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「無茶ぶり」をCTスキャンとデータモデリングで解決してきた会社-株式会社RPV

2020年1月29日から3日間に渡り、東京ビッグサイトで開催される国内最大級の3Dプリンティング & AM技術の総合展「TCT Japan 2020」。ShareLab(シェアラボ)編集部は同イベントのメディアパートナーとして事前情報をお届けしていく。

AMの良さを活かした設計を行うと、どうしても目視では確認できない構造にたどり着く場合がある。微細多孔の数を数えるわけにはいかないし、ゆがみを一目でみることはできない。密閉形状を都度破壊して内部を確認するわけにはいかない。

そこで重要になってくるのが非破壊検査に対する取り組みと設計データとの突合だ。 株式会社 RPVはそんな非破壊検査のスペシャリストとして、自動車メーカー、航空機メーカーから支持されている専門会社。

複数のX線CT装置で計測したデータをいいとこどりして、設計データにぶつけるところまでサポートしているという。今回のTCT Japan 2020での見どころと合わせて、同社の活動を株式会社RPVの三島一夫氏に伺った。

* * *

――RPVさんをご存知ない方のために、自己紹介をお願いします。

私たち 株式会社RPVは、非破壊検査を中心に、3Dモデリング、3Dデータエンジニアリングを受託サービスとして行っている熊本の会社です。社内には複数のX線CTの装置を導入しており、目的に合わせてデータを合成し見える化することで、技術者が課題の方が見てわかるデータをご用意していく取り組みを行っています。

X線CTとリバースエンジニアリングで技術者にも示唆を与えるデータを作っていく(提供:RPV)

もともと、あるメーカーで検査工程を10年以上担当していた創業メンバーが独立して5年前に創業した会社ですが、非破壊検査や検査工程に対する知見をもとに、業務を拡大してまいりました。

――データを合成する、というのは、どんなイメージなのでしょうか?

X線CT装置もいろいろ種類がありまして、形状をスキャンすることに向いている装置、内部欠陥をスキャンすることに向いている装置など得意分野があります。一方で、形状をスキャンできるCTは内部品質の確認には不向き、小さな欠陥がわかるCTは形状をうまく出せないといった不得意もあります。

産業用X線CTスキャナといっても装置の出力や特性により計測データが異なる(提供:RPV)

私たちは計測するワークに合わせて、複数のCTで測定したCTデータを合成して、「いいとこどり」したモデリングデータをカラーマッピングしてご用意しています。

CTデータを合成して「いいとこどり」した3Dモデルを設計データと形状比較(提供:RPV)

――設計したものと造形したものが、どこまでが同じで、どこに相違があるかわかるようにしてくれる、ということでしょうか?

はい。3Dデータのエンジニアリングの一環で、設計データとの差異に色を付ける、ということも勿論できます。どこが設計データと違うかをカラーマッピングして可視化することで、技術者が課題の解決となる手法を導き出すヒントが得られることも多々あります。金属3Dプリンターで造形したもの特有のパウダー残りの程度を確認したい、などのご要望にも対応してまいりました。

その中でも一番喜んでいただけているのが、複合材の解析です。

X線CTは原子番号が大きくなるほど、通りにくくなります。アルミ、軽合金、樹脂、ゴムなど、異なる材質でできたものを組み合わせて作られた部品を、スキャンして材質ごとにデータを分けてほしい、などのご相談に対応しています。「ここまで細かく対応してくれるのは御社だけだった」とお褒めの言葉をいただけるとこの仕事をやっていてよかったと思います。

――言葉にすると簡単ですが、複合材のスキャンはノウハウも必要でしょうし、手間もかかりそうですね。腕っぷしを感じるエピソードありがとうございます。主にどんなお客さまが多いのでしょうか?

自動車関連、航空機関連、車載機器関連の研究・開発部門の方からのご相談が多いです。これは弊社が持っている装置にもよるところがありまして、測定できるサイズが直径500㎜、高さが600㎜程度のもの、素材の分厚さもSUS系でいえば30㎜から40㎜以下でないと精度の高い検査ができません。ですので大型の金型などを検査したい等のお引き合いも、多くいただくのですが、大型のCTで対応可能な場合もありますが、高額な費用等を含めるとあまり現実的でない旨をお伝えしています。

測定設備を各種取り揃えている(提供:RPV)

研究・開発部門の方からのご相談は、私たちも経験がないものも多く、お客様と一緒に知恵を絞りながら対処していくものも多いです。熊本にある弊社オフィスにお客さまが1週間ほどいらして、一緒に机を並べてこんなデータが必要だ、と一緒に共同作業することもあります。シミュレーション用のデータなどの場合、私たちもどこまでのデータをご用意すればよいかわからないので、すり合わせしながら、一緒にデータを作りこんでいくという取り組みも行ったことがあります。

――もはや共同研究ですね。守秘義務もおありかと思うのですが、いままでどんなものを計測されましたか?

自動車のターボチャージャーのハウジングを金属3Dプリンターでつくったが、図面通りか確認したい、熱交換機を3Dプリンターで作ったが、冷却水がスムーズに流れるか、パウダー残りがないか確認したいなどのご相談には対応してまいりました。

試作して、その検証を行う。どこに改善可能な個所があるか検討していくためのデータづくりですね。一方で、航空機のエンジン部品のように3Dプリンターが最終製品として使われる場合は、抜き取り検査として弊社にご依頼が来る場合もあります。作る手法も含めて、一緒に検証サイクルを回し続けたいというお客様に応えていく事が多いです。

――変わったご相談なんかもあったり?

そうですね。3Dプリンター関連でいうと、3Dプリンターが造形シミュレーションにおいて、どの経路で造形するのがよいか検証していきたい、というご相談もいただいています。私たちも15年以上この仕事を専門でやっているのでノウハウの蓄積はあるのですが、それでも未知のご相談というものは多いですね。

――なるほど。無茶ぶりに対応し続けた歴史がノウハウの蓄積につながったんですね。それでは最後に今回のTCT Japan 2020での見どころ、意気込みを教えてください。

ブースには、CTスキャンして見える化された合成データなどのご説明パネルもご用意しています。またパソコンとモニターを持っていきますので、お客様に合わせたサンプルを、その場でお話しながらご覧いただきたいと思っています。 

日々「できそうもない課題」をぶつけていただき、地道に解決していく仕事をしています。世間話のように気軽に困っている事をぶつけていただけると、一緒にとりくめる方法をご提案できるかもしれません。是非ブースに立ち寄ってこんなことに困っているんだけれど、やったことある?という感じで聞いてください。

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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