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ShareLab NEWSハイライト記事 ー 2023年6月

毎日こまめに3Dプリンター関連のニュースを追いかけるには、時間と労力が必要だ。そこでShareLab(シェアラボ)編集部では月に1回、その月で何があったかをまとめるハイライト記事をまとめている。2023年6月は次世代3Dプリンタ展の東京開催があった。コロナ禍が開けて3Dプリンターメーカーやサービスビューロの情報発信が活性化している中、今知っておくべきことは何かをまとめている。またサステナビリティ関連のニュースも目を惹いた。その一部をご紹介していきたい。

<業界動向>

リサイクル素材の活用と金属プリントの多様化 ― 次世代3Dプリンタ展2023レポート

複数の企業が新しい取り組みをアピールする展示会会場で、注目を集めていた展示をいくつかご紹介していこう。

素材をアップサイクルする3Dプリントシステム|リコージャパン×エス.ラボ

入口からすぐの場所にブースを構えていたのはリコージャパン。各種3Dプリンターやソリューションなども手掛ける企業だが、中でも目を引いたのはブースの正面に置かれた「アップサイクルシステム」だろう。プラスチックの粉砕機、押出成型機、クーリングシステムとペレタイザー、そしてペレット式3Dプリンターが横一列に並んだ光景は、3Dプリンターを活用したプラスチックの資源循環を実現する製造ラインそのものだった。

製造業のニーズに応える大型ペレット式3Dプリンター|3D Systems×スワニー

3D Systemsのブースでは、有限会社スワニーとのタッグによる大型3Dプリント造形物に注目が集まっていた。スワニーは3Dプリント製の射出成型用樹脂型「デジタルモールド」などを手掛けるサービスビューロ。射出成型などにも取り組んできた経験を活かした3Dプリンター活用に注目が集まっている。
そんな同社は、国内では初の事例として3D Systemsの「EXT 1070 Titan Pellet プリンター」を導入し、長野県伊那市にデモセンターを開設することを発表した。Titanは最新鋭のペレット式3Dプリンターだが、他のペレット式3Dプリンターにはない特徴として、簡易な切削フライス盤の機能も内蔵している点があげられる。ペレット材料を切削で仕上げながら造形できる。切削で表面性を高め、形状を精度高く造形するモノづくりが可能になるため、他のペレット式3Dプリンターに比べて精度が高い部品生産を期待されている。
「材料も射出成型と同じ、造形速度も速く大型部品も製造できる。表面性も寸法精度も優れているという事で、3Dプリンターでできるモノづくりが本当の意味で最終部品に活用できると感じています。」(スワニー代表:橋爪 良博氏)

内部構造の設計と紐づく光造形の最終製品|LuxCreo

リサイクル素材の活用や大型化が目立つ材料押出方式の3Dプリンターに対し、光造形方式ではより微細な内部構造や特殊なアプリケーションへの応用が際立っている。日本3Dプリンターのブースで展示されていたLuxCreoの造形サンプルは、サンダルや自転車のサドルなど、柔軟性が効果的に取り入れられているものばかり。「LEAP」と呼ばれる技術によって、造形の直前に2種類の液体を混合することが可能となり、従来の光造形方式で起きていた強度不足などを改善し、より優れた素材特性を持つようになったという。

金属3Dプリンターでも進む低コスト化|SK additive innovation

次世代3Dプリンタ展の会場では、各地で金属3Dプリントのための装置や造形サンプルが展示されていた。なかでも、SK additive innovationのブースは業務用金属3Dプリンターがより現実的な選択肢になってきたことを感じられるものだった。ブースの中央に位置する「HBD-200」は粉末床溶融結合方式の金属3Dプリンター。マルエージング鋼やステンレススチール、チタン合金やアルミニウムなど幅広い素材を選択できるが、それらはメーカー提供品に限らないオープン方式。サードパーティとも協業して、造形用のパラメーターを調整する体制が整っているという。「すでに1台ヨーロッパ製の金属3Dプリンターを導入している企業が二台目として中国製の金属3Dプリンターを購入するケースが出始めています」(SK Additive Innovation代表:遅澤氏)

リサイクル素材の活用と金属プリントの多様化 ― 次世代3Dプリンタ展2023レポート

ニアネットシェイプで新しいモノづくりを現実に。MeltioのワイヤーDED金属3Dプリンターで変わるものづくり ― 3D Printing Corporation

