプライチェーンが成長することを目指している。今回の記事では米バイデン政権が掲げる『AM フォワード』の概要、賛同企業の取り組み、具体的な政権側の支援内容を紹介しながら、今後の展望について考えていく。

バイデン政権の取り組み:AMフォワードが不可欠な理由

AMは3Dプリンティング技術を活用し、デジタルな3D設計モデルから、直接部品を製造する取り組みだ。この技術のポイントは、部品設計者が通常直面する制限を取り除き、機械加工、鋳造、またはその他の成形プロセスなどの従来の生産プロセスを使用する点にある。従来の切削加工では作れなかったような内部中空構造ラティス形状を多用した複雑な形状を備えた部品や、難削材を使った部品加工を得意とするものでもある。

『AMフォワード』は、非営利のアメリカ応用科学技術研究機構 (ASTRO)によって支援されている。バイデン政権はホワイトハウスの声明で、中小規模の製造業者が資本、技術支援、労働力訓練を通じて適切な生産能力の採用を支援し、競争力を高めるのを支援するための連邦プログラムを開始する計画を発表した。

バイデン政権は、中小企業がAM活用により成長を遂げるには、労働者のスキルアップが不可欠だと考えているようだ。AM技術を円滑に取り入れるために、米国退役軍人省を中心としたAM技術支援活動America MakesはAM フォワードに取り組む企業や労働者のためにトレーニング・カリキュラムを開発し、米国労働省とともに、製造事業者がAMの見習いプログラムを開始するのを支援している。

アメリカ国内の各企業の対応は

これまでのところ、GEアビエーション、ハネウェル、ロッキード・マーティン、レイセオン、シーメンス・エナジーは、以下の目的で『AM フォワード』プログラムに参加している。

航空機エンジンメーカーのGEアビエーションは、中小規模のサプライヤーをターゲットにして、AMまたは関連技術を使用して製造された製品に対して、その見積もりの50%で関連するようにすると述べた。また、米国に本拠地を置く中小企業サプライヤーからのAM部品を、外部調達総額の30%とすることを目標としている。

電子制御システムや自動化機器の製造販売業であるハネウェルは、米国に本拠地を置く中小企業のサプライヤーをターゲットにし、製品、機械、製造ツーリング、および/またはAM関連技術を利用した製造プロセス開発のための見積パッケージに応じて競争している。また、部品設計、データ生成、機械操作、後処理、部品検査/品質管理について、技術支援を中小企業のサプライヤーに提供している。

航空宇宙産業で大きな世界シェアを誇るロッキード・マーティンは、中小企業のサプライヤーと協力して、鋳物や鍛造品の代替品としてのAMの使用に焦点を当てた積層造形技術の性能を向上させるための研究を実施している。さらに、コースワークや見習い制度を含む、労働力開発のための大学や高等専門学校のプログラムにも参加している。

軍需製品メーカーのレイセオンは、AMまたは関連技術を使用して製造された製品の見積もり要求の50%以上に中小企業メーカーの関与を求めている。また、AM部品の調達プロセスの簡素化と迅速化も目指している。

エネルギー産業向けの設備事業者であるシーメンス・エナジーは、外部から調達されたAM部品とサービス全体の20~40%を、米国に拠点を置くサプライヤーとパートナーから購入することを目標としている。そのため、米国の中小企業サプライヤー10~20社を巻き込み、AM能力の向上を支援している。また、その10~20社の中小企業サプライヤーに、検査と後処理に関するトレーニングも実施している。

AMを業界標準化しようとする動き

AMについて、行政は、業界標準を定義する必要性があると強調した。米国商務省は、米国国立標準技術研究所(NIST)を通じて、金属AMの広範な使用に対する主要な障壁を克服するために測定科学研究を実施すると宣言した。新しく優先度の高い規格の技術的基盤を開発し、国際標準規格の策定を行うASTMインターナショナル国際標準化機構(ISO)米国機械学会(ASME)、およびその他の標準化団体内のリーダーシップを通じて、これらの結果をAMフォワード参加者に広めていく予定だ。

AM先進国であるアメリカで進むAM活用の大衆化推進策に学べ

日本でも国際競争力のある国産産業用3Dプリンターの開発をすすめるためにTRAFAMといったコンソーシアムを組成し助成金を給付する取り組みや、関西の製造業を対象にした近畿経済産業局主導による関西3D推進協議会といった育成策が推進されたが、今回のアメリカの取り組み『AMフォワード』は、より踏み込んだ内容になっている。

日本とアメリカでは政策環境は大きく違うが、AMフォワードのようなローカルなサプライチェーン構築の動きから学べること大いにあるはずだ。今後の具体的な取り組みにも注目していきたい。

 

増田 健司
ShareLab編集部

メーカーの研究開発職として新素材開発に従事後、特許庁で特許出願の審査業務を10年以上経験。弁理士として独立後は、企業の知財戦略をサポートする傍ら、3Dプリンターをはじめとした先端技術に関する情報発信を行っている。趣味は深夜のショッピングチャンネル鑑賞。

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