宇宙で現地生産!3Dプリンター活用の最前線
地球を遠く離れ、長期に及ぶ宇宙空間でのミッションでは多くの物資が必要だ。近年では、これら物資を地球で製造して逐一運搬するのではなく、宇宙空間で製造することが計画されている。そこで活躍するのが3Dプリンターだ。
既に一部の製造設備は宇宙空間へ移された。宇宙空間で物資を製造することは、物資の打ち上げコストを下げ、より効率的な宇宙開発に繋がることが期待される。3Dプリンター活用の最前線は宇宙に飛び立つためのロケットや人工衛星の部品以外にも、地球外での活動で必要な物資の現地生産にも及んでいる。ここでは、宇宙で使用される物資を3Dプリンターを活用し現地生産する取り組みについてまとめた。
目次
宇宙ステーション部品を3Dプリンターで現地生産
国際宇宙ステーション(ISS)では、常時宇宙飛行士が滞在し、様々な実験を行っている。実験には様々な物資が必要であり、加えて施設自体も故障などで部品交換が必要だ。
現在、こうした部品の一部はISS内の3Dプリンターで生産されている。
宇宙空間で活躍する3Dプリンターが登場、ESAの 3Dプリンター戦略とは
月面レゴリスを利用した住居を3Dプリンターで現地生産
NASAが進める月面着陸計画(アルテミス計画)では、月面で長期滞在できる居住施設の建設も構想されている。
大型の施設を建設するための材料をロケットで打ち上げるには大変なコストが掛かることもあり、建設用材料としては月面の砂礫(レゴリス)が利用される予定だ。
月面で3Dプリンターを使用するための実証実験が国際宇宙ステーションで始動
皮膚包帯を3Dプリンターで現地生産
ISSや月面などでの長期滞在ミッションにおいては、クルーが怪我をすることも想定される。十分な医療設備のない宇宙空間では、少しの怪我でも命の危険に直結するため、迅速な応急措置が必要だ。
BioPrint FirstAidと呼ばれる創傷治療用小型3Dバイオプリンターは、地上で採取された宇宙飛行士自身の細胞を利用して包帯を作り、傷の治療を早めることができる。
10分でつくれる「皮膚包帯」、宇宙空間で3Dバイオプリンターが活躍
人工骨を3Dプリンターで現地生産
低重力下において、宇宙飛行士は骨密度の低下が起こることが明らかになっている。結果として、軌道上のミッション中や火星に着陸する際に、骨折が起こることは有り得る事態だ。こうした事態に対応すべく、人工骨の3Dプリント技術導入が検討されている。上述の皮膚包帯と同様、宇宙飛行士自身から採取したヒト血漿を利用して、バイオインクを調整し、人工骨を印刷する。
3D-printed bone for emergency medicine in space | Phys.org
宇宙食を3Dプリンターで現地生産
未だ宇宙空間に進出した人類は小数だが、今後宇宙開発が加熱していけば、宇宙食に関しても現地で生産していく必要が生じるだろう。
現在のところ、宇宙食の生産・供給に関するマーケットは存在しない。JAXAなどが進める「Space Food X」は、宇宙食に関するマーケットの創出を目指すプログラムだ。
宇宙飛行士のための食料を現地で効率的に生産する仕組みの研究・開発を進めていくとともに、地球の食糧問題を解決も視野に、多くの研究機関や企業が参加している。
世界初の宇宙食料マーケット創出を目指す「Space Food X」プログラムを始動~多種多様な30以上のパートナー企業等が共創~ | JAXA
これまでも宇宙空間に3Dプリンターを持ち込んで利用する計画は多々あった。今後の活動からも目が離せない。
また、これまでの宇宙関連の記事は以下のURLから見ていただける。ぜひともご覧いただきたい。
https://news.sharelab.jp/?s=%E5%AE%87%E5%AE%99
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。