2017年の国内3Dプリンター市場規模(IDC Japanのレポートより)
調査会社 IDC Japan 株式会社は、国内3Dプリンティング市場の2017年実績と2018年~2022年の市場規模を予測している。それについて当サイトで改めて内容を紹介したい。
2017年の国内3Dプリンティング市場の総売上額は308億円(前年比8.9%増)
2017年の国内3Dプリンティングの市場規模は総売上額308億円(前年比8.9%増)としている。IDCでは国内3Dプリンティングの市場規模は2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)9.1%、2022年の市場規模を476億円と予測しており、ガートナーの需要曲線的な意味での幻滅期の谷(過度な期待の収束)を超え今後3Dプリンター市場が成長に向かうと予測している。すでに300億円超の市場がそこにあるという点、そして5年後に1.5倍から2倍に成長するという点は覚えておいてもよいだろう。
国内3Dプリンティング市場の構成
国内3Dプリンティングの市場は、3Dプリンター本体市場、3Dプリンティング関連サービス市場(保守・修理など)、および造形材料市場で構成しているとしてそれぞれの市場規模を算出している。
項目 | 2017年推計売上実績 | 前年比 |
3Dプリンタ本体市場 | 121億円 | +3.9% |
3Dプリンティング関連サービス | 107億円 | +8.2% |
造形材料市場 | 79億円 | +19% |
3Dプリンター本体の売上は2016年はマイナス成長だったが、2017年はプロフェッショナル3Dプリンターの出荷台数が堅調に伸びたことから、プラス成長に転じているとのこと。ここで注目したいのは、3Dプリンターの本体売上よりも3Dプリンター関連サービスと造形材料市場の合算の方が金額ベースで上回る点だ。まさしく印刷機市場とおなじビジネスモデルで3Dプリンター市場が形成されていることを意味する。
3Dプリンター本体市場(セグメント別)
IDCのレポートでは3Dプリンターをデスクトップ3Dプリンターとプロフェッショナル3Dプリンタの2つのセグメントにわけて集計している。
2017年3Dプリンタ本体市場 | 出荷台数 | 前年比 | 売上金額 | 前年費 |
デスクトップ3Dプリンタ | 4700台 | -22.5% | 6.7億円 | -22.2% |
プロフェッショナル3Dプリンタ | 1900台 | -27.1% | 114.3億円 | +5.9% |
「なんでも簡単に作れる」事を期待した個人需要が減り、3Dデータの作成プロセスや後工程による仕上げなど必要なプロセスを理解したうえで、導入を進めるプロユースが増加した結果、とIDCは分析しこの傾向は今後も継続すると見ている。その結果2022年の国内3Dプリンター本体市場の市場規模を、出荷台数5,700台(CAGRマイナス2.8%)、売上額189.8億円(同プラス9.4%)と予測している。
3Dプリンティング関連サービス市場 /造形材料市場
プロフェッショナル3Dプリンターの出荷増加は、3Dプリンター修理/保守サービス市場も拡大させ、造形材料の消費量も増加する。
2017年推計売上実績 | 前年比 | |
3Dプリンティング関連サービス | 107億円 | +8.2% |
造形材料市場 | 79億円 | +19% |
IDCは、3Dプリンティング関連サービス市場の2017年~2022年のCAGRを6.1%、造形材料市場のCAGRを12.3%、2022年の売上額はそれぞれ144.5億円、141.7億円と予測しており、市場規模の堅調な成長を見込んでいる。
関連サービスに関して言えば、機材のレンタルやデータ作成・改修、出力代行、コンサルティングと今後も範囲を広げていくだろう。また造形材料市場に関しては、造形対象のサイズ拡大による量的拡大、造形材料の多種展開(金属、食材、建材など)を見込むと今後の成長幅は予測値を上回る可能性もある。
今後の展望と課題
IDCのレポートでは「現在の3Dプリンターの主な用途は試作品製造」と語る一方で、今後は最終製品製造用途への拡大を見込んでいる。
3Dプリンターという言葉は登場当初の「なんでも簡単に造形できる驚異の工作機械」という高すぎる期待値とのギャップから「使いにくく低精度」という辛辣な評価を得てきた。しかし今日、「アディティブ・マニュファクチャリング(AM)」というキーワードの下に難作材を複雑に造形でき製造上のブレイクスルーを実現する高付加価値への取り組みへの具体的な手段として堅実に定着をはじめている印象がある。
今後は 造形物の大型化、積層造形機能として 複合工作機への組み込み、造形材料の多品種化(希少金属・難加工材料・食材・建築用資材)などの進展で広く進展していくだろう。
その応用範囲の広さゆえに、導入時には製造現場で多くの課題が業種・業態、製造プロセスごとに発生していくことが予想される。この「のりこなすプロセス」で発生する労力を超える付加価値創造を製造現場を預かるトップが描いていけるか。柔軟な発想と成長への意思が問われている。
関連情報
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。