1. HOME
  2. 業界ニュースTOP
  3. 国内3Dプリンター住宅の開発に向けてLibWorkとArupが提携。設計は家所亮二建築事務所が担当

国内3Dプリンター住宅の開発に向けてLibWorkとArupが提携。設計は家所亮二建築事務所が担当

「Deep α」ファーストデザイン 出典:LibWork

3Dプリンター住宅「Deep α」の建設に向け、LibWorkとArupがコンサルティング業務委託契約を結んだ。また数々の国際的賞を受賞した経験を持つ家所亮二建築事務所が設計を担当している。(写真は 「Deep α」ファーストデザイン 出典:LibWork)

LibWorkとArupが提携

Libworkのサイト

LibWorkは熊本に本社を置く不動産販売業者だ。インターネット集客に特化して、革新的な住宅販売を進めてきた。そんなLibWorkは世界的に展開する建設コンサルティング会社オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド一級建築士事務所(Arup)とコンサルティング業務委託契約を結んだ。

3Dプリンター住宅「Deep α」とは?

Deep αは、LibWorkが進める3Dプリンター住宅建設構想だ。デザイン設計は家所亮二建築事務所が行った。

家所氏の過去の建築では奇抜なデザインが目を引くが、意匠性だけを重視する建築デザイナーではない。家が本来持つ機能や暮らしへの影響にフォーカスし、それらを可能とするためにデザインを活用しているようだ。必ずしも新しい方法に拘ることなく、『ありそうでなかった』をキーワードに、住宅本来が持つ力を引き出すことに注力している家所氏は国際的な評価を受けている。2018年には、世界三大デザイン賞『reddot award2018』『iF DESIGN AWARD 2018』を受賞。また、『FRAME Awards 2018』では建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を取ったRCRアーキテクツをはじめ、世界最高峰の建築家やデザイナーが集まる中で唯一、三部門でノミネートされ、二部門で受賞している。

家所亮二建築事務所 の受賞歴を紹介したページ

そんな気鋭の建築家である家所氏がデザインした3Dプリンター住宅「Deep α」は、自然と住宅、壁と天井、内部と外部が『ひと続き』となることをコンセプトとしている。初期デザインとして、壁と天井が継ぎ目なく接続された住宅デザインが発表された。

『ひと続き』は、同事務所がこれまでにも扱ってきたテーマの1つで過去には、1枚の巨大な木板が縦横にオフィスを巡るような設計を行った。木板がワークデスクとなり、棚となり、間仕切りとなるこちらの設計は、社員同士の繋がりを促し、社の一体感をアピールする狙いだ。

家全体を階段とする試みでは、「上下」をひと続きにした。階段の踊り場全てがそれぞれの部屋となるようなこちらの設計では、上階と下階が明確に区別されず、開放的な楽しさを提供する。

『ひと続き』であることは、自由と共生、開放と楽しさのシンボルだ。

階段の再解釈「ソトコロ」(出典:家所亮二建築事務所)
階段の再解釈「ソトコロ」(出典:家所亮二建築事務所)
ひと筆書きデスク(出典: 家所亮二建築事務所 )
ひと筆書きデスク(出典: 家所亮二建築事務所 )

各社コンセプトと提携の狙い

発表されたDeep αのファーストデザインには、従来の建築技術では困難な曲線的デザインが取り込まれ、3Dプリンターの真価が発揮される場面のように思える。

しかし、これまで当サイトでも取り扱ってきたように、国内での3Dプリント住宅建築には大きな障壁がある。それは、地震大国日本だからこそ存在する厳しい建築基準法の壁だ。鉄筋や木柱を用いない3Dプリント住宅では、従来的な基準とは異なる特殊な認可が必要となる。

3Dプリンターを用いた建築で国内初となる国土交通大臣認定を取得-大林組

これら3Dプリンター活用上の困難に関して、LibWorkと家所建築事務所双方は、技術的積み上げを持たない。そこで協力を仰いだのが、オランダのArup社だ。Arup社は以前シェアラボ編集部でも取り上げた橋を3Dプリントする事例にもかかわっており、オランダ、アムステルダムに架けられたステンレス製橋脚は、Arupとロボット企業MX3Dが、3Dプリンターを活用して製作したものだ。

3Dプリンターでつくられたステンレス製の橋が6年がかりで完成

3Dプリンター住宅に関連するArupの知見は、Deep αの建築にも大きく関わってくることだろう。しかし建築を規制する法規は国ごとにバラバラ。日本でも建築基準法などの法律が存在するが、3Dプリンターによる構造物の建築は明確には規定されていない。2022年に入ってからは、住宅や宿泊施設に関して、法的規制にのっとった建築物の事例が発表され始めているがまだ少数だ。法の分厚い壁は、Arupも初めての経験となる。

国ごとの個別事情を越えて、今後3Dプリンターによる建築がさまざまな分野に広がっていくことは、労働力不足や老朽化した建物の再建築といった課題を抱える日本にとっては大きな市場機会になるかもしれない。その際に国を超えた連携は大きな飛躍のための方法として有効な一打となる。

大手住宅メーカーではないネット主体の住宅販売を行うLibWorkがこうしたチャレンジを行う姿は、新しい技術を活かしビジネスチャンスを果敢に求める多くの企業にとって参考になることだろう。

シェアラボ編集部では今後も住宅、建築分野での3Dプリンター活用を取り上げていく予定だ。

関連情報

スイスの私立学校がSAGA Space Architects社と協力し、宇宙船にフィットする3Dプリンター製住居を開発 – ShareLab NEWS

3Dプリンターを用いた建築で国内初となる国土交通大臣認定を取得-大林組 – ShareLab NEWS

30坪300万円の3Dプリント住宅建設に向け、セレンディクスとサンワカンパニーが提携 – ShareLab NEWS

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

資料ダウンロード 3Dプリンティング国内最新動向レポート

サイト内検索

関連記事

メルマガ

最新記事

おすすめ記事