Formlabs社が従来品より造形スピードを最大40%向上した「Form3+」と「Form3B+」の販売を開始
アメリカのマサチューセッツ州に本社を構え、日本にも東京都品川区に拠点を構えるFormlabs株式会社が既存の3Dプリンター「Form3」「Form3B」のアップグレードモデル「Form3+」「Form3B+」の販売を開始した。従来品と比べて最大で40%造形スピードを高速化できるとのこと。アップグレードに伴う価格の変更はない。
Form3+とForm3B+の従来品からの継続点
Form3+とForm3B+はともにSLA方式と呼ばれる、材料の液体状の樹脂(レジン)に点状の紫外線(UV)を当て、土台から少しずつ樹脂を固めて積み重ねることでデータを出力する3Dプリンターだ。
Form3+とForm3B+の違いは、Form3B+が生体適合性のある材料を使用できるバイオ対応3Dプリンターである点。人の肌に触れる製品の試作や、実験用器具の造形に適している。
2機種とも従来品と同様にFormlabsの特許技術であるLow Force Stereotholigraphy(LFS)技術が搭載されている。これはForm2までは必要だった、各層ごとにレジンを満たしたタンクに造形物を押しつけ、毎回引きはがす動作を不要にするものだ。結果として積層の変形が最小限に抑えられ、より滑らかな表面の造形が可能になっている。
また、引き剥がす際の力に耐える必要がなくなったことで、サポート材をより細く取り外しやすい設定が実現された。
さらに、Formlabs社製品の特徴としてスマートフォンのように購入後もソフトウェアアップデートにより機能向上が可能な点も挙げられる。Form3+とForm3B+の販売に伴うソフトウェアのアップデートにより、既存のForm3およびForm3Bユーザーであっても新製品に準じた機能向上が体験できる。
Form3+とForm3B+の改良点
最大の改良点はハードウェアとソフトウェア両面のアップグレードによる造形スピードの向上だ。ハードウェア面では3点の改良があった。
- まず、レーザーを照射するLPU(Laser Processing Unit)の再設計により安定性向上したことで、筐体がよりスムーズに移動し、造形が次の層に移行する際の停止時間の短縮につながった。
- また、加熱システムの再設計によりレジン自体に近いところでより正確に温度を測定し、周囲の機能に左右されずにより早く、より一貫して造形をスタートできるようにもなった。
- さらに、LPU筐体とビルドプラットフォーム間の位置調整によって初期層の造形速度が増した。
ソフトウェア面ではレーザー出力を従来の120mWから180mWに高出力化し、電流を検出し、測定するための機器であるガルバノメーターや、機器の動作を高速化するためのアップグレードがなされた。
これらハードとソフト両面の改良により最大40%の造形スピード向上を実現している。
造形後に必要な後処理も高速化
3Dプリンターで造形したものを取り外すには丁寧な作業が求められる。Form3+とForm3B+では、サポート材と造形物の接点を可能な限り小さくする「ライトタッチサポート」により、手でひねるだけで簡単にサポート材の取り外しが可能になった。
3Dプリンターとしての性能向上や小型化は、どのメーカーも力を入れているところだ。しかし、造形後の後処理についての大幅な改善は「誰もが簡単に、どんなものでも作れる世界を実現すること」を目指すFormlabs社ならではの発想といえるかもしれない。
今回のアップグレードは2019年のForm3およびForm3B発売からわずか2年程のこと。今後もFormlabs社のスピード感のある動向に注目したい。
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