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清水建設が幅20m・高さ4.5mの大規模構造物をオンサイト造形

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清水建設は、自社施設内でオンサイト3Dプリンティングの実証施工を行った。埋設型枠のみ3Dプリンターで造形し、内部にコンクリートを打ち込む施工方法は、現行の日本の法規にも抵触せずすぐにでも実践できる工法だ。業界全体で課題になっている建設現場の人手不足を解消する省力化・省人化の具体策として注目を集めている。

Shimz Robo-Printer

清水建設は、建設用3Dプリンター「Shimz Robo-Printer」の開発を行っている。Shimz Robo-Printerは、レール上を水平移動するノズルでプリント材を吐出するガントリー型3Dプリンターで、大型の構造物を現場で直接印刷することを目的として設計された。名称からわかる通り自動化が目的でロボット開発のアプローチを推し進めた結果として3Dプリンターにたどり着いたのだろう。

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Shimz Robo-Printer(装置寸法:奥行25m×幅7.2m×高さ12.5m、プリント範囲:奥行20m×幅4.5m×高さ5.1m、プリント速度:最大100mm/秒、駆動体重量:約9トン)(出典:清水建設)

清水建設は、自社施設内でShimz Robo-Printerを使った実証施工を行い、幅20m・高さ4.5mの大型構造物をオンサイト印刷することに成功している。オンサイト印刷とは、構造物をその場で3Dプリントすることを指す。つまり、工場で印刷した構造材を建築現場に運んで組み立てるのではなく、現場に3Dプリンターを導入し、印刷物をそのまま構造として利用する方式だ。

曲面形状埋設型枠の造形

今回の大規模構造物には、従来的なコンクリート打ち込み工法と、3Dプリンターによるオンサイト印刷を組み合わせた施工法が用いられた。

3Dプリンターが用いられたのは、構造物の外側のみだ。コンクリート型枠としての機能を兼ねる外装部材を3Dプリンターで造形し、その内部にコンクリート打ち込みを行う。

正確に言えば、鉄骨と鉄筋を所定の位置に組み立てた後、3Dプリンターのノズルを周回させながら外周型枠を造形、積層体が1m積みあがる毎に、内部へコンクリートを打ち込む、という作業を繰り返して建設を行った。

鉄筋構造を回避しながら3Dプリンターノズルが外周約42mを一周するのに要した時間は約10分、型枠全体の印刷に要した時間は延べ75時間であった。

近年、建設分野でも3Dプリンターの活用が進むが、その利用法も多岐に渡る。今回のような、コンクリート打ち込みと組み合わせた方法は、建設現場の省力化・省人化を進める一方、構造物の強度や断熱性を十分に保つことができる施工法だ。

施工の様子(出典:清水建設)

ECMコンクリート材料

実証施工では、環境配慮の取り組みとして、型枠内に充填するコンクリートに低炭素型コンクリート「ECM(Energy・CO2 Minimum)コンクリート」が用いられた。セメントの60~70%を鉄鋼製造時の副産物である高炉スラグ粉末に置き換えたもので、コンクリート由来のCO2排出量を6割削減できる。

ECMコンクリートは大気中で中性化が進みやすく、内部鉄筋を腐食から保護する機能が失われるという欠点があり、これまでその適用事例は地下躯体や地盤改良体の施工に限られていた。

しかし、3Dプリントした外装部材によって充填コンクリートを大気から遮断することで、この欠点を補うことができ、今回のように地上躯体への利用が可能となった。

清水建設は、今後も新たな施工法や材料を模索し、施工現場の様々な課題解決に取り組んでいく考えを示している。

Sharelabではこれまでに建築3Dプリンター関連の記事を掲載してきた。これらの記事も参照されたい。
>>COBOD社の建設3Dプリンターが、稼働を開始
>>3Dプリンター住宅、日本の課題と最新事例を紹介
>>【最新事例】世界で建設される3Dプリンター住宅、日本への実用化は?
>>その他建設業界における3Dプリンタ―の活用事例

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