3Dプリンター製綿棒メーカーが1,500万ドルの資金調達し新施設開設へ
アメリカのマサチューセッツ州に拠点を置く製造業のスタートアップ企業、OPT Industries社は同社の主力製品である3Dプリント関連の市場規模を拡大するため、同州内のボストンの北西約6.5マイルに新たに施設を開設すると発表した。ここでは消費者や医療業界向けの製品が作られる。
コロナ禍で不足する綿棒を3Dプリンターで作り話題に
OPT Industries社は7年にわたる研究により、ミクロン単位の精度で材料や製品を連続的に印刷可能な3Dプリンターを開発した企業。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大においては、その技術の規模を拡大し、新型コロナウイルス検査用の綿棒不足問題の対策として、優れた溶出性と吸収性をもつ高性能な綿棒「InstaSwab」を3Dプリンターで製造した。
この新たな綿棒は新型コロナウイルス検査における細菌サンプルの溶出とウイルスサンプルの溶出において、より効果的であると言われている。
「InstaSwab」の開発背景や特徴については以前ShareLabNEWSも詳しく取り上げているので参照してほしい。
OPT Industries社の大規模資金調達について
OPT Industries社はその斬新な材料設計と生産に対する需要が評価され、スタートアップの成長フェーズを示す指標の1つ「シリーズA」の段階で、1,500万ドルの資金を獲得した。
主な出資者には世界的な科学技術系ベンチャーキャピタルであるNorthpond Ventures社がある。
Northpond Ventures社のディレクターであるAndrea Jackson氏はOPT Industries社について「材料科学の分野では、自然界にない人口的な物質開発(メタマテリアル)は急速に発展している分野であり、未開発の大きな可能性を持っています。OPT Industries社の3Dプリンターは、吸収、クッション、断熱など、さまざまな用途で高度な特性と優れた性能を持つ材料を設計できるユニークなものです。InstaSwabは、人間の髪の毛よりも細い繊維状の構造を精密に設計して作られており、新しいメタマテリアルの傑出した革新の1つを例示しています。OPT Industries社の技術によって、より感度の高い医療診断テストの設計が可能になり、その結果、患者ケアに現実的な影響を与えることになりました」と述べた。
同じく出資者の1つCrosslink Capital社のパートナーであるPhil Boyer氏は「OPT Industries社は、次世代の製造業とサプライチェーンの構築に重大な影響を与えることを示す代表的な例です。幅広い用途に対応した迅速な反復設計、エンドツーエンドの自動製造、現地での連続生産を可能にする技術により、急速にサプライチェーンの回復に不可欠な要素になりつつあります」と評価した。
新施設建設へ
OPT Industries社は、自動化技術、計算デザイン、材料科学を組み合わせて、カスタマイズ可能な機能性材料の設計と印刷を行っている。InstaSwabの開発を発表した後、医療機関や家庭用検査機関向けに、これまで80万個以上の有効性の高いInstaSwabを全国に供給した。
この成果が、自社の3Dプリンターそのものの販売ではなく、最終用途の製品製造に注力する決断につながり、14,000平方メートルの新施設建設につながった。
イギリスに本拠地を置く医療診断・検査企業のLumiraDx社が、新型コロナウイルスの検査用にInstaSwabを承認リストに追加したことを発表している。OPT Industries社によると、3Dプリントされた綿棒としては初めて認定であるとのこと。
新たな施設ではInstaSwabのような医療用製品だけでなく、商業用製品も製造される。小さなスタートアップ企業だったOPT Industries社は大きな商機をつかみ、躍進を遂げた。
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