とかく夢を語られがちな3Dプリンターだが、工法としての特徴を理解しなければ、期待した成果は得られない。特に金属3Dプリンターは、樹脂3Dプリンターよりも高額で金属材料に対する理解も求められる装置だ。一般的に普及している装置を選ぶべきか、新装置を選ぶべきか悩む人も多いだろう。
自ら金属FFF(Fused Filament Fabrication)方式、PBF(Powder Bed Fusion)方式、ワイヤーDED(Direct Energy Deposition)方式の3Dプリンターを導入し実践した成果をもとに受託造形や装置販売を行う株式会社3D Printing Corporation(以下、3DPC)が現実解として推すのがDED方式の金属3Dプリンターだった。その変革の一翼を担うのがワイヤーDED方式の金属3Dプリンターであり、ニアネットシェイプのモノづくりだ。
3Dプリンターの長所である自由な造形とリードタイムの短さを活かしつつ、造形精度や面粗度といった短所を切削などの追加工で補う取り組みは今後さらに広がる可能性を秘めている。ワイヤーDED方式で取り組むニアネットシェイプ品の活用で、最先端の特殊設備から身近な道具へ位置づけが変わろうとしているといえるだろう。

ニアネットシェイプで新しいモノづくりを現実に。MeltioのワイヤーDED金属3Dプリンターで変わるものづくり ― 3D Printing Corporation 

FUJIとJ.A.M.E.Sがアディティブエレクトロニクス普及促進にむけたパートナーシップ契約を締結

電子部品実装ロボットの製造などを行う株式会社FUJI(愛知県知立市)が、ドイツのJ.A.M.E.S社とアディティブエレクトロニクスの普及促進のためのパートナーシップ契約を締結した。J.A.M.E.S社はAMEの開発を推進するために設立された企業である
アディティブエレクトロニクス(AME)とは、3Dプリンティングの技法をエレクトロニクス分野に応用した手法のことを指す。
一般的なプリント基板は液処理で余った銅や樹脂を削り取って成型する「サブトラクト」の技法で製造される。それに対して、アディティブマニュファクチャリングは必要な場所に必要な材料のみを選択的に塗布するため、材料のロスを最少化できるのが特徴だ。

サステナブルと3Dプリンター関連ニュース

ExtraBold R&Dと南洋理工大学が、プラスチックリサイクル問題に取り組むための共同開発契約を締結

ExtraBold(以下、エクストラボールド)の子会社ExtraBold R&Dとシンガポールの南洋理工大学との間でプラスチックリサイクル問題に取り組むための共同開発契約を締結した。シンガポールは3Dプリンター活用に官民連携して取り組んでおり、世界の企業との共同研究も複数行われているが、エクストラボールドはシンガポールの南洋理工大学内にラボを設置し、プラスチックリサイクル技術の共同開発に取り組むとしている。
エクストラボールドによると、世界全体の廃棄プラスチック量は3億トンを超えており、2040年までにはこの数値が倍増すると予想されている。一方、プラスチックのリサイクル率は10%未満で、世界各国でプラスチックの再利用を促進する取り組みが進められている状況だ。適切に処理されず海に流れついたプラスチックごみが海洋生物に与える深刻な影響が世界的な課題となっている。廃棄プラスチックの増加量に対応するサステナブルな取り組みはまだ道半ばで、コストと品質の両面から解決策が求められている。日本でも「プラごみ」は分別回収が行われているが、コストの問題から大半は焼却する際の燃料として利用されており、真の再生利用には至っていないのが実情だ。
こうした社会課題も踏まえて、エクストラボールドと南洋理工大学はプラスチック材料のリサイクルに関する共同研究を行う。エクストラボールドR&D社は、再生プラスチック材料に対応したペレット式3Dプリンターやペレット製造装置を使った材料リサイクルの実績があり、南洋理工大学のキャンパス内にある「シンガポール3Dプリンティングセンター(SC3DP)」には両者が共同で研究開発を行うラボが設置される。

トヨタ自動車とSUN METALON がアルミニウム合金の新リサイクルプロセスを共同開発

新原理の金属3Dプリンター開発製造を行う日本のスタートアップ企業SUN METALONは、トヨタ自動車が同社の装置を導入し、「アルミニウム合金の新リサイクルプロセスによるCO2排出量低減」の基礎技術を確立したと発表した。SUN METALONは金属部品の造形だけではなく最終的には鉱石から粉末材料を精製することも目指しており、その取組みが具現化し始めていることを印象づけた。
SUN METALONは2021年設立の金属造形装置の開発・製造および販売を行うスタートアップ企業だ。最大の特徴は、従来の金属3Dプリンティング技術と比較して「500倍の超高効率により90%以上のコスト削減」を謳う新原理の金属3Dプリンターを開発していることである。同社の金属3Dプリンターは、金属3Dプリンティングだけでなく金属リサイクル領域においても適用可能だ。
そんなSUN METALONの開発した金属3Dプリンターを導入し、金属リサイクルの実証実験を行ったのがトヨタ自動車だ。SUN METALONとトヨタは、2023年5月の日本鋳造工学会にて、従来のアルミリサイクルプロセスと比較し、CO2排出量の低減に加え、安全・品質の向上にも寄与することができたことを共同発表している。

