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見た目だけじゃない、機能性もかねそなえスチール製3Dプリントモジュラーハウスがイタリアで設計

建築設計事務所 MASK Architects は、地中海に浮かぶイタリア・サルデーニャ島の町オラーニに建設を予定している世界初のスチール製3Dプリント外骨格モジュラーハウスを設計した。

同市内にあるニヴォラ美術館近くの山の斜面に建設される予定で、MASK ArchitectsとMX3Dの両社は現在、このプロジェクトを次の段階へと進めるため、投資家を募っている。

開発背景「象徴的なランドマークにしたい」

「Madre Natura(母なる自然)」と名付けられたこのプロジェクトは、観光客、アーティストのために、象徴的なランドマークとして世界初のスチール製3Dプリント構造のモジュラーハウスを設計した。

この独創的なデザインは、主任建築家のÖznur Par ÇerCostantino Nivola(コスタンティーノ・ニヴォラ)氏の彫刻作品である「La Madre」からインスピレーションを得て「Exosteel Mother Nature」というモジュラーハウスをデザインした。

二ヴォラス氏は、今回のプロジェクト”Madre Natura “の目的 ならびに 誕生した「Exosteel Mother Nature」というモジュラーハウスが果たす役割について以下のようにコメントしている。

私たちのプロジェクト”Madre Natura “では、母なる自然に似せたものを見たいと思っています。私たちは、人間社会の重要な要である母親の姿と、母親が子供を世話する様子と、世界が私たちを世話する様子の融合を目指しています。今日の技術と機能性を用いて、私たちは自然を母の姿として受け入れ、母が子を守るように自然を守ることを目指し、建築、アート、テクノロジーを統合することを目指しています。

私たちの目的は、オラーニの遺産を保護し、コンスタンティーノ・ニヴォラと彼の作品に敬意を表し、現代の技術と私たちのスタイルをデザインに統合して彼の遺産を継承することです。また、このプロジェクトは「女性」にも捧げられています。オラーニの歴史において、女性たちが街のなかで、街のために努力してきたことを見てきました。私たちはこのモジュールを、主人公である母親の「母なる自然」に捧げました。

私たちのモジュールは、開放的でコミュニティをまとめることができるだけでなく、デザイン全体に何らかの芸術的な影響を与えることができるようにしたいと考えています。Orani Cityは、遠くからだけでなく、街のなかでもアートやランドマークを眺められるような、象徴的なランドマークにしたいと考えています。

コスタンティーノ・ニヴォラ氏

建物詳細

1階は宿泊施設として設計されており、地上から1.5メートルの高さの床には、ワーキングエリア、プライベートシャワーエリア、そして収納がある。天井高は3.5メートルで 開放感があり、インテリアはサルデーニャ島の建築様式を取り入れた有機的で自然なデザインになっている。

今回はこの独創的なモジュラーハウスの特徴を3つのポイントに絞ってを紹介する。

1, 「EXOSTEEL」と呼ばれる新しい建設技術のソリューションを用いて建設 

ロボットアーム(出典:MX3D)

オランダの3Dプリント技術プロバイダー MX3D が独自に開発したWAAM(Wire Arc Additive Manufacturing/ワイヤーアーク・アディティブ・マニュファクチャリング)技術と、ドイツに本社を置く産業ロボット機器メーカー KUKA のロボットアームを活用した「EXOSTEEL」と呼ばれる新しい建設技術のソリューションが用いられた。

3Dプリントされたスチール製の「外骨格」構造システムを採用した世界初の建築・デザインスタジオであり、彼らが「EXOSTEEL(エクソスティール)」と呼ぶ新しい建築技術のソリューションを用いて、建物のすべての機能要素を支え、配置している。

MX3D独自のWAAMテクノロジーは、産業用ロボットと電源と統合し、指向性エネルギー堆積(DED)方式を利用して3Dプリンターに変換するように設計されている。

同社は以前、アムステルダムの中心部にあるステンレス鋼の橋を3Dプリンターで建設した実績を通じて、WAAMテクノロジーの機能を実証してきた。

Madre Naturaプロジェクトでは、MASK Architectsは、MX3DのWAAMテクノロジーを活用して、住宅の「すべての構造部品、柱、耐力梁、および支持要素」を3Dプリントすることを計画している。計画では、レーザーツールを備えたKUKAロボットアームと統合されたWAAMを使用して鋼粉を3Dプリントし、建物のさまざまな側面を構築予定だ。

