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レンズを3Dプリンティング!スマートグラスも実現―蘭Luxexcel

luxexcelの動画一部

眼鏡やサングラスといったアイウェア業界は、デザイン性を求められるため、多品種少量生産の取り組みが進んでおり、製品の体積が少なく3Dプリンターで取り組みやすい業界だといえる。その証拠に全世界でアイウェアを3Dプリントして製造するアプローチは取り組まれており、国内でもJINS社などが取り組んでいる。しかしそれはあくまで眼鏡やサングラスのフレームの話で、レンズを3Dプリンターで製造する企業はほとんどいなかった。

今回ご紹介するLuxexcel社は、度付きレンズをISOやFDAで規定された規格に準拠しながら、3Dプリントできる独自装置を開発し、その度付きレンズを既に5万セット製造している。さらにスマートグラス(眼鏡のレンズに映像を投影する眼鏡型の装置)に利用できるレンズもAM技術で実現したという。まずは以下の動画を見ていただきたい。(冒頭画像はLuxexcel社のYouTube動画より引用)

プログラム可能な映像素子が3Dプリント製のレンズに埋め込まれているフィルムを操作し、レンズの色が透明、黒、グレーと変わっている。原理はともかく、色を変えることができている事は一目でわかる。このような高機能なレンズを3Dプリンターで製造できるのがLuxexcelだ。

Luxexcelはオランダのレンズ専門3Dプリンティング企業

2009年にオランダで設立されたLuxexcelは、独自のハードウェア、ソフトウェア、および材料を使用した3Dプリントレンズの専門企業だ。UV光で光硬化するレンズ専用の液体樹脂をマテリアルジェット方式で積層し、研磨を必要としない。この方式で3Dプリンターで度付きレンズを自由な形状で造形でき、従来のレンズに行っていた加工を同じように実施できる互換性をもつ。すでにISOやFDAの認証を得ているという事で実際に5万セットの製造実績があるという。

さらにLuxexcelの技術は、度付きレンズを製造できるだけではなく、眼鏡レンズ造形中にレイヤーの間にフィルムやLCDスクリーンを追加して、AR機能を提供できる。先ほどご覧いただいた色が変わる仕組みや、スマートグラスで必要な画像の投影を可能にできるスマートレンズを製造できる技術を持つ。

Luxexcelは「世界の人口が増えるにつれ、スマートフォンのようにスマートレンズを持つ人の人口も増える。その多くは視力矯正を必要としており、度付きレンズとスマートレンズは統合されることが必要になる。度付きレンズには医学的な処方箋が必要になるので、ARに対応した度付きレンズの市場は大きい」とウェビナーの中で説明している。

3Dプリンターで製造するスマートグラスのアプリケーション

映画やゲームの世界で登場するAR(Augmented Reality:拡張現実)機能を搭載したスマートグラスは、アクションシーンで戦闘を補助するさまざまな情報を表示しているが、もちろん活用用途は戦争などの非日常だけにとどまらない。

たとえば眼鏡店で「2次元バーコードを一定時間見つめると、バーコードを読み取り、型番を検索し製品の型式を特定し、価格や在庫数を表示する」など簡易なAR機能は開発がすぐにできそうだし、製造現場内でも「作業初心者向けに、次の作業手順を案内する、目標作業数や作業時間を表示する」などはその実現に充分期待できる活用用途だ。製造現場や物流現場でハンディスキャナーが担っていた役割はスマートレンズとスマートフォンの組み合わせに代替される可能性は充分あるし、作業者個人個人の作業風景を動画で撮影し最適化を図る観察を起点にしたコンサルティングを行う際に、達人の視覚を共有し、目線と共に行動を最適化していくアプローチとして作業者が直観的に理解できる指導法になるかもしれない。

こうした「レンズに映ったものを認識しある特定の処理を行う」処理自体はソフトウェア側の開発が必要になることは言うまでもないが、ハードウェアとしてのスマートレンズをLuxexcelが製造できることで、OculusやGoogle glassのようなデバイスをさまざまな企業がハードの投資を大幅に減らして実装できる可能性が広がる。Luxexcelは「レンズとレンズに挟み込むデバイスはあなたの技術を利用できる」としている。

こうしたハードウェア側の調達をLuxexcelが多くの企業とのアライアンスの中で実現していく事がビジネスモデルの中核であるということだ。レンズの材料、映像を表示するための導波管ホログラフィックフィルムLCDスクリーンなど、実際にレンズに埋め込み映像を投影するためのデバイスなどはパートナー企業との協業で調達するということで、ユーザー企業による指定も可能である。

AM技術の広がりを感じさせる事例

樹脂や金属を使って造形できるものであれば、AM技術による製造が可能かもしれない。そういう観点で広く自社が製造している製品や提供しているサービスを見渡すと、新しい事業のヒントが見つかるかもしれない。Luxexcelのレンズ製造技術はそんな可能性を2009年から着実に研鑽を積み重ねた結果、5万セットのレンズを世に送り出し、今後80億人が近い将来使うかもしれないスマートグラス市場を生み出そうとしているベストプラクティスの一つといえるだろう。

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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