デスクトップメタルの 金属3Dプリンターでニッケル合金インコネル625が使用可能に
アメリカの金属3Dプリンター業界大手のDesktop Metal社(以下、デスクトップメタル社)は、販売中の金属3Dプリンター Production System用の材料として、ニッケル合金IN625(以下、インコネル625)を認定したと公表した。
インコネル625の認定
インコネル625は、優れた機械特性や、溶接性、耐食性、耐酸化性、さらには高温下や高圧下での高い耐久性を有し、航空宇宙、発電、海洋、化学用途に広く用いられる。金属3Dプリンターのフィラメントとしても使うことが可能だ。 デスクトップメタル社 の金属3Dプリンター Metal X などではすでに工業用部品の製造に使われている。
今回、 デスクトップメタル社の金属3Dプリンター Production System でも IN625が認定され、3Dプリンティングに使用可能となった。
Production System の特徴は高い生産性だ。同社が特許出願中のシングルパス射出技術を用いることで、従来のPBF(power bed fusion/粉末床溶融結合法)と比べ、最大100倍のスピードで3Dプリンティングできる。
同社は、高温や高負荷に耐える強力な部品の大量生産が可能になると述べた。
インコネル625 を用いたさまざまな部品
Desktop Metal社は、IN625を用いたさまざまな製品を紹介している。
石油やガスのバルブ流量を制御するために用いられる油圧スプールはその代表例だ。インコネル625は高温、かつ腐食性の高い環境下で製品の信頼性を高める。
従来は金型で成形した幾つかの機械部品を組み立てて作られるが、3Dプリンティングすることでスプールを1つの部品として製造でき、組み立てにかかる人件費が大幅に削減される。
航空宇宙産業においても、ガスタービンまたは蒸気タービンのブレード用材料としてインコネル625が用いられている。インコネル625は高い耐食性を持ち、破裂、引張、疲労、および熱疲労に強いため、ガスタービンでの使用に最適だ。
Production System によって製造されたブレードは、ビルドボックスという箱のなかに最密充填されて出荷され、輸送効率を高めることができる。
航空機エンジン部品にもインコネル625が用いられる。内燃機関は扱いにくい形状を特徴としており、従来の製造工程では、鋳型で概形を製造した後に機械加工を行う必要があった。しかし、インコネル625は高強度であるため加工も難しい。よって、製造コストが高くなっていた。
Production System は滑らかな曲線や複雑な形状を持つ製品でも再現性が高い。内部寸法を微調整するための必要な工程も少なく済むため、製造コストを抑えることができる。
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