Boeing、3Dプリンターを使って宇宙衛星用部品製造に乗り出す
Boeing社は、米軍の通信衛星用部品製造に3Dプリンターを活用し、工期短縮を目指す計画を発表した。
航空宇宙業界と3Dプリンター
航空宇宙業界と3Dプリンターとの相性の良さは広く知られている。その理由は、航空宇宙業界の製品は、信頼性が求められるうえに、複雑な部品形状・少量多品種生産という特徴があり、個々のパーツ単価が高いことが主な理由だ。
現在、航空宇宙業界は3Dプリンターの導入が最も進んでいる業界のひとつだと言えるだろう。
大手航空宇宙メーカーBoeing社は、3Dプリンター活用においても大きな存在感を発揮してきた。近年では、Titomicと提携することで、チタン合金を用いた部品製造を強化している。
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こうした背景のもと、Boeingが次なる目標に据えるのは、『衛星』だ。
Boeing社の次なる狙いは「衛星」
2022年3月1日のニュースリリースで「Boeing社は、3Dプリントを利用した部品製造により、米軍の Wideband Global Satcom(WGS)通信衛星の製造サイクルを短縮する」と述べた。
宇宙空間をより手軽に活用していくためには、現状の衛星建設にかかるコスト低減、工期短縮が欠かせない。建設にかかる時間を短縮することができれば、これからの宇宙開発は、もっと活発になるだろう。
Boeing社が掲げる計画は、まさにこの課題をクリアすることだ。
Boeing社は、WGS通信ネットワークの11番目の衛星である「WGS-11」の建設を受託している。2019年10月に契約し、2024年に納入が予定されているため工期は5年間だ。軍用宇宙船の一般的な工期が7~10年であることを考えれば、非常に短い工期であることが分かる。
Boeing社は、衛星に必要な数十万の部品のうち、1000個ほどの部品を3Dプリンターで製作することで、工期短縮を目指す。
3Dプリント衛星「WGS-11」の今後
大型の静止衛星には数万から数十万の部品があるため、その中の1000個の部品は全体の1割に満たない。3Dプリンターの寄与は僅かだと考えることもできるだろう。
しかし、同社によればWGS-11以前に設計された最新の宇宙船と比較して、金属3Dプリント部品の量は10倍に増加している。宇宙事業において、3Dプリンターの活用は着実に広がっているのだ。
また、Boeing社以外にも、宇宙事業に3Dプリンターを活用する動きがある。オーストラリアでは、Fleet Space社が、全ての部品が3Dプリントで作成された衛星の建設計画を発表した。
3Dプリンターの活用は、将来的には、通信衛星の標準的な製造方法として確立されていくかもしれない。
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航空宇宙業界における3Dプリンターの活用
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