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「樹脂3Dプリントの未来を探る特別イベント」参加報告 YOKOITOが起こすイノベーションとは?

「樹脂3Dプリントの未来を探る特別イベント」

2024年4月26日に東京で開催された株式会社YOKOITO主催「樹脂3Dプリントの未来を探る特別イベント」にシェアラボから丸岡が参加した。まずこの機会を与えていただいたYOKOITOの皆様と講演、参加をされた皆様にこの場を借りて感謝の意をお伝えしたい。YOKOITOは2023年11月30日に東京でのイベント「formnext 2023レポート—世界の最新AMの動向とポストプロセスのこれから—」を開催しシェアラボでも紹介したが、今回のような形と規模のイベント開催は初めてとのことで、樹脂AMに関わる様々な立場の方が大勢参加されたことに加え、独特の開催目的やプログラムにより、これまでとは少し違った情報交換と交流が活発に行われ、これからの国内AM活用拡大に必要な「イノベーションの起こし方」に一石を投じたイベントであった。(掲載写真は許可により撮影またはYOKOITO提供。)

株式会社YOKOITO概要

株式会社YOKOITOは2014年に設立され、京都に本社と複数のオフィスを有する。デジタルファブリケーション技術を通じて「全てのアイディアをカタチにできる社会を目指す」をミッションに活動しており、2021年にはAM技術の研究と普及を目指すブランド「Yokoito Additive Manufacturing(以下、YAM)」の立ち上げとAM技術の研究と普及を目指す3Dプリントサービス施設である「Yokoito Additive Manufacturing Center」を京都市内にオープンし、AM技術の発展に尽力することで様々なモノづくりの現場へ工程開発と共に技術を提供してきた。(シェアラボ企業DB掲載ページはこちら

「樹脂3Dプリントの未来を探る特別イベント」講演と展示の要点

今回は一般参加費有償で、比較的既に何らかのAMを使われている、あるいは供給側の参加者も多かった印象を受けたが、大型連休前日にもかかわらず様々な分野から大勢の方が参加されていた。ここでは講演や展示の要点だけを以下にお伝えする。まず開会のあいさつとして、株式会社YOKOITO 取締役COO 菊池 映美 氏より「樹脂AMは試作用のイメージ強いが生産にも使える。YOKOITOは設立10年を迎え、現在受託サービス、樹脂AM機器販売・レンタル、導入活用コンサルや講習を提供している」との話があった。次に会場テーブル展示もされたゲストスピーカー2社と協賛企業5社からの講演があった。

ゲストスピーカー講演

株式会社前田シェルサービス
「3DP造形品の最終品利用における課題と採用事例」
環境商品事業部 開発チーム 課長 高橋 功 氏 

創業主業は金属重力鋳造中子用砂型製造。その後自動車の鋳造需要が減ったことから金属切削加工事業を始め、自動車メーカーからの試作受託のために小型樹脂MEX(材料押出法)プリンターを導入。それ以来、「強度」「大型」「高精度」の需要に応えるため中大型樹脂MEXプリンターを多種多数増設し、最近は材料コスト低減需要から樹脂PBF(粉末床溶融結合法)プリンターや、自社インテリア製品製造のために樹脂ペレットエクストルーダ方式大型プリンターも導入した。また実用部品AM製造には50~100万円の金型不要、設計変更容易、型保管不要の点から同形状1,000個以下製造でメリットがあり、自社製品のドライフィルター専用圧縮空気品質モニター「AIR-MO」の制御基板ケース実用部品をAMで製造した。

AM製造した制御基板ケース実用部品
AM製造した制御基板ケース実用部品

②合同会社 DMM.com
「成功事例を紹介!受託造形を活用した量産の秘訣を公開」
エンターテインメント&EC本部 3Dプリント事業部 マーチャンダイジンググループ マネージャー 五十嵐 加奈子 氏

2013年から3Dプリントサービス DMM.make 3D PRINTを開始。現在個人法人含め利用ユーザー数は20万人越え。アジア初上陸「HPS造形方式」含め多種の最新機材と国内サイトの素材58種を有し、低価格高品質、最短翌日発送のスピード、データセキュリティなどの信頼性をサービスの特長としている。利用事例として試作ではロボット部品や住宅白模型、最終製品や部品として自動車カスタムパーツやタクシー表示灯、オーダーメイドインソールなどを紹介。

HPS方式プリンターとセラミックライク材料によるサンプル
HPS方式プリンターとセラミックライク材料によるサンプル

協賛企業講演

株式会社アスペクト
樹脂粉末レーザーPBF装置製品シリーズAM-E3(エーエムイーキュービック)の概要紹介。多種樹脂粉末材料、高温材料対応が特長。PBFは結晶性材料に向いていると言われ、必要な3つの要素は ①積層可能な粉末 ②安定した造形環境 ③レーザー加工精度 である。
アスペクトの技術開発の取り組み例は、粉面状態の最適化と緻密化、温度環境の最適化、窒素ガスの密閉雰囲気化で不活性化、最適ヒーターの種類と配置で、結果としてPPSやPFA(フッ素樹脂)もできる。

アスペクトの多種材料造形サンプル

EOS Electro Optical Systems Japan 株式会社
ドイツ本社は1989年設立。金属およびプラスチックの産業用ハイエンドPBF 3Dプリンティング分野で世界をリードするソリューションプロバイダー。最近の実用製品部品製造での活用事例として金属ではパーソナルジェットスーツのエンジン部品や自動車ホイールロックナット、樹脂では高級化粧品のマスカラブラシ、エアレスバスケットボールなどを紹介。EOSは設計や工程管理ソフトウエア、粉末材料、活用コンサルティング、仕上げ加工など多くの企業とのグループ化、またはパートナー関係を構築し、AM活用に必要な幅広い製品やサービスを提供している。

