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国内AM企業が見たformnext 2023の姿——YOKOITOが分析する世界のAM動向とポストプロセスのこれから

2023年11月30日、YOKOITOは東京でのイベント「formnext 2023レポート—世界の最新AMの動向とポストプロセスのこれから—」を開催した。formnextは毎年ドイツ・フランクフルトで開催される国際製造加工技術専門の見本市。Additive Manufacturing(AM、3Dプリント技術を指す言葉)業界における重要な展示会であり、世界の動向や最新事例を知ることができる。

イベントを主催したYOKOITOは3Dプリンターの販売事業をはじめ、AM技術を活かしたソリューションを提供する企業だ。2022年11月からは、3Dプリント造形物に対する研磨や塗装などの後処理まで含めたAMエコシステムを展開。ドイツに拠点を置くDyeMansionとパートナー契約を結び、国内AMの業界におけるポストプロセス活用を先導する立場でもある。

formnext 2023を訪れたYOKOITOのメンバーは、機材の多様化のみならず、ポストプロセスまで含めた産業としての成熟を感じたという。同社が分析した、世界のAM動向とポストプロセスのこれからの姿をお伝えしよう。

※記事中にあるformnext 2023の会場写真、およびスライド資料はYOKOITOに提供いただいたものです。

「すべてが大きい」formnext2023の会場紹介

まずはYOKOITO取締役CTO 深見公貴氏から、2023年11月7日から10日にかけて開催されたformnext 2023のレポートが行われた。

会場を訪れた深見氏のファーストインプレッションは「すべてが大きい」。日本の展示会とは規模の異なる、各ブースの大きさに驚いたという。会場となるメッセフランクフルト国際見本市会場内には、全体で860社ほどが出展。3Dプリントで作られた等身大のキリンや人が入って作業できるポッドのほか、会期中にリアルタイムで造形を行う建設用3Dプリンターの姿もあり、物理的な規模の大きさが印象に残ったという。

会場にはEU圏を中心に、アジア圏の参加者も多く見られたという。3Dプリンター本体のみならず、ソフトウェアやサービスビューロまで出展内容のジャンルもさまざまだ。

「既存の工法では作れないもの」として深見氏が紹介したのはこちらの2例。ゲルを用いて造形する「Rapid Liquid Print」は、学術研究から製品レベルに至った最新事例だ。3D Systemsのブースでは、半導体のウェハテーブルの造形事例を展示。製造時の熱を制御する緻密な内部構造には、金属3Dプリントという技法の成熟が感じられる。

AM SolutionsはSLS造形物のデパウダリング装置、XioneerはFFF/MEX方式用のリムーバブルサポートを展示。それぞれ異なる造形方式を対象としているが、共に3Dプリントのポストプロセスを効率化する装置だ。また、ドイツのmicro-factoryは、一つの機械で造形と後処理、後加工を完結させる機体のコンセプトモデルを展示しており、後処理段階まで見込んだエコシステムのさらなる充実を予感させたという。

YOKOITO取締役CTO 深見公貴氏

深見氏は「認証の取れた新規材料が登場したり、造形のスピードが上がっていたりと、あらゆる場面で着実な産業が進んでいます。主流となる造形方式はしばらく変わらないでしょうが、生産能力やユーザビリティは向上しており、フィニッシング装置が増えていることも印象的でした」と振り返る。

なにより、展示会場にはAMに対する寛容さが溢れていたという。ディテールに凝るよりも、「こういうことができるんだよ、すごいでしょ?」という雰囲気が漂っており、それが多くの出展者が集まる要因になっていると感じたようだ。

これからのAMは、製造フロー間の自動化が鍵を握る

formnext 2023で見た光景を元に、深見氏は今後のAM業界の動向を考察していく。

AM-FLOWの展示ブースに顕著だが、ポストプロセスまで含めた生産ラインが想定され、AMを用いた産業化に本腰が入り始めている。しかし、各社がそれぞれの規格で完結する想定でマシンを開発しているため、依然として製造プロセスは分断されており、その間を繋ぐためには「人の手」が必要となる。マシンのドア一つとっても、人の代わりにロボットでも開閉できるような仕組みでないことに違和感を覚えたという。

AM業界を取り巻くマーケットが大きくなる中で、データ処理はトポロジー最適化やジェネレーティブデザイン、後処理はポストプロセス装置の登場によって自動化が進んでいる。とはいえ、最終的な形状や仕様の決定は人が行わねばならず、後処理にもまだ人の手が介在するのが現状だ。

今の技術でカバーできる市場を適切に見定めつつ、人が関わるプロセスの自動化も見込む深見氏。今後のAM業界全体の生産性ブレイクスルーは、製造プロセスの間を結ぶFA(Factory Automation)が起点となって起きるのではないか、と分析を述べた。

さらに深見氏はAM業界の今後について考察を進めるなかで、既存の生産方式に対するカウンターカルチャー的な立ち位置であることを強調する。近年顕著な半導体不足の一因も、中国や台湾に製造が集中していたことが要因にあったと振り返り、小さな生産拠点が国も超えたネットワークを形成することで、物流の最適化がなされるのではと見解を述べた。

スライド中の画像出展:SOLIZEのWebサイト

「従来型の製造とAMにどう折り合いをつけるかが重要」と語る深見氏。その好例として取り上げたのが、トヨタ自動車とSOLIZEによる事例だ。LEXUS LC500の純正オプションパーツ「オイルクーラーダクト」は3Dプリンターで製造されており、「少量生産でのコスト課題をクリアしつつ、性能を最大限に引き出すための構造と安定した継続生産と品質を実現(SOLIZEのWebサイトより引用)」したという。設計プロセスや品質管理の方法など、従来型の製造プロセスとAMの導入の間にある差異がうまく折り合った事例として、今後を占うコラボレーションとなりそうだ。

