自動車メーカーのFord社、100年以上の歴史ある駅を3Dプリンターで復元
世界的な自動車メーカーのFord社が、アメリカのミシガン・セントラル駅の復元作業を3Dプリンターを用いて行っている。ミシガン・セントラル駅は1988年に駅としての営業は終了しており、保存のための作業が続けられていたが市の破産により計画が中断。その後2018年にFord社が、歴史ある建造物を残し、成長著しいモビリティ産業の拠点とするため、駅舎を買収した。
3Dプリンターが駅復元に採用された背景
FORD社は2018年6月11日に駅舎を買収したと発表し、自動運転車や電気自動車の開発拠点として使用することが目的とのこと。Ford社はこれまでも蒸気噴射装置や過去の製品を修復するための部品製造に3Dプリンターを用いてきており、その技術を活かして、駅復元に3Dプリンターが採用された。
大々的に脚光を浴びることは少ないが、建築の世界では3Dプリンターを使って、建物や細部、窓枠などを修復するプロジェクトが多く存在している。
例えば、以前ShhareLabNEWSでもご紹介したが、日本でも秩父神社の文化財を3Dスキャン・3Dプリンターで出力し展示するなど、職人技を再現高く表現できるとのことで3Dプリンターが採用されている。
今回の事例でも、ミシガン・セントラル駅において非常に細かい窓やタイルを復元する必要があり、修復作業に入る前に必要部分の3Dスキャンがされている。
場合によっては、同じタイルの異なるパターンの部分のスキャンデータを使用して、全体のピースを再構築することもあったという。スキャンされたデータはミシガン州にあるFord社のAdvanced Manufacturing Centerで3Dプリントされた。これまで合計数百個のパーツが3Dプリントされている。3Dスキャンには数か月、3Dプリントには3週間を要した。
3Dプリンターならオリジナルの建築的ディテールを残せる
文化財となるような古い建築物の多くは、熱した鋼材を手作業でハンマーで叩いて作る鍛鉄で作られていたり、手作業で漆喰(しっくい)が塗られていたりする。また、再現するのが困難なほど精巧に作られたものもある。当時の技術で手間と時間をかけて作られているため、その通り再現するのにはコストがかかることが多いだけでなく、当時の職人の技が受け継がれていなければ複製そのものが不可能な場合すらある。
しかし、3Dスキャンや3Dプリントを用いれば、効率よく複製可能だ。3Dスキャンしたものを3Dプリンターで作成し塗装を行う方法ならパーツあたりのコストを非常に低く抑えることもできる。パーツは塗装するため表面の仕上げにある程度の粗さがあっても問題はない。
3Dスキャンと3Dプリントは、建物の修復において、低コストで費用対効果が高く、非常に速い解決策と言えるだろう。
3Dプリントによる建築物の復元は、まだまだ世界中で限定的に行われているに過ぎない。しかし、コストを抑えて効率よく複製・復元が可能な3Dスキャンと3Dプリントには、市場のニーズとして大きなものであるのは間違いないはずだ。
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