金属、樹脂の実用品製造サンプル
金属、樹脂の実用品製造サンプル

Formlabs株式会社
アメリカ マサチューセッツ州で「誰もが簡単にものづくりができる世界」の実現を目指して2011年に会社設立。VPP(液相光重合法)やPBF方式樹脂3Dプリンターメーカー。
AM量産製造における装置に求められる鉄則は製造能力と償却力。材料費より償却費が高いと儲からない。Fuse1(イッテルビウムファイバーレーザー樹脂PBFプリンター)は製造能力と償却力が高い。加えてパウダーケーキから未焼結パウダーを回収してふるいにかけ、未使用・再利用パウダーを自動的に計量混合するFuse Sift、エアブラストによる粉末除去と研磨の完全自動化ができるFuse Blastで工程の省人化と高表面品質も両立。AM量産と利益を上げるための差別化には設計力を磨くこと。切削加工は過去の積み重ね=帰納法エンジニアリングで、AMはあるべき姿を求める=演繹法エンジニアリングである。最近業務用光造形方式の3Dプリンター Form 4を発売した。

Fuse1 NYLON12材料のサンプル
Fuse1 NYLON12材料のサンプル

シェアラボの関連記事は以下よりご確認いただきたい。

株式会社 日本HP
HP Multi Jet Fusion テクノロジーによる樹脂PBF方式3Dプリンターメーカー。HP Jet FusionシリーズプリンターによるAM実用部品製造は自動車輸送機器部品、工作機械・ロボット、医療、コンシューマー製品などで活用されている。例としてアメリカの市販電気自動車では1台あたり樹脂・金属合計115個のAM製造部品の一部として採用され、SUV車のスポイラークロージドシールは6万個の追加パーツが5週間で製造納品された。また「HP プロフェッショナルサービス」では、社外パートナー企業によるソフトウェアや後仕上げ装置により量産のプロセスフローを構築する。

HP Jet Fusionによる製品製造サンプル
HP Jet Fusionによる製品製造サンプル

オートデスク株式会社
3Dプリンター利用のためのCADの導入検討ポイントとして、企業における3Dプリンターを導入する目的は試作をプリントアウトすることではなく、企業競争力を上げることで、そのためには3D形状の可能性を具現化することが重要。CAD/CAM/CAE/PCBを統合したソフトウェア製品Fusionの主なAMに関する機能例として、STEPなど中間ファイルでも高度高速な設計変更可能、スキャンメッシュデータのソリッド変換から形状編集可能、開発期間の短縮化が最大効果であるジェネレーティブデザイン、樹脂MEXプリントのサポート設計からスライス出力やプリントにおける材料使用・コスト計算機能、金属PBFプリントのサポート設計や熱だまり解析、ボリュームラティス設計、樹脂PBFプリントのオートネスティングなどを紹介。

また会場内では、ロボット全体からロボットの周辺機器等の開発を行う株式会社ワークロボティクス 代表取締役 保坂 謙史郎 氏(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 客室研究員)が、人が行きにくい箇所の点検を行うロボットの実機を持参展示されていた。この部品には多くの樹脂AM製造部品が採用されているとのことで、多くの参加者が関心を寄せ、話をされていた。

樹脂AM製造部品が使われた点検ロボット
樹脂AM製造部品が使われた点検ロボット

最後に株式会社YOKOITO 代表取締役 中島 佑太郎 氏からまとめとして、「イノベーションは雑多な交わりから生まれるもので、今回はその場として東京で初めて開催した。AMはいま社会実装フェーズにあり、競争ではなく協働が必要。YOKOITOはマーケティング会社であり、いわゆる”営業”はせず、お客様のニーズをベースにソリューション提供をする。」と話された。

講演間休憩時間やプログラムが終わった後も、協賛企業ブースの方々と、または参加者どうしで残って自由に話をされている姿が多く見受けられ、これこそYOKOITOがイノベーションを起こすために目指したことであり、その点でもイベントは有意義で、成功であったと言えよう。

あいさつをする株式会社YOKOITO 代表取締役 中島 佑太郎 氏

今回のイベントから見えたAM活用のヒントになるポイント

  • ゲストスピーカー2社に共通していたことは、AMとは全く違う主業の企業が市場の需要変化を察知または予測し、それに応えるビジネスをAMによりまずは小さく始め、そのお客様がさらに求める要求に応じて必要な装置や材料を増やし、自社主業の技術も生かしながら活用範囲とビジネスを継続拡大されていること。
  • AM装置やソフトウェアのサプライや企業は、これまで自社製品の性能・価格や万能性、優位性をアピールすることが多かったが、今回は社会や市場の様々な課題に対し自社製品がどの課題に適し、どうやって解決していくのかを事例と共に示す内容が多く、またAM製造に必要な「考える」「作る」「整える・測る」「評価管理する」の工程全体を他社製品との連携で提供する変化が見られ、利用者も自身のどの課題に対し、どうAMを使うかの視点で調査検討し、雑多な交流の中で良いアイデアやビジネスを探すことが大事になってきていること。

YOKOITOでは今後も同様のイベントを開催していきたいとのことで、シェアラボでも今後も注目し、お伝えしていく。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

資料ダウンロード 3Dプリンティング国内最新動向レポート

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