SLAからLCDへ。業務用光造形方式の3DプリンターForm 4登場
Formlabs株式会社はForm 3 / Form 3+の新型後継モデルとしてForm 4の国内販売を4⽉18⽇(⽊)より開始する。実際の販売はメーカー直販の形をとらず今まで通り、株式会社データ・デザインなどの国内正規販売代理店10社を通じて行われる。発売以来日本国内でも出荷3,000台以上という業務用3Dプリンターとしては圧倒的な実績を持つForm 3シリーズの後継機となるForm 4だが、30%の造形エリアの拡大や3.5倍以上の造形速度の高速化を実現しているという。(上部画像はFormlabsの新機種Form 4。出典:Formlabs)
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圧倒的なシェアを誇る業務用光造形装置の課題と進化
Formlabsの説明によると、Formlabsの3Dプリンターは世界出荷累計13万台以上、国内でもForm 3シリーズは3,000台以上の出荷実績がある。その国内シェアは77.3%と圧倒的な実績を持っている。
人気機種だったForm 2の後継機として登場したForm 3シリーズは、造形の安定性や造形精度、ソフトウェアの使いやすさでユーザーからの圧倒的な支持を得ている一方で、廉価帯の光造形方式の3DプリンターでDLP方式やLCD方式に比べると造形時間がかかる、という改善要望も寄せられていた。こうしたユーザーの声に応えた機種開発として、樹脂粉末材料を粉末焼結するFuse1の登場やForm 4の登場につながった形だ。
最速1時間100mmの造形。従来比3倍以上の圧倒的な高速化を実現したLCD方式の採用
Form 4は、LCD(液晶ディスプレイ)スクリーンを使⽤して紫外線バックライトをマスクして造形するMSLA(マスクステレオリソグラフィ)⽅式のデスクトップ型3Dプリンターだ。前モデルであるForm 3と⽐べて、造形エリアを30%拡⼤させ、全材料平均で約3.5倍の⾼速性を実現し⾼速硬化⽤樹脂材料で100mm/hの高速造形が可能になっているという。
「日本のみならずアメリカでもFormlabsはSLA方式のメーカーだったんじゃないの?と古くからのユーザーさまにお声をいただくことはありますが、粉末焼結の装置Fuse 1をリリースしたように私たちは誰もがデジタルなモノづくりを実現することを標榜した3Dプリンターメーカーです。いまの技術的な状況を見て最適な方式を選択したのがForm 4です。」(Formlab株式会社 大熊 宏 氏)
LCD造形技術は、60個のLED光源とそれに対応する60個のレンズを使用して光を増幅し、造形物に均一な光を供給する。この方法により、光の均一性と強度が保たれ、従来のレーザー方式と比べて3倍から4倍の速度向上を実現しているほか、従来のSLA方式ではXY方向にも駆動する機構があったが、LCD方式に対応することで機構部分がZ方向のみとなっている。「機構が簡素化されたことで、造形速度を高速化できた上に価格も抑えることができました」(大熊氏)
従来のSLA方式では、ミラーを使用してレーザー光を反射させるため、造形領域の端に向かうにつれて精度が落ちるという問題があった。しかし、LCD方式の採用によりこの問題が解消され、造形物のゆがみがなく、より高精度な製品を一貫して生産できる。機械的精度を求められる嵌合部品などの造形精度が向上し、産業用途でのモノづくりを実現する装置に仕上がっているようだ。
液体材料の補給は従来通りカートリッジになっているが、形状に変更があった。材料補給にかかる時間も従来は30分以上かかっていたが、供給口を改良することで補給時間が大幅に短縮しているという。
いままで表面性は高く、造形に時間がかかるというユーザーの声があったということだが、造形速度、材料補給などさまざまな観点でユーザーから寄せられた改善要望を盛り込んでいるようだ。
カメラ、センサーを搭載しインテリジェントな管理を実現
Form 4はリモート監視とトラブルシューティングが可能なカメラを内蔵し、造形中の様子をクラウド経由で確認できる。またレジンタンクセンサー、荷重センサー、レジン温度センサーを備え、正確なレジン量の計測や、材料や形状に応じた造形速度と造形品質のバランスを最適化できるという。
さらに残留物検収ミキサーによって、タンク内の硬化済みレジンの有無のチェックや、レベリングセンサーによって、簡単にプリンターの⽔平設置を確認することが可能になっているという。
Formlabsの関連リンク
性能改善が進む業務用3Dプリンターだが、Form 3の使い勝手の良さを継承しつつ造形速度を大幅に改善したForm 4の登場はその一例だ。こうした装置の進化は、さらに多くのユーザーの3Dプリンター活用に刺激を与えることだろう。以下はいままでシェアラボ編集部で取り上げてきたFormlabsの関連ニュースだ。この機会にあらためてご覧いただきたい。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。