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建設用3Dプリンター本格導入に向けた実証試験を続けるプラント建設企業 ― 日揮グループ

造形事例

日揮グループはバイオマス専焼発電設備の建設にCOBOD International A/S社の3Dプリンターを導入し、本格導入に向けた実証試験に取り組んでいる。国内企業として初めて、現地調達した材料で3Dプリント建築施工を行い既存工法との比較を行うなど様々な成果が得られた。(写真はCOBOD社のプリンタを用いた他社の造形事例。)

宮城県のバイオマス専焼発電設備の建設で建設用3Dプリンターが現場投入

日揮グループは各種プラント建設や機能材料製造、エネルギー事業などを国内外で幅広く展開しているプラント建設事業を行っている。日揮グループ傘下で、主に海外での設計・調達・建設を行う日揮グローバル株式会社は、建築業のDXの一環として建設用3Dプリンターの導入検証を行ってきた。

2021年10月からは宮城県石巻市でバイオマス専焼発電設備の建設がスタートした。日揮グローバル株式会社ではこの建設現場にCOBOD International A/S社(デンマーク)のガントリー型コンクリート系建設用3Dプリンターを設置し、3Dプリンター本格運用に向けた実証を進めている。

今回の建設用3Dプリンター導入事例からは様々な成果が報告された。

デンマークの建設用3Dプリンターメーカー COBOD International A/S社製3Dプリンター(出典:日揮ホールディングス)

建設用3Dプリンターで汎用コンクリート材を利用。実用的な低コストを実現

これまで、建設用3Dプリンターを活用した施工では3Dプリンター専用材料が用いられることが多かった。しかし、これでは建設用3Dプリンターを幅広い場面に適用することはできない。専用材料は製造できるメーカーが限定され、コストも割高になってしまうためだ。

この現状を受け、今回の発電設備建設では現場で入手が容易なセメントや骨材(コンクリートに混ぜる砂利や砂)など、一般的な材料を利用して現地で材料を混錬し、コンクリート製基礎型枠の造形に取り組み、無事成功した。一般的な材料でも3Dプリントが可能であることが実証されたことで、今後、幅広い3Dプリンターの活用が期待できる。

また、3Dプリンターを活用することで工期短縮も実現している。3Dプリンターを利用した工法であれば、コンクリートを固めたり型枠を取り除いたりする工程が必要ないため、従来工法よりも工数が少ない。

本実証では、従来工法と3Dプリントの同時施工によって結果を比較しているが、従来工法で16日間必要であった型枠施工のプロセスが、半分の8日間で完了できる目途が立った。

3Dプリンターの活用には、使用者の育成も課題だ。建設用3Dプリンターも通常の3Dプリンターと同じく、3Dプリンターで造形する際のパラメーター最適化や装置本体の適切な組立・設置、レベリングなど、その操作に精通した技術者が必要となる。

しかし、日揮グループではトレーニングの期間を1週間程度に短縮することに成功した。ソフトウェアの簡素化やトレーニングプログラムの工夫によって、専門的知識に依存しない3Dプリンター導入を進めていく狙いだ。

日揮グローバルの建設3Dプリント実証実験は続く

宮城県石巻市のバイオマス専焼発電設備における3Dプリンター実証は2022年6月末に終了し、7月からは茨城県に3Dプリンターを移した。屋外オンサイトプリンティングの有効性評価を継続していくことで、更なる省人化やコストダウン、工期短縮の実現を目指す。

今後はセメント系材料のみならず、金属系や樹脂系3Dプリンターについても建設現場に導入していく。こちらは革新的な技術を有する国内企業と協力しながら進めていく予定だ。

建設用3Dプリンターに関して、海外では大規模な活用が既に始まっているのに対し、国内では建築基準法などの壁により限定的な運用しかなされていなかった。本サイトで過去に取り扱った事例については、以下リンクを参照していただきたい。

建設用3Dプリンターの海外事例

>>【最新事例】世界で建設される3Dプリンター住宅、日本への実用化は?

>> チベットで過去最大規模の3Dプリント構造物、水力発電ダムの建設

建設用3Dプリンターの国内事例

>> 日本初の3Dプリンター専業住宅メーカー・セレンディクスが叶える「車と同じ値段で家が買える未来」

>> 清水建設が幅20m・高さ4.5mの大規模構造物をオンサイト造形

今回の日揮グループの事例のように、建設用3Dプリンターに関する知見を蓄積し、建設現場でも3Dプリンターが広く用いられるようになることに期待したい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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