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まだまだあった!TCT Japan 2023の見どころ報告 ― TCT Japan 2023 レポート第3弾

毎年行われる様々な展示会だが、参加する出展企業の顔ぶれやブース構成が異なるため、イベントごとに表情が異なる。ShareLab(シェアラボ)編集部ではTCT Japan 2023のレポート第一弾第二弾をお届けしてきた。今回は最終回として今までご紹介できなかったが、きらりと光った展示や気になるトレンドをご紹介していきたい。(写真はCASIOのG-SHOCKの40周年記念モデル。金属技研ブースで展示)

>>速報! TCT Japan会場で見つけた最新トピックス ― TCT Japan 2023レポート第1弾

>>海外発の新工法から金属3Dプリントの後処理まで ― TCT Japan 2023レポート第2弾

必見!AM活用でこんなユーザー事例が続々登場

国内で金属AMに取り組むサービスビューロは、着実に成長を続けている。数年前は撮影不可、具体的な導入事例は社名非開示が多かったものだが、今回のTCT Japan 2023では、魅力的なプロダクトに最終部品として採用されている取り組みが、クライアント名と共に公開されているケースも増えてきた。素人目にもわかりやすい魅力的なプロダクトから、独自の存在感を発揮するAM工法の浸透を感じる。まずはそんな魅力的なユーザー事例をご紹介していこう。

日本刀をオマージュ!刀身の刃文を時計に表現したCASIO ― 金属技研

EBM方式のAM造形機をはじめ、複数台のハイエンド金属AM装置を導入する他、世界最高峰のHIP(熱間等方向加圧加工)処理設備と技術を持つことで、存在感を発揮する金属技研のブースでは、CASIOの時計ブランド「G-SHOCK」の40周年記念モデルが展示されていた。最上位モデルMR-Gの限定モデルという位置付けで、刀匠とコラボした世界限定500本生産の逸品だが、特徴的なのは、ベゼルに顕れた波うつ模様「綾杉肌」だ。

金属AMでチタンとチタン64を組み合わせて波のような模様を持つ筒を造形した後に、ベゼルを削り出す。その後にHIP処理と化学処理を行い、刃独自の青みがかった鉄の色を表現しているという。気になるお値段は、1本90万円越えと高価格だが、世界のラグジュアリー時計市場の中では手が届きやすい価格でもあるわけで、趣味性の高い高級時計市場でのAM活用の可能性には期待したいところだ。

レース用車両のうねる吸排気配管を一発造形 - NTTデータザムテクノロジーズ

レース用の自動車には金属AMが活用されてきたわけだが、実際に使用されたエンジンを見るとやはり迫力がある。NTTデータザムテクノロジーズのブースでは、柴田自動車のレース車両に採用されたエンジンが展示されていた。給排気用の配管であるインテークマニホールドとエキゾーストマニホールドを金属AMで造形した。ドリフトカー用エンジンと言うことで、太いトルクを求められることもあり、吸排気用配管も太目。

流体である空気をいかに抵抗なく通すかが問われるため、流体力学を駆使したシミュレーションで形状を設計していく。エンジンの形状に合わせて流路を決める必要があるため、従来は複数パーツを溶接していたが、金属AMで一体造形することで、堅牢性と工程圧縮を実現しているという。

レース用車両と言えばバイクも忘れてはいけない。レース仕様のバイクの吸排気配管にもAM技術は活用されている。写真は同じくNTTデータザムテクノロジーズのブースで展示されていたNTSの車両。矢印マークがついている箇所に採用されている。

注目するべき技術的アップデート

やはり技術のアップデートは気になるところ。最新技術を駆使した装置・ソフトウェアや進化した加工技術をいくつかご紹介していく。

金属AM+鋳造のハイブリッド工法で低コスト、ハイパフォーマンスを実現 ― 日本積層造形株式会社

従来工法を活かしたAM活用という意味では、日本積層造形株式会社(JAMPT)の展示も大変興味深かった。参考展示としてパワー素子の冷却板が展示されていたが、銅の放熱フィンをAMで冷却効率が最大化できるように造形したうえで、鋳造部品と組み合わせるハイブリッド造形を行っているということだった。

