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世界中の建設業界で進む3Dプリンター活用まとめ

建設業界イメージ

近年、中国をはじめとした世界中で建設業界でスケールの大きい3Dプリンター活用のニュースが流れている。 そこでその辺りの事案に関心のある方にむけて、ここ3~4年の記事をまとめてみた。

3Dプリンター系の記事を見続けた人であるならばすでに見聞きした記事も含まれていると思うが、あらためて建設業界でダイナミックに動き始めている3Dプリンター活用における世界の潮流を感じてみてほしい。

中国発信で話題のニュース記事

【事例1】

中国の歴史ある安済橋(あんさいはし)をオマージュしたものとして全長約26.3メートル、幅約2.6メートルの橋を3Dプリントにより、通常の2/3のコスト、そしてわずか18日で完成したという。

>> 中国で3Dプリンタによる世界最大の橋建設、わずか18日で完了。時短かつコストカットも実現!

出典:清華大学 プレスリリース

【事例2】

昨年、中国建設業の生産高は23兆元(約351兆円)に達しており、3Dプリンターは1兆元級の市場に成長する可能性を秘めているそうだ。中国で建設用3Dプリント技術で注目を集めている企業に太空灰がある。同社では、建設用3Dプリンターでは従来型のFDM(熱溶解積層方式)を採用している。

太空灰では「人と機械の協調作業」を採用しており、3Dプリント技術によりコンクリート壁体を印刷し、壁体間に鉄筋を加える作業は人が行う。この建設用3Dプリント技術では、時間的コストを約50~70%、人的コストを50~80%、材料コストを40~50%削減することができるという。

>> 中国、建設に3Dプリンター 作業時間・費用半減[36Kr]

【事例3】

これを3Dプリンターで作ったということにまず、驚く。1,100平方メートル(1万1,840平方フィート)の広さという 豪邸。
建てたのは  Winsun(盈創)という中国の企業だ。

>> 中国の企業が3Dプリンタで豪邸を建設、これがその全貌だ

出典:@TechinAsia

上記の豪邸を立てる前に同社の家を建てた紹介動画があったので紹介したい。3Dプリンティングによる建築プロセスの一環が垣間見れる。

【事例4】

レゴみたいなノリで、わずか3時間で家が完成するというこの驚愕の事実!
3Dプリンタで作った資材により、リビング、キッチン、トイレ、それぞれの部屋がすでに工場で出来上がっており、現場では、それらの部屋をクレーンでポコポコと組み上げるだけ。地震の多い日本では難しいが、海外での施工も請け負う企業であれば、このようなトピックも情報収集はしておいて損はないだろう。

>> 人類最速! 中国では家が3時間で建つ!! 激しい地震にも耐えられる強度らしい / 最新メイド・イン・チャイナ「3Dプリンタ屋敷」

【事例5】

巨額な資金力を持つ産油国相手の3Dプリンティングビジネスは今後しばらく全部中国に持ってかれそうなニュースである。

>> 中国の3Dプリント建設企業がサウジアラビアに100台の建築3Dプリンターをリース

世界の建設業界における3Dプリンター活用

ラテンアメリカの貧困世帯に提供する世界初の3Dプリント住宅コミュニティ
1棟が60万円で24時間以内に制作できるという。地震の少ない広大な平地を持つアフリカには非常に有効なスキームだと思われる。アフリカのインフラ系ビジネスに参入している企業は、こういった事案は検討内に入れておくべきだろう。

また日本であれば災害対策用の仮設住宅に有効でないだろうか。北海道のプレハブ型応急仮設住宅は、防寒対策のため二重サッシにしているなど手間がかかっているとはいえ二年しか使わないのに、1棟 1200万円もかかっているという情報もあるぐらいだ。

世界中で進行中!「3Dプリンタ建築」の可能性
この記事には日本で実現するためには建築基準法がネックとあるが、小規模な建設や限定的な部分については有効箇所はまだまだ考えられるはずだ。

3Dプリンタを用いた建築技術はここまできている 近未来的なミニマルデザインの建築
こちらの記事にあるドバイの例は以下の記事が詳しい。

>> ドバイ政府はわずか17日間で世界初となる3Dプリントオフィスを建設

日本の現状

日本の建設業界では、 スーパーゼネコン5社の一つ、大林組が頭一つ先行してがんばっているようだ。

金属3Dプリントイメージ

【大林組 】

大林組 セメント系材料を用いた3Dプリンターで国内最大規模となる構造物の製造に着手

こちらは、先日当サイトで紹介したシェル型ベンチを3Dプリンターで造形した記事である。自社開発の3Dプリンターにより 2種類のセメント系材料を一体化して構造物をつくる技術を開発。曲面型枠や鉄筋を使わずに、圧縮強度と引張強度を兼ね備えた自由な形態の構造物を製造できるのが特長だ。

特殊なセメント系材料を用いた3Dプリンターを開発

上記記事の前段として、大林組は2017年に特殊なセメント系材料を吐出する3Dプリンターを開発している。

【竹中工務店 】

意匠性を追求した樹脂型枠を製造、竹中工務店の3Dプリンター活用

竹中工務店が着目したのは型枠だ。 こちらは 2014年に慶応義塾大学の教授と共同で開発した 樹脂(硬質塩化ビニール)を押し出して積層造形する3Dプリンター により、 鉄筋コンクリート用の樹脂型枠を作成している。自由な形状を実現できる3Dプリンターであれば、コストの面から単純化されていた建築物の意匠性を高められるのではないかという考えから開発に着手したという。

【 前田建設工業 】

3Dプリンターで10年後に施工の完全自動化を、前田建設工業

前田建設は、2016年頃から、労働力不足への懸念や生産性向上のニーズが高まるなか、省力化や無人化を実現するキーテクノロジーとして着目し、取り組みを開始している。


十分な資金力を持つスーパーゼネコンが先行しているのは当然と言えば当然だが、その二社とも3Dプリンターから独自開発している点は心強い。
ハイスペックな欧米の3Dプリンターでも作れないなら、自分たちで開発してしまおう。その発想こそグローバルな激しい競争下で他社との明確な差別化を浮き彫りにし、生き残ることができる唯一の道だからだ。

しかし海外に比べるとまだまだ取り組み事例としては少ない。先鋭的な海外メーカーを知りたいかたは、こちらのページを参照していただくと良いだろう。

>> 3Dプリンター海外メーカー一覧

日本は地震が多く、建築物全体そのものから考えると、建築基準法などいくつものクリアしなければならないきびしい壁があると思うが、竹中工務店のような意匠を高めるという市場価値を高めるための視点であったり、前田建設のような省力化や無人化を実現するための技術という視点など、今後の日本の建設業界の発展に欠かせない別の視点から考えると、新しい取り組みに抵抗のある会社でも3Dプリンティング活用の機運を高められる可能性は高い。

保守的になっていても道は開かれない。もう一度高度経済成長期前の日本の技術者のようなまっさらな気持ちに戻ってゼロベースで考えてみてはいかがだろうか。

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