【速報】JIMTOF2022!東京ビッグサイト南館のAMエリアの熱気
コロナの影響もあり、3年ぶりに開催されたJIMTOF2022(第 31 回日本国際工作機械見本市)。予想通りの盛況な人出となっている。本丸の工作機械コーナーは東京ビッグサイトの東館、西館では例年通りの大規模な出展が繰り広げられており、アテンドの説明員も捕まらない状態。遠目に見るだけでも楽しめるが、ちゃんと説明を聞くためには10分以上待たなくてはいけない。
今年から新設されたAM(アディティブ・マニュファクチャリング)エリアには59 社 173 小間の出展。東館から離れた南館での開催ということもあり、きちんと説明をしてもらいながら最新技術に触れることができる丁度良さが良かった。最新情報を頭に入れたい人はAMエリアから足を運ぶのもよいかもしれない。そんなJIMTOF2022 AMエリアの見どころを一部ではあるがご紹介していこう。
目次
- 1 DMG森精機 | AMへの真摯な取り組み姿勢を感じる
- 2 ソディック | 稼働実機のデモンストレーションも!
- 3 松浦機械製作所 | 補足資料もわかりやすい良展示
- 4 村谷機械製作所 | 大阪大学と取り組むブルーレーザー機の実演も実施
- 5 芝浦機械 | すこし未来のAM現場
- 6 桜井製作所|ひときわ目立つFDM方式の大型3Dプリンタ―
- 7 ホッティーポリマー | 新型シリコーンゴム100%の3Dプリンタ―
- 8 エイチ・ティー・エル(HTL) | 英軍に採用実績がある金属3Dプリンタ―
- 9 BMF Japan | ミクロンレベルのAM造形
- 10 シーメット | 唯一の国産砂型3Dプリンター
- 11 シーフォース | 幅広い材料に対応する光造形方式3Dプリンタ―
- 12 ファソテック | ロボットアームとの組み合わせ
- 13 3D Printing Corporation | 事例も多数展示
- 14 イベント・展示会の関連記事
DMG森精機 | AMへの真摯な取り組み姿勢を感じる
ブース内では、装置内にAM機能を持つ多機能機とPBF方式の金属AM専用機の2種類が紹介されていた。ユーザー企業の取り組み事例がパネル、造形事例、動画で紹介されており、すでに装置を利用して新しいモノづくりを行っている企業がいることを打ち出していた。工作機械全体からみるとAM技術の位置づけは、まだまだこれから、のようだが、DMG森精機はきちんとAM部という組織も置き、しっかりと取り組んでいることが伝わってくる。
ソディック | 稼働実機のデモンストレーションも!
稼働する金属3Dプリンタ―の実機展示もされていたソディック。独自開発したSTR工法を用いてるのが特徴で、造形時に発生する応力による反りを軽減するため、一定の層を積層後熱加工を行う。精密な金型をAMで造形できることが伝わってくるサンプル造形物も展示されていたが、実機があれば付帯設備も気になるところ。希ガスと思われるボンベががあることは見えたが、大掛かりな設備は他には見当たらなかった。また装置の後ろに回っても熱や臭いは感じられない。装置内での安全確保がきちんとされていることが伝わってきた。
松浦機械製作所 | 補足資料もわかりやすい良展示
DED方式の金属造形と切削加工が可能なハイブリッド造形機を展示していた松浦機械製作所。実機も展示してあり、サンプル造形も行われていた。それに加え、ブースの外周ではAM造形のプロセスを紹介し、ブースの内部ではユーザー事例を紹介する構成になっていた。サンプルを見るだけではわからない課題感や解決へのアプローチが端的に解説されており、非常にわかりやすい。造形物とデータの差異に関するデータシートなどの補足資料も、ユーザーが本当に知りたいことを把握している展示内容となっている。
村谷機械製作所 | 大阪大学と取り組むブルーレーザー機の実演も実施
溶接技術を応用したレーザークラッディング装置が展示されていた。すでに商用リリースされている装置(ALPION Series)以外に、大阪大学のレーザープロセス研究で実際に活用されている青色半導体レーザーを搭載した加工機を2台展示していた。3台とも稼働できるモデルということで、実際に加工している様子も実演があり、大阪大学で青色半導体レーザーを用いた加工を研究するメンバーが丁寧に説明を行ってくれた。
