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デスクトップメタル、金属3Dプリンターで チタン合金を使用し業界標準を超える高強度×軽量生産を可能に

アルテック株式会社(以下、アルテック)は、国内一次代理店を務めるアメリカの金属3Dプリンター業界大手のDesktop Metal社(以下、デスクトップメタル社)が開発した金属3Dプリンター「Studio system」で、チタン合金の造形が可能になったことを発表した。

オフィスで使える金属3Dプリンター「Studio system」

Studio systemは、デスクトップメタル社独自のBMD(Bound Metal Deposition)技術を活用したオフィスで使いやすい金属プリントシステムだ。このBMD方式とは、デスクトップメタル社が2021年5月に発表したMIM(Metal Injection Molding/金属粉末射出成形方式)技術を応用した独自技術で、金属とバインダーでできた棒状の材料を熱で溶融し、ノズルを動かしながら吐出し一層ずつ重ねて造形する。従来工法では造形が難しかった、複雑な形状のモデルも造形を可能にした。

多彩な機能を持ちながら、コンパクトなボディと2ステップの簡単なプロセスにより、ほぼハンズフリーでの作業が可能で、金属3Dプリンターにありがちな粉の飛散や危険なレーザーもない。プリンターとファーネスで構成されるStudio systemは優れた表面仕上げと高性能な機械的特性を備えた複雑な形状の部品で少量生産を実現する。

Studioシステム(出典:)

また、同社は最近「Studio system2」を発表している。こちらについてはShareLab NEWS編集部で紹介しているので併せてご覧いただきたい。

チタン材料 Ti64とは

Ti64は、もっとも広く使用されているチタン合金で、高い引張強度、耐食性、生体適合性を特徴としている。

高い強度対重量比を持つTi64は、航空宇宙・防衛・自動車・石油・ガスなどの産業における高性能な製造用途に最適な材料とされている。また、生体適合性に優れていることから、手術器具やインプラントなどの医療用途にも適している。

Studio systemでは、従来の粉末床融合方式の3Dプリンターに比べて、利用しやすいプラットフォームで、優れた機械的特性と耐腐食性を持つTi64部品を製造できる。

BMD方式の金属3DプリンタであるStudio Systemは、プレプロダクションや最終用途向けの高性能な金属部品を、少量プリントとしてはもっとも簡単な方法で、顧客に提供できる金属3Dプリンティング・プラットフォームとされている。

そして今回、Studio SystemでTi64を使用することにより、業界標準を超える高強度で軽量な部品を生産することが可能になった。Studio system用Ti64は2021年9月の出荷を予定しているが、他にも316Lステンレス、17-4PHステンレス、4140低合金鋼、H13工具鋼、銅などの幅広い素材に対応。また、わずか2ステップの合理化されたプロセスを活用した幅広い素材のポートフォリオは、現在活発な研究開発が行われており、今年中に新しいリリースが予定されているとのこと。

製造事例

実際に、Studio Systemでチタン素材(Ti64)を使用した事例を3つ紹介する。主な使用例の一部ではあるが、チタンで3Dプリントすることで部品が軽量化され全体的なコストが削減されることが大きなメリットだ。

複雑な形状のマシンブラケット。3Dプリントで出力することで、重量を59%削減させた。

右図のマシンブラケットは、17-4PHステンレスの代わりにチタンを使用。ジャイロ格子状のインフィルを用いて設計されており、必要な強度を維持しつつ、軽量化と材料の削減を実現。

複雑な形状であるため、従来の製造方法では製造できなかったこの新しいデザインを、Studio SystemでTi64を使って3Dプリントすることで、部品の重量を59%削減させることに成功。

(写真出典:アルテック)


この写真にある小型望遠鏡のフォーカスリングは、移動式望遠鏡のレンズを固定するためのもだ。

レンズの位置と焦点を合わせるために使用される複数のモーターがあり、このリングをTi64で造形することで、すべての部品が軽量化され、より小型のモーターの使用が可能になり、部品の摩耗や組立の全体的なコストが削減が実現。
通常この部品は少量生産のため多額の投資が必要だったが、Studio SystemとTi64を使用することで最大6個のフォーカスリングを24時間以内に造形可能。わずか数日後には設置可能となり投資コストが削減できる。

(写真出典:アルテック)


ドローン・カップリングは、ドローンのフレーム上で2つのアセンブリを固定するために使用される部品である。

Ti64で造形することで、ドローンのフレームに必要な構造的整合性を維持しつつ、大幅な軽量化を実現。この部品を週に15~25個の少量生産から量産に移行するまでの間、金型や機械加工を必要とせずに行うことができる。
(写真出典:アルテック)


デスクトップメタル社は、業界標準を超える高強度な軽量部品を造形可能にする、BMD方式用材料としてチタン合金を商品化した初めての企業である。そのデスクトップメタル社は新たにチタン合金Ti-6Al-4V(Ti64)の使用を認定し、9月に出荷予定で、DBMD(バウンドメタルでポジション)用材料としてTi64を展開を想定している。

DBMD方式は一般的なハイエンドメタル3Dプリンターが採用しているSLS方式とは違い、FDM方式のような仕組みで造形する。

今後、扱いにくかった金属3Dプリンターの活用の幅が広がっていくことが予想される。両社の取り組みには今後も注目していきたい。

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シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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