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ShareLab NEWSハイライト記事 ー 2023年7月

毎日こまめに3Dプリンター関連のニュースを追いかけるには、時間と労力が必要だ。
そこでShareLab(シェアラボ)編集部では月に1回、その月で何があったかをまとめるハイライト記事をまとめている。
コロナ禍が開けて3Dプリンターメーカーやサービスビューロの情報発信が活性化している中、今知っておくべきことは何か。

【業界動向】

展示会で問い合わせが殺到したあのブースで話されていたAMの全て

2年に一度の工作機械の国際展示会JIMTOFで2022年はAM特設会場が用意された。そのAM特設会場で行列ができた展示ブースがある。応用技術株式会社だ。応用技術のブースでは、AMに取り組むための全体像、具体的な個別事例を徹底的に紹介する姿勢が受け、多くの引き合いにつながったという。
応用技術株式会社が他社の展示とは一線を画すのは、同社がノウハウを隠さない点だ。Fusion360などの3DCADソフトの販売や設計支援、システム開発などを手掛ける同社は、製造業ではない。だからこそ製造業的ノウハウをクライアントに惜しみなく開示できるという。
同社が手掛けた「ものづくりネットワーク沖縄」の部品最適化事例では、ジェネレーティブデザインで生成された設計データをもとに、3軸工作機械、5軸工作機械、金属3Dプリンターで現行部品を最適化し、コスト面、納期面、強度面などさまざまな観点から比較を行った。それだけにとどまらず、生成した部品の破壊検査を実際に行い、シミュレーション上での強度予測と実際の破壊検査の結果を突合し乖離がないことを確かめるなど、徹底的な取り組み姿勢は他の追随を許さない。

展示会で問い合わせが殺到したあのブースで話されていたAMの全て ― 応用技術株式会社

Formlabsのハウスイベント「FormMeet 2023」に潜入

Formlabsはユーザーイベントに積極的な3Dプリンターメーカーだ。その同社の日本法人として2023年、次世代3Dプリンタ展の会期中にイベントを開催した。同社日本法人初のユーザーイベントということだったが、数十人の同社ユーザーが参加していた。ユーザー事例として複数社の取り組みが報告された他、同社に対するクレームを伝える場を設けるなど、真摯にユーザーと向き合う姿勢を感じるイベントとなっていた。

Formlabsのハウスイベント「FormMeet 2023」に潜入

メルカリが3Dプリント製DIY製品の出品に注意喚起

メルカリは日本最大級のC2Cの物販マーケットだが、3Dプリンターを使ってハンドメイドされた製品が流通している。しかし安全性に配慮するべき食器やクッキー型などでは法的にも配慮が必要だ。
「3Dプリンターは製造時にできる積層痕で細菌が繁殖する、金属摩耗でノズル片が混入する等のリスクがあります。また、耐熱性が低く、煮沸消毒ができないため、衛生面に問題があります。例えば3Dプリンターで自作したクッキー型やケーキ型のような食品器具に該当する商品を購入し、実際に購入品を使用して調理した場合、細菌や金属片が食べ物に混入し、経口摂取することで健康被害が発生するおそれがあります。食品器具以外にも、自作したランプシェードやライトホルダー等の商品の場合、3Dプリンターの材質はPLA樹脂という植物由来のプラスチック素材で熱に弱いため、使用方法によっては溶けたり発火する可能性があり、事故に繋がるおそれがあります。」
食品器具に関しては食品衛生法の対象になるが、その説明はないようだ。利用者に忖度したというよりも、踏み込んだ説明を行うことによるさらなる説明責任を回避したい意向が透けて見えるような説明文だ。メルカリ側は、あくまでメルカリ利用者は、個人が趣味の範囲で販売しているという建付けなのでこうした表現でも問題ないと考えているのかもしれない。

メルカリが3Dプリント製DIY製品の出品に注意喚起

AM製造工程の適格性を定めるISO/ASTM52920とは?ISO 9001と何がちがう?導入で何ができる?

DIN SPEC17071など各国個別に進んできたAM分野の規格整備。この度、国際規格ISOでもAM製造工程の適格性を定める規格ISO/ASTM 52920:2023が、2023年7月4日に正式に制定された。ISO 9001やISO 14001となにが違うのか、取り組むことで、どんなメリットがあるのか気になっている方もいるかもしれない。

AMの品質保証の基本はプロセス保証、つまり事前に作りこんだ手順を再現すれば品質が保たれるという顧客と作り手の相互信頼に基づく合意だ。工程ごとに作業標準に沿って作りこまれているかどうかを発注者側が詳しく監査するにも限界がある。この壁を越えやすくする取り組みが第三者による認証だ。

その第三者の認証の基準になるのが規格だ。 今回AM製造工場のモノづくりプロセスが妥当かどうかを定めた国際標準規格が正式発布するということで、いままで過剰に求めたり、過小に評価していたプロセスの重要性に関して、妥当な水準を同意しやすくなることでスムーズな受発注を実現できるだろう。

AM製造工程の適格性を定めるISO/ASTM52920とは?ISO 9001と何がちがう?導入で何ができる? ― テュフズードジャパン

<住宅>

木質フィラメントでつくる3Dプリント茶室 ~ デジタル×伝統技術が生む新しい建築システムの可能性 ~

2023年4月、建築家の厚見 慶氏とニコラ・プレオ氏は、石川県金沢市の金澤神社で開かれた茶会で3Dプリント茶室「TSUGINOTETEA HOUSE」を発表し、注目を集めた。この3Dプリント茶室は約1,000個のカスタマイズ部品を4人で3時間のセルフビルドで組み立てられた3Dプリント茶室の最大の特徴は、特許取得の独自技術である三次元構造の継手にある。
現在、筑波大学大学院デザイン学博士課程にて建築分野のデジタルデザイン手法を研究している厚見氏。2017年頃に海外のデザイン会社で建築家として3Dプリンターを使用したプロジェクトに関わったのが、今回の3Dプリント茶室をを建築するきっかけとなる。

