【最新事例】世界で建設される3Dプリンター住宅、日本への実用化は?

今回は3Dプリンターを用いて建設された家各国の最新住宅事例をご紹介する。また、現在進行しているプロジェクトから予想される日本への実用についても解説。
日本の最新事例はこちら「3Dプリンター住宅、日本の課題と最新事例を紹介」にてご紹介しているので併せてご覧いただきたい。
目次
3Dプリンター住宅とは
3Dプリンター住宅とは、名前の通り3Dプリンターを使って建てた家である。数年前から3Dプリンター住宅は世界各地で建築が進んでいる。例えば、米国で初の3Dプリンター住宅を完成させたICONは、2018年にはすでに建設許可を取得し今後もますます建築時れが増えてくることが予想される。
2016年にドバイで強化繊維プラスチックとガラス繊維強化石膏による補強コンクリートを材料に、3Dプリンターで造ったオフィスが建てられました。2019年には、ゼロ・エミッションをテーマにした「The Sustainable City」と呼ばれる分譲住宅の販売も行われています。
3Dプリンター住宅はこれまでの建築方法と比べると、建築にかかる時間が短く、必要な人手も少なく済むことで製造コスト削減に貢献する。
事例1│ケニアで52戸の住宅を3Dプリント

スイスのセメント大手Holcim社が、アフリカ最大の3Dプリント住宅プロジェクトとして、ケニアに52棟の集合住宅を建設することを発表した。「Mvule Gardens」と名付けられたこのプロジェクトは、Holcim社と英国の開発金融機関であるCDCグループとの合弁会社14Treesによって実施されるとのこと。
14Treesは、アフリカの手頃な価格の住宅不足に対処しながら、地元で熟練した雇用を創出することを目的としている。アメリカとアフリカを拠点とする建築事務所MASS Design Groupは、ケニアの環境に合った住宅を作るという考えのもと、Mvule Gardensの設計を行った。
Holcim社は、3Dプリントによる建設は従来の工法に比べて、化石燃料の消費量を50%以上削減できると主張している。従来の工法では4日間を要していた壁を、わずか12時間で建設可能とのこと。
Holcim社のCEO、Jan Jenisch氏は 「私たちは、ケニアで世界最大級の3Dプリントによる手頃な価格の住宅プロジェクトを建設できることを嬉しく思っています。今日の急速な都市化により、2030年までに30億人以上が手頃な価格の住宅を必要とすると予想されています。この問題はアフリカで最も深刻で、ケニアのような国ではすでに200万戸の住宅が不足していると推定されています。3Dプリントを導入することで、このインフラのギャップを大規模に解決し、すべての人の生活水準を向上させることができます。」と述べた。
しかし、3Dプリンターによる持続可能性の目標を掲げているにもかかわらず、Holcim社の二酸化炭素排出量はベネズエラと同等の量になっている。セメント生産には大量の二酸化炭素が排出され、世界の二酸化炭素総排出量の約8%を占めている。同社の3Dプリントよる新たなプロジェクトは、環境に配慮しているようで実質は異なる「グリーンウォッシュ」の試みであるという批判もある。
事例2│ドイツ初となる3Dプリント住宅が完成
ドイツに本拠を置く型枠および足場システムの世界最大メーカーの1つPERI社 は、建設を進めていたドイツ初の3Dプリント住宅が完成し入居を開始している。

ドイツ初となる3階建ての3Dプリント住宅は、デンマークの3DプリンターメーカーCOBOD社 の大型建設用3Dプリントシステム「BOD2」と、HeidelbergCement社が3Dプリント用に特別に開発したコンクリートプリント用材料「i.tech®3D」を用いて建設されている。3階建ての建物で、断熱材を充填した三層壁から成る5つのユニットから構成されており、総居住面積は380平方メートルだ。
1m²の二重壁を約5分でプリントする。建設開始から10ヶ月間、合計100時間稼働させて建設されたこの住宅は既に完成し、2021年8月から賃貸物件として入居を開始している。
こちらについては以前ShareLab Newsでも取り上げている。詳細については以下記事を確認してほしい。
事例3│二週間で完成!コンクリート製3Dプリント住宅ー中国北部 農村部
中国の北京市にある清華大学建築学部の徐偉国教授は、中国北部の河北省にある農村部に、巨大な建設用3Dプリンターを使った3Dプリント住宅を建設した。

中国の農村部としては初となるこの3Dプリント住宅は、2022年冬季オリンピックの共同開催地である張家口市五家庄村に建てられた。吹き抜けの天井や、織り模様で装飾された3Dプリント製コンクリート外壁から構成されている。延床面積は106平方メートル。
建設現場では、ロボットアーム式の大型3Dプリンターとコンクリート材を用いて壁面がプリントされ、屋根部分についてはプリント後にクレーンを利用して壁面と組み合わされた。この一連の建設プロセスはわずか2週間で完了したという。
中国の精華大学の3Dプリンター事例は住宅以外にもShareLab NEWSでご紹介している。中国の大型造形への取り組みは急速に進んでおり注目だ。
3Dプリンター建築が注目されている理由
各国の事例を見てどのように感じただろうか。
積層造形独特の外壁の特徴がでているもの、滑らかな歪曲デザインや、中国のように練り模様を組み合わせればデザインも単調ではなくなり個性的で洗礼されている。このようなデザイン性の進化は今後ますます発展していくだろう。
さらに、3Dプリンターによる住宅建設は、建設の自動化とデジタル化の推進という建設業界の課題を解決する大きな可能性を秘めている点は注目される大きな理由のひとつだ。これは建築業界だけでなく、最近前澤社長が飛び立ったことで話題の宇宙でも3Dプリンター建築が活用される理由でもある。
一方でセメントやコンクリートといった建設素材については、まだまだ大きな課題が残っていると言えるだろう。今後は技術としての進化とともに、環境負荷の少ない素材の改良・開発についても期待したいところだ。
今後はデザインだけではなく、新たな材料の開発でそのバリエーションの幅は広がり、材料を選び、従来では難しかった難解なデザインへのチャレンジできる注文住宅としての事例が見れるのもそう遠くないかもしれない。
日本での実用はいつ頃?
海外ではすでに本格的に活用が進んでいる中、気になるのは日本ではいつ3Dプリンターの家が建つのか。
日本で初めて3Dプリンターで家を創るプロジェクトは、 今月に発表され注目を集めているセレンディクス・パートナーズが2019年12月にスタートしている。「24時間で建築できる30坪300万円の3Dプリンター住宅」ではShareLab NEWS編集部が同社へ取材を実施。このプロジェクトの出発点や、気になる建築基準法のような法規との関係など伺っているのでぜひご覧いただきたい。
取材当時に提供していただいた同社の3Dプリンターで家を建てるプロジェクトのロードマップは以下の画像通りだ。

取材当時は①の段階であったが、現在は着実にプロジェクトを進捗させ、来年2022年には一般住宅型の建築発表を想定している。
また、建設用3DプリンターメーカーPolyuseとMAT一級建築士事務所は日本初の建築基準法に準拠した3Dプリント建築したことを発表。これまで、建築基準法を満たす建築物が3Dプリンターでは建築できていなかった中、同社の取り組みは今後、日本の3Dプリンター住宅をより現実的に、身近に感じさせる事例として注目を集めた。
自然災害の多い日本で、3Dプリント建築が実現したという意義も大きい。災害時に必要となる仮設住宅は、どんなときにも不足してきた。3Dプリンターで迅速に災害時住居が建築できるようになれば、被災地での苦しい生活が改善されることだろう。
施工風景 建築物イメージ
国内3Dプリンター住宅の関連情報
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