三井化学が野外イベントの使い捨てカップごみを大型3Dプリンターでアップサイクル
2022年7月22日から24日にかけて茨城県つくば市で行われた「つくばクラフトビアフェスト」において、会場で発生した使用済みの使い捨てプラスチックカップを回収し、アップサイクルに取り組む上で3Dプリンターが用いられるという。(画像はプラスチックカップからアップサイクルされる「座れるモニュメント」 出典:三井化学株式会社)
3Dプリンターでごみをリサイクル!100%循環型ビールイベント目指す
つくばクラフトビアフェストでは、例年、環境負荷低減のため、イベント内でのゴミを減らす施策が導入されてきた。今回のイベントでは100%循環型イベントを目指し、すべての来場者がリユースカップを使用する仕組みとなっている。リユースカップは前回イベントでも導入された施策で、数トンのゴミ削減に成功したという。
来場時にデポジットとして500円を預けることで繰り返し使用可能なリユースカップを受け取り、退場時に返却すれば500円が返ってくる。自宅への持ち帰りも可能だ。(写真はイベントで使用された2種のリユースカップ 出典:アサヒユウアス株式会社)
また、飲み比べセットのようなどうしてもプラカップを使用しなくてはならないメニューについては、プラスチックカップ及び関連ゴミをアップサイクルすることで、焼却によるCO2を削減する施策が取られる。
今回3Dプリンターが活用されるのは、プラスチックカップ及び関連ゴミの価値向上を行うリサイクル(アップサイクル)だ。アップサイクルとは、本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生する試みを指す。リサイクルのように廃棄されるものの中から原料や素材として使えるものを取り出すのではなく、新たな価値を与える点に特徴がある。
国産3Dプリンターを用いたアップサイクル
今回のイベントで、プラスチックカップをアップサイクルしたのは東京都港区に本社を構える三井化学株式会社だ。三井化学は今までも電子基板をAM技術で製造するエレファンテックとの協業や、名古屋大学と共同で再生可能な3Dプリンター製マスクの開発など3Dプリンターを活用した活動を行っている。三井化学はこれまで培ってきた樹脂コンパウンドの製造・制御技術とそれを用いた大型3Dプリンター技術を活用し、粉砕された回収プラスチックカップを原料に「座れるモニュメント」にアップサイクルを行う。「座れるモニュメント」はつくばセンター地区活性化協議会に寄贈される予定とのこと。
また三井化学は、2022年6月に東京ビッグサイトで開催された「日本ものづくりワールド」の次世代3Dプリンタ展にも、国産ペレット式産業用3Dプリンターのメーカーであるエクストラボールド社のブースに出展していた。この際は、PP(ポリプロピレン)を主原料とした素材で、大型3Dプリンターの特徴を活かした形状の椅子を発表していた。
エクストラボールド社の3Dプリンターは材料に射出成型でも用いられるペレット材を利用できる。ペレット材はパウダーやフィラメントにくらべてリサイクルが容易。エクストラボールド社のブースでもホロン精機が、リサイクルペレット装置のデモンストレーションが行われていた。造形失敗時の廃棄物を削減するだけではなく、リサイクル材料を活用し高付加価値な部品や製品を造形するアップサイクルへの取り組みは今後も注目が集まるだろう。
リサイクル分野でも活用される3Dプリンター
3Dプリンターは樹脂を素材として造形できることや、複雑な形状に造形可能である特徴を活かし、さまざまな分野で活用が進められている。金型を必要としない3Dプリンターは、造形度の自由さから、特にアップサイクルに適した製品だといえる。以下に、ShareLabNEWSで取り上げてきた、3Dプリンターのアップサイクル活用例を挙げる。こちらもぜひご覧いただきたい。
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