路面電車のスペア部品に、Stratasys FDM3Dプリンターで製造コスト削減に成功
鉄道車両メーカーのAlstom(アルストム)は、Stratasys(ストラタシス)のFused Deposition Modelling(FDM)3Dプリント技術を導入。スペアパーツの製造コスト削減し、リードタイム短縮と数千ユーロの費用の削減に成功した。
(写真はアルジェリアのSétif Tramwaysの路面電車 / 出典:Alstom)
Alstomの3Dプリンター事例【路面電車用部品の製造コストの削減】
アルジェリアの公共交通機関 Sétif Tramways(セティフトラムウェイ)は、路面電車の運行中に小さな穴に水や石が溜まってトラムのヘッドライトが壊れていることに気づき、Alstomにヘッドライトの穴を塞ぐための特注のスペアパーツ12個の製作を依頼。Alstomは通常だと納品まで45日かかるところを3Dプリンターで製造することで48時間で設計、製造、納品することに成功した。
時間が短縮できただけではなく、F370 と FDM TPU92A 高耐久性エラストマー材料を組み合わせて、柔軟性、耐摩耗性、耐引裂性を備えた品質も高い部品を提供。また、固定費を80%(約6,000ユーロ)削減した。
Fused Deposition Modelling(FDM)とは
20年以上前に FDM テクノロジーを発明した Stratasys。このテクノロジーは、専用の3Dプリンタと最終製品グレードの熱可塑性プラスチックを用いて製造される。そのため、強靭で耐久性と寸法安定性に優れた、3Dプリンティング技術のなかでも最高レベルの精度と再現性を備えた部品を造形できる。今回は F123 シリーズのなかでも大きい造形(355mm×254mm×355mm)が可能な「F370」が採用された。
今回採用された素材は「FDM TPU92A 高耐久性エラストマー材料」。交通機関のような重工業に使われる部品において、高い対応力やその他の過酷な条件に対応するために必要な特性を備えた堅牢な3Dプリント材料は重要だ。このフィラメントは、柔軟性、耐摩耗性、耐引裂性を兼ね備えており、排水栓に最適な素材として選ばれている。他にも、自動車用エアインテークホースのような大きくて複雑なエラストマー部品のプロトタイプを作成にも採用され、耐久性と柔軟性のある材料として実績がある。
Alstom、Stratasys各社は今回の事例について以下のようにコメントしている。
3Dプリントが与えてくれる俊敏性は、アルストムのビジネスにとって戦略的に重要です。「当社の顧客が操業を維持するためにスペアパーツに依存している場合、この社内生産能力を持つことは、従来のサプライチェーンを回避して、顧客のニーズに合ったソリューションを迅速かつコスト効率よく提供できることを意味します。
Alstom AMプログラムマネージャー Aurélien Fussel氏
COVID-19で見てきたように、3Dプリントはある意味で分岐点を迎えています。生産の機敏性を高め、サプライチェーンへの依存度を減らすために、ますます多くのメーカーがこの技術を採用しています。ストラタシスの長年の顧客である Alstom は、このような企業の輝かしい例であり、長年にわたってスペアパーツの製造に積層造形を使用する先駆者となっています。自社の効率を最適化するためだけでなく、従来の製造方法では実現不可能な革新的なソリューションを顧客に提供するために。
Stratasys EMEA製造事業部長Yann Rageul氏
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3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。