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マサチューセッツ工科大学が液体金属の高速3Dプリント手法を開発

脚部がLMPで造形された椅子

マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)は、2024年1月25日、液体金属を使った高速3Dプリント手法「液体金属印刷(LMP)」を開発したことを発表した。テーブルの脚や椅子のフレームなどの大型部品を数分で製造できる。(上部画像は脚部がLMPで造形された椅子。出典:マサチューセッツ工科大学)

液体金属印刷(LMP)の特徴

MITが開発した液体金属の3Dプリント手法では、高温で溶かしたアルミニウムを造形素材とし、プリンターのノズルの先を小さなガラスビーズの層に挿しこみ、溶けたアルミニウムを押し出しながら所定の経路を通過させて堆積させる。ノズルから押し出されたアルミニウムはすぐに硬化して3D構造となる。造形スピードは、同等の金属3Dプリントの10倍以上で、金属を加熱して溶かす手順においても高効率だという。

細かなガラスビーズにノズルを挿し、溶かしたアルミニウムを注入して造形する
細かなガラスビーズにノズルを挿し、溶かしたアルミニウムを注入して造形する(出典:マサチューセッツ工科大学)

金属3Dプリント手法の1つとして知られる、ワイヤアーク積層造形(WAAM)では、造形プロセスにおいて一部を再溶解する必要があるため、亀裂や反りが発生しやすくなるという課題があるが、LMPはプロセス全体を通じて材料を溶融状態に保つため、再溶融によって引き起こされるリスクが解消できる。

LMPは高速で大型造形が可能な代わりに、解像度が犠牲になる。LMPを用いて作られた椅子の脚部を見ても、その造形の粗さは明らかだ。しかし、精密な造形を必要としない建築、建設、工業デザインなどの大型構造物の部品や、試作品の作製においてLMPは最適な造形手法だと言えるだろう。

MITの研究チームが造形素材にアルミニウムを選択したのは、アルミニウムが建設で一般的に使用されており、安価かつ効率的にリサイクルできることが理由だという。

造形時にはパンの塊ほどの大きさのアルミニウム片が電気炉に入れられ、炉内の金属コイルで、アルミニウムの融点である660度をわずかに上回る700度まで温度を上昇させ、加熱し溶融させる。

アルミニウムはグラファイト製のるつぼ内で高温に保持され、その後、溶融した材料が重力によりセラミックノズルを通る際に、あらかじめ設定された経路に沿って動かすことでアルミニウムを堆積させる。アルミニウムを押し出す際にノズルをガラスビーズに挿しこむのは、ガラスビーズが溶融アルミニウムの極めて高い温度に耐えられ、かつ、中性の懸濁液として機能することで、金属を急速に冷却できるからだ。粉末は非常に小さいので、造形物の表面特性はあまり変化しないという。

現段階では、ノズル径が大きくなると印刷ムラが起こる可能性や、均一に加熱ができずにノズルが詰まる可能性がある。さらには溶融材料の流れを適切に制御する上での技術的な課題などもあるという。研究者たちは、今後も反復作業を続けることで、課題解決を進めていくとしている。

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