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高い透明度を誇る3Dプリンタ用UV硬化樹脂を発売

ミキマエンジニアリングはUV硬化インクジェット式フルカラー3Dプリンター「3DUJ-553」で利用できるピュアクリアインク「MH-110PCL」を2022年5月より販売開始した。MH-110PCLは高い透明度を有し、試作造形、医療模型、建築模型などに幅広く応用が期待される。(写真は新素材を使用した医療模型の造形サンプル例./出典:ミキマエンジニアリング )

紫外線硬化樹脂に対する要求の高さ

3Dプリンターでは、原料となるインク(粒子、繊維状のものなど形状は様々)を硬化させ、立体的な構造物を作り上げる。

流動性の高い材料を硬化させるため、主に用いられるのは、熱、もしくは光だ。樹脂材料研究の分野では、UV(紫外線)で硬化する樹脂について多くの蓄積があり、3DプリンターにもUV硬化樹脂が用いられた。

UV硬化樹脂は紫外線を吸収し、そこで得たエネルギーで化学反応を起こして硬化する、という仕組みだ。しかし、UVだけを選択的に吸収できる材料は稀で、多くの樹脂はUVに近い青や紫の光も同時に吸収してしまう。すると、樹脂は黄色味を帯び、透明性が失われる。

長年の研究により、UVのみを選択的に吸収し、可視光は吸収しない、高透明なUV硬化樹脂を作ることはできた。しかし、3Dプリンター用の樹脂となると話が別だ。

3Dプリンター用インクには、特に粘度に関して厳しい制約がある。粘度が高すぎるとノズルで詰まり、低すぎれば吐出部で広がり、精度を維持できない。3Dプリンター用UV硬化樹脂は、透明度、粘度、硬化後の強度など、様々な要求が課されている。

Pure Clear ink 「MH-110PCL」の特徴

こうした背景のもと、3Dプリンター製造を手掛けるミキマエンジニアリングは、ピュアクリアインク「MH-110PCL」の発売を開始した。

MH-110PCLは、従来問題となっていた黄色味を低減し、透き通ったクリア造形を実現する。高い透明度を持つため、厚みが増しても透明度が失われない。ガラスやアクリル樹脂などと同じように使うことができ、かつ、より自由な立体造形が可能だ。

このインクは、同社が発売しているUV硬化インクジェット方式フルカラー3Dプリンター「3DUJ-553」で利用できる。また、カラーインク(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)と組み合わせて、色付きの透明表現も可能だ。

ミキマエンジニアリングの従来インク、MH-110PCL と最新のインク、MH-110PCLの比較。最新のインクの方が透明度が高い。
従来インクと MH-110PCL の比較(出典:ミキマエンジニアリング)

活用が期待される分野

高い透明度は「中身が見える模型」を作るのに適している。中でも、今後の活用が期待されるのは、「医療模型」の分野だ。

人体の臓器は複雑な形状を有するが、外科手術を行う際には、その形状を熟知している必要がある。教育用だけでなく、術前のシミュレート用にも医療模型が用いられ、手術の成功率を高めるための重要なコンポーネントだ。

MH-110PCLの活用により、より精緻な医療模型の色彩表現が可能となり、分かりやすい模型の製造が可能となった。工業用製品の試作品開発、建築模型などの分野でも同じことが言えるだろう。

もちろん、高透明樹脂の活用範囲は模型だけではない。実際の製品に用いられることで、実用性を高める場面もあるだろう。アートや置物として活用される場面では、デザインの幅を大きく広げる。

医療用模型への応用例(出典:ミキマエンジニアリング)

3Dプリンター用高透明樹脂の広がり

高透明な3Dプリンター用インクに力を入れているのは、ミキマエンジニアリングだけではない。3Dプリンター製造大手のストラタシスも「ガラスのような透明感」を表現できる樹脂材料を販売している。

フォルクスワーゲンはストラタシスの樹脂材料を用いて、ヘッドライトやダッシュボード周りの改装を進める。これら部品を3Dプリンター製に置き換えることで、高級なデザイン性を維持しつつ、リードタイムの短縮が可能だ。

「透明」も再現するフルカラー3Dプリンターで塗装レス―フォルクスワーゲン

関連情報

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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