なお、WAAM方式については以下の記事で、ほかの方式と比較解説しているのでご興味ある方はのぞいてみてほしい。

2, 自然と調和する設置場所

モジュールハウス設置イメージ。
自然と調和するをテーマに、坂道に建設できるようにアレンジされ、建物が風を受けにくい様、穴の開いた構造となっている。
モジュールハウス設置イメージ(出典:MASK Architects )

今後、開発場所は傾斜のある山の斜面を検討している。モジュールが配置される場所に応じて千鳥足のように変形・変動できるよう設計している。このような斜面に設置する理由は、360度自然に囲まれたこの場所だからこそ、今回のプロジェクトの目的に沿った自然と調和した開発ができるとのことだ。

ただ、自然に囲まれているからこその困難はある。設置されるサルデーニャ島は風が強く、山の斜面に建てられた建物への影響は大きい。そこで、風が通り抜けできるようにモジュールの両側に空洞を作り風の通り道を設計。また、モジュール全体に解放感を持たせることで自然との一体感を感じられるようなデザインにした。

3, 太陽光・風力発電などのエネルギータワーを設置

この住宅は、まず長さの3分の1を地面に埋め込んだ中空のセンターポールと、3つのフロアを支えるさまざまな有機的な枝によって構成されている。各階には外周フレームがあり、家の有機的な形状に沿ってモデル化されたパネルで構成されたファサードを分割して支えている。

モジュール断面図。1/3が地面に埋め込まれていることを図示している。
モジュール断面図(出典:MASK Architects)

「EXOSTEEL」の3Dプリント外骨格構造システムを用いて建設される構造物は、複数のハート型の白い家で構成され、中央にはNivolaの彫刻作品「La Madre」の頭部を模したシステム集約用「エネルギータワー」を設置。このエネルギータワーは、建物内部に設けられた空洞がサルデーニャの強風を取り込み、風力発電から各住宅へ電力を供給。また各住宅はサルデーニャ島の自然な気候と気象条件に耐えられるよう完全に自立した設計になっており、太陽電池パネルで覆われた個別のエネルギー導管により電力を得ることもできる。

また、タワーの最上部には、スマートカメラや火災探知機などの技術的な機器を設置。これは社会的なセキュリティと、自然災害に対するセキュリティを目的としている。さらにタワーの下部には、水やエネルギーの貯蔵に必要なモジュールや、周辺への配電所など、すべての技術的な機器が収められている。

コンパクトで独創的なデザインのなかには、生活するうえで必要な技術がつまっているのだ。

中央に位置するエネルギータワー(出典:MASK Architects)

このプロジェクトが実際の建設に移行した後は、建物の高さの3分の1を占める中空の柱を設置し、それを木製の梁で補強して住宅の3階部分を支える構造を用いて、有機的な形状を模した分割されたパネルから構成されたファサード(建築物の正面デザイン)で支えられる。

また、このモジュールはコミュニティ促進のための活用方法として、大型なイベント時には3つのモジュールをB1フロアで連結することで、より大きなソーシャルエリアを作ることが可能。また、緊急時のソーシャルエリアにも対応しており、コロナ禍の今、このようなモジュールを “自己隔離” のために使用することが可能で、ソーシャルスペースを異なる限定された用途に分割することもできる。

活用の柔軟性が高いモジュールを利用し、地域や人々にできるだけ貢献できることを目指しており、そのために、拡張性、柔軟性、適応性を考慮して設計されている。見た目のインパクトだけではなく、実用性も兼ねそろえたデザイン性、最新エネルギー技術のテクノロジーが融合した画期的なモジュールの完成が楽しみだ。

3つのモジュールをB1フロアで連結(出典:MASK Architects)

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シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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