「光の反射率が高い銅はレーザーでの加工が難しい材料です。銅は赤味のある色をしています。近赤外線領域の波長を用いる現在主流の装置では,レーザーが反射してしまい銅に対する吸収率が低く,加工が難しいです。そのため、グリーンレーザーやブルーレーザーでの加工が有効です。ドイツなどを中心に取り組まれているグリーンレーザーは装置が大型化する傾向にあるのですが、ブルーレーザーは小規模な装置でも実装が可能なので、将来的にコスト面で有利になります。ブルーレーザーの方が銅に吸収されやすく、造形の効率が良い点もあって、研究を進めているところです。」(大阪大学 接合化学研究所 レーザープロセス学分野 博士前期課程:高澤悠馬氏)
大阪大学は、NEDOのプロジェクトを通して世界で初めて青色半導体レーザーを用いて純銅を積層造形できる3Dプリンターを開発している、同分野でのトップランナーだ。開発の苦労を聞くと「レーザーに関することは、困ったことがあってもスペシャリストが研究室内にいるので、何とかなります。ですが実験を進めていくと粉末材料が供給管に詰まったりするのですが、こうした部分は手探りで解決していく必要があるので、試行錯誤の連続です。」(高澤氏)と語ってくれた。
要素技術を詰め合わせて装置として動作させるためには、多くのノウハウが必要だということが改めて伝わってきた。それだけに、こうした試行錯誤こそ次世代のモノづくりの競争優位となるはずだ。大阪大学と取り組むブルーレーザーのクラッディング装置は受注生産で注文も可能だという。
芝浦機械 | すこし未来のAM現場
2本の腕を持つロボットが、芝浦機械製の金属3Dプリンターからワークを取り出し、3次元測定機にセットするというデモンストレーションが行われていた。3Dデータをもとにデジタルなモノづくりが行われ、試験まで自動化できるという姿は未来の製造現場を垣間見できるよい機会となった。まだ同ロボットについては参考出展ということだが、具体的な案件相談があれば対応できるところまで技術的には熟成が進んでいるとのことだった。造形装置はTRAFAMプロジェクトで培った技術を用いて自社開発したDED方式の金属3Dプリンターを展示していた。
桜井製作所|ひときわ目立つFDM方式の大型3Dプリンタ―
FDM方式の大型3Dプリンターを展示し一際目立っていたのが桜井製作所。500cm角の造形が可能な大型装置「HERO500」はフィラメントの乾燥管理機能を保有しており、樹脂だけでなく金属フィラメントも対応可能。写真は、参考出展として初参上となる同じくFDM方式の大型3Dプリンター「HERO1000」、1m角の造形が可能になる。
ホッティーポリマー | 新型シリコーンゴム100%の3Dプリンタ―
今回のJIMTOFで初出品となるホッティーポリマーが展示する樹脂3Dプリンタ― SILICOM(シリコム)。材料押出法の一種であるLAM方式という液体積層造形法を採用しており、液状のシリコーンゴムをエクストルーダーで押し出し積層造形する。医療のトレーニングモデルや模型などの用途での活用が期待される。特徴としては、少ない積層跡とホッティーポリマー社の独自開発したAI搭載のスライサーソフト。学習データを蓄積させていくことで、自動で造形物のスライスの最適化ができるようになるとのこと。同製品は2023年春に発売予定。
エイチ・ティー・エル(HTL) | 英軍に採用実績がある金属3Dプリンタ―
2m以上の大型造形ができる金属付加造形が可能なRPM社、余熱することでサポートレスで精密な造形ができるAconity社と並んで工業用3Dプリンタ―の販売をおこなう株式会社エイチ・ティー・エル社が推していたのが、イギリスのWayland社のCalibur3。
