特別天然記念物『オオサンショウウオ』の3D標本を全国初公開-JMC
株式会社JMC(以下、JMC)は、大分県宇佐市からの依頼により、国の特別天然記念物に指定される『オオサンショウウオ』のCTスキャンを実施し、CTスキャンデータを掲載するWEBサイト『CT生物図鑑』で3D標本や画像を公開したことを発表した。(写真はJMC Webサイトより引用)
JMCが運営するCT生物図鑑は、産業用CTスキャナで3Dスキャンを行った生物のデータを公開しているWEBサイトである。今回はオオサンショウウオの標本化を通して、3D標本の魅力についてご紹介したい。
生きた状態に近い骨格を見れる3D標本の魅力
特別天然記念物のオオサンショウウオは、個体を触るのにも許可申請が必要であり、骨格標本を作る際には骨がバラバラになってしまうため、実際の形態の通りに骨格標本を組み上げることは極めて困難であった。3D標本では、実際に生きているときの状態に近い骨格の様子を見て取ることができ、現場に立ち会っていない人間とも情報をシェアできることが、最大の特徴である。特に骨のデータは通常の骨格標本では見ることの出来ない細部まで瞬時に拡大観察でき、さまざまな角度からその詳細を観察することが可能となっている。
今回、オオサンショウウオの外観形状と骨格の2種類の3D標本や、体の内部構造を映し出した断層画像などを公開。3D標本は、パソコンやスマートフォンなどのデバイス上で、オオサンショウウオの体をマウスやタッチ操作など感覚的操作で動かすことが可能だ。
今回の標本化で判明したこと
今回、産業用CTスキャナで3Dスキャンして標本化し、非破壊的に標本が抽出できたことで大きく3点判明した。
(1)消化管の内容物がはっきりと確認できたこと
(2)頭部下顎部の骨折が判明したこと
(3)鋭い鋤骨歯が確認できたこと
オオサンショウウオに関する研究者や関係者の方のコメントは、以下のサイトに掲載されているのでご覧いただきたい。
産業CTとは
産業用CTとは、物体を透過する性質を持つX線を使用して被写体をスキャンすることで、被写体の形状を三次元情報として取得する技術である。産業用CTの技術は、工業製品の非破壊検査やリバースエンジニアリングから、文化財や生物の三次元測定など、幅広い用途で使用されています。JMCは、産業用CTスキャナを使用した検査・測定サービスを提供している。
3D標本の今後の活用について
謎の多い特別天然記念物オオサンショウウオの生態解明謎の多いオオサンショウウオの研究に活用することはもちろん、教材活用としても検討されている。『道の駅いんない』や『安心院ぼんちギャラリー』などの宇佐市内施設において、3D標本展示や観察会の実施や、市内の小中学校にて、生物多様性の学習や3Dデータの仕組みを学ぶための教材として、タブレット端末を利用したICT学習等への活用を計画中とのことだ。
広島大学総合博物館 准教授 清水則雄氏はオオサンショウウオのCTスキャンという取組みの面白さと可能性について以下のようにコメントしている。(一部抜粋)
国の特別天然記念物であるオオサンショウウオは許可なく触れることさえできない希少動物ですので、その形状や骨格に触れ合うことはなかなかチャンスがないかと思います。このようななかでCTスキャンデータから2色モデルを出力し、ハンズオン展示や授業などで利用することは実際に目で見て、手で触れる体験型教育を通じた理解の増進に役立つと思います。近年、医療用の3Dプリンターで見られるようなゴム系プリンターにて肌の触感を忠実に再現することも可能かもしれません。
コメントの全文は下記ページを参照
https://ctseibutsu.jp/data/giant_salamander_comments.html
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