金属AMは材料費もたかければ、装置のマシンチャージも高い。鋳造の方がコストは安価だ。両社の良いところを活かした取り組みということで、性能や堅牢性は必要だが、レース用や航空宇宙といった一品ものよりは数がでるしコストも抑えていく必要がある産業用装置での最適解を目指しているように見受けられた。資本関係もあるコイワイが鋳造を担当したというが、既存の強みを活かした用途開発こそ商売につながる好例だろう。

Zotraxからヘッド温度が500度のFDM方式樹脂3Dプリンター登場

Zotraxの新型機Apium 400を紹介してくれたシステムインナカゴミの長田氏

シェアラボでも先日トヨタの海外法人の治具製造で使われていることを紹介したZotraxだが、最新機種Apium P400は材料を溶融するヘッドの温度が500度と非常に高温で、スーパーエンプラに対応している。日本で総代理店を務めるシステムインナカゴミの長田氏もスーパーエンプラを手軽に造形できる装置に自信をにじませ笑顔で紹介してくれた。

新技術開発の隠れた主役たち

3Dプリンティング・AM技術に関する研究は企業の中だけで行われているわけではない。大企業のように専門の調査分析や研究開発部門を維持できない中小企業も多いことだろう。そんな中でもR&Dを行う手段が大学などとの産学連携や産総研や公設試への委託研究の取り組みだ。

先日、東大で行われたAMシンポジウムでも、東京都立産業技術研究センターと東大との間で技術交流が盛んにおこなわれている様子や、民間企業の3Dプリンターの造形速度を10倍にする研究に取り組んでいるとの報告があった。

AM分野でも盛んに取り組みが行われている。公設試が独自に予算をつけて研究を行っているものもあれば、企業からの委託研究もあるということだったが、興味深い取り組みがTCT Japan 2023 の場でも複数公開されていた。

レーザーでもAM造形できる銅合金のレシピを開発

ダイヘン三井金属鉱業と共同で銅合金のAM造形に取り組んだのは、大阪産業技術研究所3D造形技術イノベーションセンターだ。特許も取得したということだが、銅合金を材料開発しレーザーでも造形できる造形レシピを開発したという。「銅は熱や電気の伝導性に優れる特性からAM分野でも注目されています。当時はレーザーで加工する難易度が非常に高かったのですが、銅合金として材料開発することで、造形できるレシピを開発できました。」(3D造形技術イノベーションセンター 内田氏)

銅合金を加熱処理することで、伝導性を高める加工処理方法を研究した事例の展示もあった。

驚くべきことに、金属を太いストロー状に加工した筒の中に金属球を転がすと、出てくる時間が大きくことなる。伝導性が高まり磁力が発生しているためだという。科学の実験のように見学者に「へー」と言わせる工夫も面白い。

考えさせるきっかけこそが、用途開発に必要だ。その要諦を押さえた展示だったようにも思う。

トポロジー最適化のアルゴリズム開発

普段はソフトウェアのもつ機能として触るだけであることが多いと思うが、トポロジー最適化のアルゴリズムも誰かが開発したものだし、研究は世界各地で行われている。2022年11月にドイツで行われたフォームネクストではEOSなどの金属造形装置メーカーがサポートレスの効能を大きく打ち出し話題を集めたが、設計データの自動最適化技術はAM関連産業の中でも注目分野。もちろん日本でも研究に取り組んでいる人たちがいる。 3D造形技術イノベーションセンターの三木氏もその一人だ。

「設計の最適化のためのアルゴリズムを開発しています。最適化は複数の目的の場合でも実行可能です。最適化は個別にチューニングすることもできます。ぎりぎりまで作りこみを行えば、サポート材をゼロに近づけることもできるでしょう。ただ計算に必要な機材のスペックや計算時間とのトレードオフになります。」