世界的な潮流を見ても、カーボンニュートラルを実現するための適量生産において、AMには調整弁としての役割が期待されている。EUでのルール制定やアメリカのムーブメント創出、中東地域での研究開発や実践が加速する中、日本のAM業界における立ち位置も改めて考えていきたいと深見氏は締め括った。

PBFのポストプロセスをめぐる動勢

formnext 2023の会場でも見られた、ポストプロセスの充実ぶり。なかでも、PBF(Powder Bed Fusion、粉末床溶融結合法)方式における国内の課題点やソリューションについて、YOKOITO COOの菊池映美氏が紹介した。

YOKOITO COO 菊池映美氏

製品の品質が重視される日本では、3Dプリントの造形で生まれる積層痕が忌避されることも多い。かといって、表面処理を手作業で行うと多大なリソースが割かれ、手作業ゆえの再現性の低さも課題となっていた。PBF方式でも不要な粉末を取り除き、造形物を美しく仕上げることの難易度は高かった。

そこで登場するのが、機械によって後処理を自動化するポストプロセスシステムだ。オートメーション化によって再現性を高め、人的リソースも削減しつつ、射出成形品と同等レベルの表面品質を実現することも可能となる。

ポストプロセスの行程は主に下記の3工程に分類される。

  1. クリーニング:エアー噴射やサポート材の溶融などで不用物を取り除く。
  2. 表面処理:溶剤を造形物にまとわせるケミカルポリッシュや、粒子を吹き付けるサンドブラストなどで表面を均一にする。
  3. 染色:多様な選択肢の中からカラーを選んで染色する。  

日本でポストプロセス装置を手がけるメーカーはさほど目立たないが、世界では上記スライドのように複数の企業が登場しつつある。菊池氏によれば、樹脂素材のみならず、金属の3Dプリントに対する後加工装置も生まれているという。

なお、YOKOITOがパートナー契約を結び、国内総代理店を担当しているDyeMansionは、クリーニング・表面処理・染色の各工程に対応した4種の機材を取り扱っている。クリーニングシステム「Powershot C」、表面処理システム「Powershot S」、蒸気研磨システム「Powerfuse S」、染色システム「DM60」を必要に応じて選択すれば、要件に応じて品質を追求できる。すでにYOKOITOの拠点でもノウハウが蓄積されつつあり、イベント会場では「Powershot S」のオペレーターがその所感を質疑応答形式で答えていた。

PowerShot Sは造形物をバレルに入れて回転させながらクリーニングを行う仕組み。クリーニングに適したデザインのガイドを参照する他、繊細な造形物は上記写真左のカゴにいれて扱うなどの工夫が必要だ。クリーニングにかかる時間はおおむね10-15分程度で、プリセットの設定で様子を見つつ、仕上がりに応じて時間を追加するようにして使うという。

AMエコシステムを導くAM I Navigator

なお、DyeMansionはFormnext 2023において、Siemens、HP、BASF Forward AM、EOSと共同で「AM I Navigator」の構想を発表している。これはユーザーの業界や生産量に合わせて、造形方式や機材、ポストプロセスなどに適した選択肢を提案するソフウェアだ。開発の背景には、樹脂AMの成長に合わせて多様なシステムや製品が登場し、プロセスも複雑化するなかで、各ユーザーのビジネスモデルに最適なものが選びづらくなるという課題があったという。

AM I Navigatorはまだ構想が発表された初期段階ではあるが、可能な限り多くのAM機材やソフトウェアの情報集約を目指すという。ポストプロセスまで拡張したAMのエコシステムにおいては、こうしたサポート環境も重要性を増していくのだろう。

菊池氏「YOKOITOの業務の中でも、お客様から『何を使えばいいかわからない』『そもそもAM機材を導入する必要があるのか』と相談いただくことがあります。AM I Navigatorが機器選定から導入後の一元管理まで可能なソフトウェアとして製品化すれば、AM導入のストレスや不安が減少し、国内でもさらに普及が進むと感じました」。

まとめ

DyeMansionのポストプロセス装置を用いた造形物

DyeMansion本社訪問の報告や、参加者同士の交流も行われたイベントの最後には、YOKOITO 代表取締役の中島祐太郎氏が登壇。「日本は3Dプリントのクオリティに関する議論が起こる割に、ポストプロセスに注目されないことが疑問でした。formnext 2023に足を運び、フィニッシング技術は既に実用レベルに達しており、機材価格も落ちて普及しやすくなっていると感じられました」と語り、DyeMansionとのアライアンスを生かした実用化を進めていきたいと意気込んだ。

YOKOITO 代表取締役 中島祐太郎氏

経済的にAMがどのような役割を果たし、世の中がどう変化するかにも着目する中島氏。人口や経済が縮小局面に進む日本において、大量生産の道に向かうのではなく、減少するパイの中でいかに生産性や付加価値を上乗せしていくか——そんな課題に対し、ポストプロセスも含めたAMというツールから新しい価値が生まれるきっかけになればと、この日のイベントを締め括った。

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記者/ライター

1992年生まれ。大学で3Dプリンタに出会いものづくりの楽しさを知り、大学院・研究員を経て独立。テック/ものづくり系の取材を中心にライターとして活動中。

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