電子ビーム方式の金属AM造形機だが、独自のプロセス制御技術により造形中の電荷中和を実現。造形中にパウダーが飛散しないため、表面性に優れる造形が可能になった。すでにイギリス軍に採用されるなど活用が期待されるとのこと。技術系輸入商社の商品発掘力は目覚ましい。毎回目利きの力に勉強させられる。
BMF Japan | ミクロンレベルのAM造形
JIMTOFでは大きなもの、金属分野などに目が行きがちだが、ミクロンレベルのモノづくり分野でもAM技術は活用できる。BMFは独自開発のアクリル材料を0.002㎜レベルで造形ができるミクロンレベルのAM造形機を紹介していた。
電機・電子部品や医療機器や細胞培養などでも活用されており、すでに世界で250台以上、日本でも10台以上の販売実績があるという。「公開できる範囲でいうと、日本では東京大学の2つの研究室やヒロセ電機さまなどに装置をご導入いただいています。装置購入以外に、造形受託のみご利用のお客様もいらっしゃいます。」(BMF Japan 田村昭夫氏)
シーメット | 唯一の国産砂型3Dプリンター
光造形方式の3Dプリンターと砂型3Dプリンターの製造販売を行う国産3Dプリンターメーカーのシーメットのブースでは、1)光造形のサンプル展示、2)砂型3Dプリンター事例、3)精密鋳造用の3Dプリンター活用事例、4)3Dプリンターで枠を造形し、その中に熱硬化性の液体カーボン材料を混入し蓋をしてから加熱することで、異方性のない造形物を作るアプローチの紹介 5)オーストリアの3Dプリンター装置メーカーのCubicure社の紹介があった。急遽出展がきまったということだったが、シーメット自体の取り組み実績の豊富さもあり盛りだくさんの内容だ。
「国産の砂型3Dプリンターの装置メーカーは弊社のみです。最近のトレンドとしては精密鋳造で3Dプリンターを活用したいという相談も増えてきました。キュビキュア社は、粘性の高い材料を高温で熱しながら造形できる装置を扱っています。」(シーメット:多田美希氏)
シーフォース | 幅広い材料に対応する光造形方式3Dプリンタ―
シーフォースの展示エリアではイタリアのDWS社の総代理店として光造形方式の3Dプリンターを紹介していた。ゴムライクでやわらかい造形サンプルや精密で硬めの造形ができる材料など、幅広い材料に対応している。
「精密造形の分野では世界有数の実力がある機種だと自負しています。日本でも製造業を中心に数百台の実績があります。」(シーフォース 西山氏)
ファソテック | ロボットアームとの組み合わせ
ファソテックのブースでは、ダッソーシステムズのソフトウェアソリューションと連携した企画を実施。市販の3Dプリンターを分解して取り出した部品の他に、汎用部材と3Dプリンターで造形した部品を組み合わせながら、KUKAのロボットアームを3Dプリンターに仕立てた参考展示が紹介されていた。実際にこの展示を手掛けた技術者が説明員として詳細な解説を行ってくれた。普段なかなか話す機会が持てない現場の人と話せるのも展示会の魅力だ。
3D Printing Corporation | 事例も多数展示
光造形方式のCarbon社のプリンターを活用して 3D Printing Corporation がDfAMに真正面から取り組み、アネスト岩田のスプレーガンを一体造形、その造形。空気漏れを解消した実際の取り組みが展示されているほか、3Dプリンティングコーポレーションが総代理店を務める金属3DプリンターMeltioの紹介があった。
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JIMTOF自体、東京ビッグサイトの東館、西館、南館をジャックした大きな展示会で、見どころも多い。広いので一日で回り切れないほどだが、南館の1ホール、2ホールに設置されているAMエリアも見どころが多数あった。できるだけ多く紹介したつもりだが、紹介しきれなかったブースもある。一つ一つのブースで密度の濃いコミュニケーションができるのが展示会の面白さだ。機会があればぜひ会場で熱気に触れてほしい。
イベント・展示会の関連記事
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。