こうした研究者を自社に雇い入れることは難しい。しかし研究を委託し、技術相談することはどんな企業に対しても門戸が開かれている。こうした専門家との出会いを会場で見つけることができる点こそ、展示会の醍醐味だろう。

サステナブルへの取り組みは日本でも無視できない要素に ― テュフズードジャパン

環境性能という言葉もあるが、CO2排出量や海洋性プラスチック問題などの環境負荷を低減させる努力が大企業の社会的責任とみなされる時代になっている。

「複数の大企業の経営層が時間をかけて全材料をサステナブルな材料に置き換えていくという意向を示しています。コスト面の問題もあり、簡単な取り組みではありませんが、必要な取り組みです。」と語るのはAMの規格化をドイツでけん引したテュフズードの日本法人テュフズードジャパンの畝氏だ。

コストに大きく響くため、その時間軸は10年単位となるだろうが、それだけに、今から段階的な取り組みのロードマップを想定しておく必要があるだろう。

こうした大企業の取り組みは、材料や部品を納入する中小企業にも波及するわけで積極的な提案が商機につながる時代でもある。エヌシーアイ販売のブースでは海洋性プラスチック問題に貢献する、海水でも分解できる酢酸セルロースを含んだ樹脂材料などが展示されていた。材料置換を本格的に検討している企業は、サステナブルな環境性能の高い材料評価に取り組み始めているということで、展示会ブースでも本格的な相談を話し込む姿も見受けられた。

海洋性プラスチック問題は、食器やコンビニのレジ袋だけではない。世界で使われる製品の中でまったくプラスチック部品をつかわない製品はごく少数。その製品はいずれゴミとして廃棄されるが、海に流れ込むゴミの量が無視できないためこうして大きな問題となっている。関係がない業界の方がすくないはずだ。

しかし直近すぐ導入しようとしても、「従来材料と同等の性能か」という設計上の問題と、「同等の単価、安定供給を実現できるか」という調達面での壁が立ちはだかる。利用量の母数が少ない現状では製造量も伸びないため、既存材料と同じ評価軸でコストを考えると採用が相当厳しいはずだ。

三井化学やアサヒビール関連会社などが、アップサイクルを切り口に試験的な取り組みをプレスリリースしながら、社内実績を徐々につみ上げている。まずはESG経営向けのブランディング予算を狙った企画提案などを行っていくなど、社内実績を積み上げていくところから始めるのが現実的かもしれない。

日々進化するAM業界のトレンドを追いかけるために

展示会は数時間で業界のトレンドや進化を体感できる機会だ。多くのブースから自身の課題に即した展示を見つけて触発される空間でもあるが、情報を集めた次の段階は、実際に相談しながら簡単な概念検証を行ってみることだろう。自社に即した予算感や規模感で小規模な実験を繰り返しながら、最適なチームを作っていくことが必要になってくる。設備や人員のすべてを自社で賄おうとすると負担が大きいが、企業秘密でない基礎研究やTipsを情報交換しながら取り組みをスピードアップさせていく必要があるだろう。

展示会では横のつながりを育成するのが難しい側面もあるが、オンラインのコミュニティなども立ち上がり始めた。2023年3月には日本最大級の3Dプリンター、AM関係者のコミュニティ・イベントJAMM(Japan Additive Manufacturing Meetupの略)も再始動した。オンラインでセミナーを受けた後に、参加者相互に会話する形式で業界内の横のつながりを育成していこうというMeet Upに対して、馴染みのない方も多いだろうが、日ごろ自分が疑問に思っていることを、業界関係者に相談するというのも立派な参加の方法だ。(ShareLab編集部も今回から運営側として参加いたします。見かけによらず、結構ナイーブなので、優しく声をかけていただけると大変心が休まります。)

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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