ニコン「Nikon AM Technology Center Japan」開所見学会参加報告

株式会社ニコン(東京都品川区、以下、ニコン)は、最先端の金属AM技術の開発およびソリューション・サービスの提供を目的とした拠点「Nikon AM Technology Center Japan」(NAMTC Japan)を埼玉県行田市に2024年2月28日に開所し、同日メディア向け見学会を開催した。シェアラボから丸岡が参加したので報告する。(上部画像はニコンのプレスリリースより。出典:ニコン)
目次
Nikon AM Technology Center Japan概要
NAMTC Japanは、2023年7月に米国カリフォルニア州ロングビーチに設立されたNAMTCの、アジア太平洋地域拠点として開設された。その概要についてはシェアラボでも以下の記事で報じた。
米国カリフォルニア州に開設された「NAMTC」についても以下の記事を併せてご覧いただきたい。
Nikon AM Technology Center Japan概要
所在地 | 埼玉県行田市富士見町1丁目7-1 |
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設立の目的 | ▶︎ 金属AMの最先端技術の研究開発 ▶︎ アジアのお客様への金属AMサービスの提供(DfAM提案、金属造形課題解決提案、試作など) |
施設稼働開始日 | 2025年2月28日 |
導入設備 | ▶︎ 金属3Dプリンター:NXG XII 600、Lasermeister LM300A ▶︎ X線CT検査装置:X線CT XT H320他 ▶︎ 他各種加工・計測器類 |
総面積 | 922m2 |
NAMTC Japan開設の背景と役割
見学会の冒頭にニコン アドバンストマニュファクチャリング(ADM)事業部長 執行役員 柴崎 祐一氏より事業の歴史と現況、同所開設に至る背景と特徴、今後の役割について説明があった。

2023年4月に発足したADM事業部は、ニコンのデジタルマニュファクチャリング事業セグメントに含まれ、現中期経営計画(FY22-25)において「戦略事業」として、映像事業、精機事業に並ぶ収益の柱とすべく、収益拡大を目指している。金属AMについては2019年に最初の製品を発売後、SLM Solutions社他の企業買収を経て事業を拡大している。売上規模は約300億円以下、ニコン全体売上比率の4%程度となっている。中計終了時にはSLM事業単体営業利益黒字化、金属AM装置マーケットシェア首位を目指す。ターゲット市場は、成長著しい航空宇宙・防衛の分野に注力し、その領域で求められる大型化・高生産化を実現するレーザーPBF(粉末床溶融結合法)とDED(指向性エネルギー堆積法)金属AM装置の技術開発を、アメリカ、日本、ドイツの拠点で行っている。
アメリカの子会社 Nikon AM Synergy社では、アメリカ政府から資金を受ける航空宇宙・防衛プライム企業からの受託加工と協業開発により、アプリケーションや造形プロセスを数年かけて確立することで、量産移行後にプライム企業や受託製造業者に対し、同じ装置とプロセスの装置販売やサポートを長年にわたり提供する「リカーリング装置販売」を目指す。その後事業部内シナジーによる海外、日本国内、アジア太平洋地域での販売活動につなげるべく、アメリカのNAMTCのアジア拠点としてNAMTC Japanを開設した。
質疑応答では、アメリカの航空宇宙・防衛産業は大きいが、日本やアジアの需要環境についてはまだ手探りの状態ではあるからこそ手付かずでもあり、刺激することで拡大する、また防衛は一般の感覚よりいろいろと動いているとの見解を述べた。また日本とアジア太平洋地域で期待する用途として、熱交換器や、宇宙ロケットだけでなく人工衛星などのあらゆる分野を挙げた。またニコン社内他事業部においても、AMに対する理解や需要は徐々に高まっており、それらの用途開発や、日本のAM産業全体の発展にも貢献していくこともNAMTC Japanの役割とのことであった。
NAMTC Japan 施設見学
大型金属レーザーPBF装置で1kWレーザー12本搭載、600×600×600mmの造形室を持つ「 NXG XII 600 」がアジアで初めて設置され、稼働できる状態になっていた。その他造形後のチャンバーを取り出し、未硬化粉末を自動で回収再利用するための装置や、これまで人が行っていた粉末クリーニングを自動で行う装置も設備されていた。


ドイツには 600×600×1,500mmに拡張されたNXG XII 600Eがあるとのことであった。造形サンプルとして、アルミ合金製熱交換器とニッケル合金製ロケットスラストチャンバーのサンプルが展示されていた。


別の部屋には2024年に発売した金属DED装置 Lasermeister LM300Aと3Dスキャナー SB100が設置されていた。

その他、個別の部屋に造形後の二次加工機、検査装置としてNIKON X線CT XT H320他、形状や物性、原料粉末を計測する装置が多数置かれ、造形から評価まで一貫して行うことが出来る施設であることが分かった。
ニコンの企業ビジョンとAM事業展開
ニコンは、2030年に向けた企業ビジョンとして「人と機械が共創する社会の中心企業」を掲げている。AM技術を含むデジタルマニュファクチャリングは、同社の戦略事業の一つであり、長年にわたって培われた光学技術を活用し、ものづくりの分野に革新をもたらすことで、持続可能で豊かな社会の実現に貢献していく方針としている。今回のNAMTC Japan開設もその方針に沿ったものであり、同社のADM事業部だけでなく、ニコン自体、または日本のAM産業や航空宇宙・防衛産業の発展につながっていく大きな1ステップであると感じた。同時に日本のユーザーも積極的に活用し、アジア太平洋地域のより多くの協働のハブとなることを期待したい。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。