Stratasysを巡る買収攻勢劇に学ぶ、業界プレイヤー各社の現在と未来
樹脂3Dプリンターメーカー大手のStratasys(ストラタシス)を相手に小が大を飲む買収を仕掛けているNano Dimension(ディメンション)。ストラタシス経営陣はNano Dimension(ナノディメンション)の提案を歯牙にもかけずデスクトップメタルとの合併を進行しようしているが、ナノディメンションはなおも食い下がり株主工作として特別公開買付を5月25日から行っており諦めない姿勢を見せている。(写真はNano Dimensionの買収提案を批判的に解説するStratasysの特設ページ。出典:Stratasys)
3Dプリンター界隈の業界地図を大きく揺るがす企業合併や買収劇の行方も気になるところだが、買収を巡る攻防に関心がない読者にもぜひご紹介したいのが、AM市場の現状や展望を表した株主向け資料だ。
ちなみに今回登場する企業の企業規模や売上は?
今回渦中のストラタシス、ナノディメンション、デスクトップメタルは日本では上場しておらず日本での売上高も公開していない。また3Dプリンターは工作機械のように出荷統計も取られていないため、正確な出荷台数も明確でないため、全体感がつかみにくい。ストラタシスが樹脂造形の分野で強みを持っている一方で、ナノディメンションは電子部品やセラミック部品をAM造形するAME分野を抑えている。
また、デスクトップメタルは金属部品に強みがあるなど、同じ3Dプリンターメーカーでも取り組んでいる分野が異なるため、単純比較はできないが、ストラタシスの発表資料から企業規模をおさらいしてみよう。
デスクトップメタルは売上$200M、ナノディメンションは売上$44Mということで売上規模が約5倍大きい。
ストラタシスの売上が$650Mということで、デスクトップメタルの約3倍、ナノディメンションの約15倍だ。
具体的社名は伏せられているが、同じく上場している同業他社と比べると頭一つ分抜きん出る規模となる。
AMの市場規模は?
気になるAMの市場規模に関して、調査会社がさまざまな数字を上げている中ではあるが、ストラタシスが資料の中で触れている数字をご紹介しておく。
過去10年で10倍以上に成長したということで、2022年の市場規模は$18B。さらに今後10年で10倍程度の成長が見込まれるということで、2032年には$100Bを超える見込みを示している。過去10年の成長は試作品用途から治具制作への利用用途の拡大が牽引した。今後10年の成長は最終部品の量産が牽引する見込みだ。
今後どんな造形方式が伸びる?
ストラタシスによれば樹脂材料のTAM(想定される市場規模)は年率20%以上で成長し、その結果2027年には、$17.3Bに到達するという。樹脂材料における造形方式の内訳は数字では明示されていないが、グラフで視覚的に表現されている。
PBF方式、DLP方式(光造形)、SL方式(光造形)、材料を噴射して造形するジェット方式、材料押出方式の棒グラフで表現されている。材料押出方式、PBF方式、DLP方式が大きく伸びる見通しだ。用途としては最終部品、施策、治工具があるが最終部品の伸び代が大きい。
3Dプリンター市場で巻き起こっている企業再編はこうした今後10年で10倍以上に成長する可能性を秘めた市場拡大への期待に即したものだ。登場企業の入れ替わりや興亡も興味深いが、過去10年で10倍に成長し、今後10年でさらに10倍以上の成長が見込めるという感覚値だけでも抑えておくと、取り組み方が変わってくるかもしれない。
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