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3Dプリントによるソフトロボットの新潮流!剛柔一体の革新的設計フレームワークーTufts大学チーム

Nature Communicationsのサイトより。

ソフトロボットは高い柔軟性と安全性を誇るが、従来の課題として構造的な安定性や動作精度の制約があった。これに対し、Tufts大学とWorcester Polytechnic Institute(アメリカ合衆国マサチューセッツ州)の研究者らは、剛性と柔軟性を兼ね備えた新たな設計フレームワークを開発した。本手法では、異なる硬度の熱可塑性樹脂を3Dプリントにより統合し、リンク機構を活用することで、効率的な移動と高い耐衝撃性を実現する。(上部画像はNature Communicationsのサイトより。出典:Aygül et al., Nature Communications, 2025)

ソフトロボットの可能性と課題

ソフトロボットは、従来の剛性ロボットにはない柔軟性と安全性を備え、人間との直接的な接触を要する環境や、不整地での移動が求められる場面での活用が期待されている。特に医療、災害救助、探査分野では、ソフトロボットの適応性が大きな利点となる。例えば、人体に優しい素材を用いた手術支援ロボットや、がれきの隙間を通り抜けて被災者を探索するロボットなどが実用化されつつある。しかし、ソフトロボットは構造の安定性に欠けるため、動作の精度や移動速度の向上が課題となっている。柔軟な素材は衝撃耐性が高い反面、形状の保持が難しく、制御が困難である。また、従来のソフトロボットは空気圧や形状記憶合金を用いたアクチュエーションが主流であり、駆動効率やエネルギー消費に制約があった。これらの課題を解決するためには、新たな設計手法が求められている。

新たな設計フレームワークの概要

この課題を解決するため、Tufts大学とWorcester Polytechnic Instituteの研究チームは、剛性と柔軟性を融合させた新たなソフトロボットの設計フレームワークを提案した。本手法では、異なる硬度の熱可塑性樹脂を用い、3Dプリント技術によって一体成形することで、剛柔一体の構造を実現する。従来のソフトロボットは一様に柔らかい素材で構成されていたが、本フレームワークでは、生物の関節構造を模倣し、特定の部位に剛性を持たせることで、より安定した動作が可能となる。リンク機構を取り入れることで、駆動効率を向上させ、従来の空気圧駆動によるエネルギーロスを低減することができる。さらに、多材料3Dプリント技術を活用することで、部品同士の接着不良や破損リスクを低減し、耐久性を向上させた。これにより、複雑な地形に適応できるソフトロボットの開発が可能となる。

従来のメカニズム設計をソフトロボティクスに拡張するフレームワーク。
従来のメカニズム設計をソフトロボティクスに拡張するフレームワーク。(出典:Aygül et al., Nature Communications, 2025)

研究の成果と実証実験

研究チームは、本フレームワークを活用して四足歩行型のソフトロボットを試作し、その性能を評価した。実験では、異なる材料組成やリンク機構の設計を比較し、それぞれの移動効率や耐久性を分析した。その結果、従来のソフトロボットと比較して、移動速度の向上が確認され、特に不整地での走行安定性が大幅に向上した。さらに、砂地や岩場、土壌といった異なる環境での適応能力を検証し、本ロボットが多様な地形に対応できることを実証した。また、エンコーダーと電子制御システムを組み込むことで、外部からの指示に基づいた精密な動作が可能となり、従来のソフトロボットよりも高度な制御が実現された。これらの結果から、本フレームワークが従来の課題を克服し、実用化に向けた大きな前進となることが示された。

今後の展望と実用化への課題

本研究で提案された設計フレームワークは、ソフトロボットの新たな可能性を切り開くものであり、今後の応用が期待される。特に、災害救助分野では、瓦礫の下を探索するロボットや、狭い空間に入り込む探査機としての活用が考えられる。また、医療分野では、人体に優しい柔軟な外骨格ロボットや、手術支援ロボットとしての展開も視野に入る。しかし、実用化にはいくつかの課題が残されている。まず、3Dプリントによる多材料成形技術のコストが依然として高いため、大規模生産に適した製造プロセスの開発が必要である。また、ロボットの制御アルゴリズムのさらなる進化も求められる。特にAIを活用した自律制御技術を導入することで、環境に適応しながら最適な移動戦略を選択できるようにすることが重要である。これらの課題を克服することで、ソフトロボットの実用化が一層加速されることが期待される。

詳細はこちらのサイト「Nature Communications」からご覧いただきたい。

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