トヨタ自動車とSUN METALON がアルミニウム合金の新リサイクルプロセスを共同開発

ソフトウェアと3Dプリンター関連ニュース

AuthenticsがChatGPTを利用した 3Dプリンティングデータベースの無料提供を開始

フィラデルフィアとロンドンに拠点を構える製造業向けワークフローソフトウェア企業のAuthentise社が、OpenAIのChatGPTプラットフォームを活用した3Dプリンティング知識のデータベース「3DGPT」を開発、無料提供を開始した。
Authentise社は、英国政府のInnovateUK基金から助成金を受け、同基金の「Scalable AM Rule Creation & Dissemination(SAMRCD)」プロジェクトを通じて3DGPTを開発した。

プロジェクトはASTM Internationalや英国の溶接協会(TWI)などの研究機関や標準化団体と共同で実施された。助成金の要旨では、3DPTが、金属3Dプリントの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの工程全体を通して排出される温室効果ガスの排出量、カーボンフットプリントに関する知識を向上させる可能性を持つ点が強調されているという。

世界最大の国際標準化・規格設定機関ASTM Internationalは、金属3Dプリントによる部品製造メーカーを対象とした認証プログラムを開始したことでも注目を集めた。
3Dプリンティングデータベースである3DGPTは、OpenAIのChatGPTを構築している一般的な知識も活用されているものの、3Dプリンティング分野に関連する12,000以上の学術論文と規格を基に構築されているという。
3DGPTは「コンクリートをプリントできる積層造形技術は何か」といった一般的な質問から、「粉末床溶融でステンレス鋼を扱う際、欠陥の可能性を減らすにはどうすればよいか」といった専門的な質問まで対応可能だ。

ChatGPTの問題点として「情報が信頼できるものかどうか」といった懸念が挙がることは多い。しかし、3DGPTの場合は、専門的な質問については、参考文献を添えた回答がなされ、ユーザー自身でその信憑性を確認できる点に大きな特徴がある。3DGPTもChatGPTと同様に、単なるデータベースとしてではないユーザーの活用法に大きな発展性を秘めている。今後の動向についても注目していきたい。

AuthenticsがChatGPTを利用した 3Dプリンティングデータベースの無料提供を開始

技術検証から事業化へフェーズが変わる建設用3Dプリンター

建築3Dプリンターの分野では慶応大学も先端を進む研究を行っているが、事業化と研究はことなるスキルセットを求められる。そこで昨今のアカデミアの取り組みとしては客員事業家として事業化人材を採用する取り組みを行っている。サステナブルな建築に関する研究を事業化するプロデューサ―、経営者人材を取り込み、研究者の苦手を補う取り組みは全国の大学で導入や推進が計られようとしている。

旭化成がイスラエルの3Dプリンティング向けソフトウェアメーカーに出資

旭化成株式会社(東京都千代田区)が、産業用3Dプリンティングソフトウェアを開発するイスラエルのスタートアップ企業Castor Technologies Ltd.(以下、CASTOR社)への出資参画を決定したことがわかった。

旭化成は、自社が提供する樹脂CAE技術サービスの前段階にCASTOR社のソフトウェアを活用することで、より高度なシミュレーションの自動化を目指すとしている。CAE(Computer Aided Engineering)技術とは、製品設計やその前段階において、コンピューターを使ってその妥当性を検討するための手助けをする技術を指す。
旭化成が出資するCASTOR社が独自に開発したソフトウェアを使用すると、高度なアルゴリズムの適用により、ひとつの製品を構成する数千の部品を示す部品表やCAD図面から3Dプリントに適した部品を自動的に特定したり、3Dプリントに適した形状への修正提案を受けたりできるようになるという。

さらに、部品の製造コストやリードタイム、CO₂排出量を計算する機能も有しており、顧客の製造プロセスの最適化に貢献できる。CASTOR社のサービスとソフトウェアは、旭化成社が行う顧客の製品の設計開発をサポートする樹脂CAE技術サービスの前段階にあたり、親和性が高い。旭化成は、CASTOR社への出資を通じて技術理解を深めつつ、自社とCASTOR社の技術をかけあわせることで、さらに高度なシミュレーションの自動化を目指す。その実現のために、両社のサービス拡張に向けた検証を進めていくと発表した。

具体的な事例も続々

2023年6月は首都圏で日本最大級の製造業の展示会「日本ものづくりワールド」が開催されたため、最新装置や材料、ソフトウェアに関する動きに焦点をあててお届けした。業界事例は少なめでお届けしたが、展示会の会場では、前年よりもまして、具体的な社名が記載された導入事例が数多く展示され、存在感を発揮していた。バイネームで公開される事例の増加は、水面下でより多くの事例が日本に根付いていることの表れでもある。数年前の最新製品がすでに製造現場で活用されている。今回は割愛したが、着実に日本の製造業の現場に根付いているAM技術に関しても来月以降、ご報告していきたい。

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