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北米最大の3Dプリント製軍事兵舎が誕生

米テキサス州バストロップ郡に、北米最大の3Dプリント建築物が完成し話題になっている。

建築を担当したのは米テキサス州の州都オースティンに拠点を置く3Dプリント建設企業のICON。広さ3800平方フィート(約167.22㎡)の平屋建てバラックで、収容定員72名まで可能。同社の次世代建設システム「Vulcan(ヴァルカン)」と、米軍のテキサス州軍部(TMD / Texas Military Department)とのパートナーシップにより開発された独自素材「Lavacrete(ラヴァクリート)」を使用して建築された。

建築背景

テキサス州少将兼准将のトレイシー・ノリス氏によると、テキサス州は「国内の技術的重力の中心になっている」という。実際、ICON社だけでも、テキサス州の本社で次世代構造物を3Dプリントし世界的に有名になっている。ShareLab NEWS で紹介したNASAの火星移住計画で1,700平方フィートの模擬火星居住施設構造「Mars Dune Alpha」を3Dプリント建築でも ICON社の Vulcan が採用されており、大きな話題を呼んでいる。

ゼロエミッション技術を用いたイスラエルのe-モビリティ企業 REE のアメリカ支社の進出や、大手コンピューターメーカーのヒューレット・パッカードがカリフォルニア州から移転してくるなど、テキサス州はまさに先端技術の中心地へと変貌しつつある。

そんなテキサス州に、北米最大の3Dプリントの建築物が完成した。

米軍は国内外の兵士が必要とする安全で強固、かつエネルギー効率の高い兵舎を必要としており、迅速かつ自由な設計で製造するため、ICON社の3Dプリンター独自技術を活用することを選択。ICON社は米軍の要求をかなえるため、兵士が訓練中に安全で快適な場所を提供するだけでなく、コンクリートで建造することで、何十年も使用できるよう頑丈なつくりを実現している。今回のプロジェクトは、ICON社にとって初めての軍事利用ではないが、TMD との共同プロジェクトとしては初めてである。

今回建築される兵舎は、災害救助や自然災害時の対応、物資などの大規模な輸送まで州兵が最前線で活躍するために活用される。

なぜ3Dプリンターで建てられたのか

本プロジェクトは、設計を Logan Architecture社、構造設計を Fort Structures社が担当。従来の建物よりも長持ちし、持続可能で弾力性も併せ持つ、エネルギー効率の高い住宅を提供することを目指し、3Dプリンターの技術を採用した。この施設は今後、テキサス州最大の陸軍訓練・積み替えキャンプであるキャンプ・スウィフトに出動するテキサス州陸軍国家警備隊の施設として活用予定だ。

TMD と AFWERX(米国空軍の社内イノベーションインキュベーター)は、建設規模の3Dプリント技術を用いて「未来のバラック」を作ることを目指している。

現在、この3Dプリントプロセスは、前方展開された場所で施設を3Dプリンターで建造し、時間、コスト、建設リスクを削減する可能性のある遠征ソリューションとしての適合性が試されている。

兵舎のインテリア
3Dプリンターで作られた兵舎の中の様子(出典:ICON)

独自技術VulcanLavacreteとは

この3Dプリントされた訓練用施設は、TMD とのパートナーシップにより、ICON社の次世代建設システム「Vulcan」と独自の材料「Lavacrete」を使用して作成された。

Vulcan とは、ICON社の次世代建設システムで、精密かつ迅速な大量3Dプリントのために一から設計・デザインされている独自3Dプリンター技術である。最大5000平方フィート(約465平方メートル)の住宅や構造物のプリントが可能なこのロボット建設プラットフォームは、従来の方法よりも廃棄物が少なく、デザインの自由度が高いことが特徴だ。また、従来の建設に比べより速く、より低コストで軍の兵舎を建てることが可能に。それにより、米軍は自然災害からの早期復興に向けて、地域社会を支援するインフラを構築できる。

Vulcan(出典:ICON)

Lavacrete とは、独自開発されたポルトランドセメントをベースにした混合材で、コスト効率の高い住宅建造を可能にしている。圧縮強度は6,000psiで、既存の建築材料の強度をはるかに上回っている。

3Dプリンターで製造する工程

ICON社の公式 YouTube では、3Dプリンターで建築される工程を動画で紹介している。規模感やそのスピード、そして建築物の中の様子もわかりやすく紹介されているので、ぜひご覧いただきたい。

TMD によると、今回建設された兵舎は兵士の通常訓練用で、早ければ今年秋から利用を開始するとしている。バストロップにあるキャンプ・スウィフト・トレーニングセンターで、テキサス州や海外での任務に向けた軍事訓練中の女性や男性を最大72名収容する予定だ。

以下、今回のプロジェクトにおける TDM と ICON社のコメントを記載する。

このバラックは、兵士たちに安全で快適な居住空間を提供するのみならず、非常に優れた耐久性を持っています。通常のバラックと違い、今後何十年も使い続けることができるでしょう。

TMD ゼバディア・ミラー氏

ICON社は高品質で丈夫な建物を、ソーシャルハウジング、災害被災者用住宅、一般住宅、公共建造物などの用途に作り続けていきます。(建設3Dプリンティングという)テクノロジーを、テキサス州から全米に、そして、最終的には全世界へ拡げてゆきます。これは、建設の世界におけるパラダイムシフトの始まりなのです。

ICONの共同創業者のエヴァン・ルーミス氏

建築業界で進む3Dプリンター活用事例

今回のケースのように、建設業界での3Dプリンター事例は年々増えてきている。
そんな世界の事例を ShareLab NEWS 編集部では独自にまとめて記事を公開している。実際に現地に訪問した取材レポートや世界の事例まとめなど、建設業界の情報をわかりやすくまとめているので ぜひご覧いただきたい。

【取材レポート】『建設用3Dプリンター』の社会実装に向けて。ポリウス×前田建設工業による共同実証実験

実際の造形の様子。ノズルからモルタルが射出されている様子を見て取れる。(写真は、ポリウスより提供)

実施工を行うことを通じ『建設用3Dプリンターの社会実装』に向けた歩みを、より加速していくことを目的に前田建設工業が保有する、茨城県取手市のICI総合センター敷地内ICI CAMPにて実施。UI、ハードなどさまざまな側面に配慮が行き届いた建設用3Dプリンターの紹介や今後の取り組みについてご紹介

【事例まとめ】世界中の建設業界で進む3Dプリンター活用

建設業界イメージ

近年、中国をはじめとした世界中で建設業界でスケールの大きい3Dプリンター活用のニュースが流れている。 そこでその辺りの事案に関心のある方にむけて、ここ3~4年の記事をまとめてみた。

【事例まとめ】大林組、宮内庁など事例あり!建設業界の3Dプリンター活用最前線に迫る

建築の世界における、3Dプリンター、AM技術の活用が活発だ。建築業界での「3Dプリンター活用最前線に迫る」と題して、国内、海外問わず活用事例をお届けする。

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シェアラボ編集部 | + posts

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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