同プロジェクトで建設分野の3Dプリンターについてリサーチを進めていくと、欧米を中心にした建設3Dプリンターの主流な活用方法は大型の3Dプリンターを建設サイトまで持っていき、建設する手法が取られていることに気づく。これに対して厚見氏は、「鉄骨なしでは日本の厳しい耐震性基準に耐えるのが難しく仮に数百万円かけて建設しても、10年以内には耐久性が問題になるだけでなく、施工精度や可変性にも課題が残る。またコンクリートで建てた建造物は解体に相当な費用がかかる。」と考え、この問題を解決するために、帰国後に着目したのが日本的建築アプローチだ。

木質フィラメントでつくる3Dプリント茶室 ~ デジタル×伝統技術が生む新しい建築システムの可能性 ~

COBODの3Dプリンターで世界最大級の3Dプリント建築物を造形 ― Printed Farms

フロリダに本拠を置くPrinted Farmsが、COBOD社の建設用3Dプリンターを使用して、総床面積940 m2の乗馬施設を完成させた。フロリダ州ウェリントンに位置するこの建物は、構造の完全性と居住者の安全に重点を置き、ハリケーン多発地域の異常気象の課題に耐えられるように設計されている。
COBOD社は、世界で65台以上の建設3Dプリンターを販売してきた世界最大級の建設3Dプリンター装置メーカーだ。サウジアラビアでは、世界で最も高い3Dプリント建築物(全高9.9m)、で作ってきた。今回Printed Farmsが建築したのは、フロリダ州南部のウェリントンに位置する世界最大の3Dプリント建物で、乗馬施設として利用される。
総床面積939平方メートル、高さ4m、全長47m、幅25mと大きな建築物だが、フロリダの暑さ、ハリケーンや熱帯暴風雨などの地域の極端な気象条件に耐えるように設計されており、自然冷却を提供できるように壁面に内部中空構造になっているという。構築プロセスには、プリンターの5回の移動が含まれ、両面が2回完了し、中央セクションが1回実行された。

COBODの3Dプリンターで世界最大級の3Dプリント建築物を造形 ― Printed Farms

斜面や曲面でも造形物を建てられる3Dプリント技術を開発 ― 大成建設・東レエンジニアリングDソリューションズ

大成建設株式会社と東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社は、斜面や曲面、凹凸面など任意の形状に沿わせてコンクリート構造物を構築できる業界初の3Dプリンティング技術を共同開発した。本技術は、トンネルインバートの施工をはじめ建物の直接基礎や擁壁、断面補修といったコンクリート工事の施工法に革新をもたらす技術だ。人手不足に悩む建設業界での省人化や工期短縮に貢献することが期待できる。
トンネルのインバートコンクリート工事を想定して開発した3Dプリンターを用いた新たな施工法では、仕切り壁に相当する部分を3Dプリンターで自動構築し、プリンターのレール上を移動しながら内部コンクリートを打設する。本施従来の6名体制から最終的には2名への省人化が可能となり、3Dプリンターでの施工自動化により工期短縮も実現できるなどメリットが見込まれる。

斜面や曲面でも造形物を建てられる3Dプリント技術を開発 ― 大成建設・東レエンジニアリングDソリューションズ

<コンシューマー>

ウエディングドレスデザイナーが3Dプリンターでドレスデザインを一新

イスラエル在住の人気ウエディングドレスデザイナー・Ada Hefetz 氏が、Stratasys社の3Dプリンターを用いて制作した新コレクションを発表。ミラノのデザインウィークで3つのドレスが発表された。
「手作業でこのレベルのシンメトリーを実現するのは不可能です。Stratasys社の3DFashionテクノロジーなしに、これほど複雑な幾何学デザインを実現できなかったでしょう。3Dプリンターのおかげで、数式を使ってデジタルで新しい形を作り、それを直接生地に造形することができ、パターンを完璧に再現することができます」
(ウエディングドレスデザイナー・Ada Hefetz 氏)
「J850 TechStyle」はStratasys社が特許を取得したプリント方法「Polyjet方式」の3Dプリンターだ。Polyjet方式では、2Dのインクジェットプリンターのようにヘッドのノズルから3Dプリンターの印刷素材となる液体樹脂を噴射し、UVライトで硬化することを繰り返して造形する。
「J850 TechStyle」では、デザインをテキスタイルや衣服に直接プリントが可能だ。7種類の素材をフルカラーで同時に布地に直接プリントし、透明度や詳細なテクスチャを表現できる。まさにファッション分野に特化した3Dプリンターといえるだろう。

ウエディングドレスデザイナーが3Dプリンターでドレスデザインを一新

木材の廃材でつくる3Dプリンター製家具 ― リコージャパン

2023年6月19日からの3日間、アディティブ・マニュファクチャリング、3Dプリンター、材料、受託造形サービスなど、AMや3Dプリント技術に関する展示会「次世代3Dプリンタ展」が東京ビッグサイトで開催された。
今回はそのレポートの一つとして、リコージャパン株式会社のブースに展示されていた3Dプリンター製の家具と、家具素材を作製するリサイクルシステムについてお届けする。
業務用家具メーカーの株式会社アダル(福岡県福岡市)と株式会社井上企画(福岡県大川市)が、共同で広葉樹の廃材を活用した新素材を大型3Dプリンターで出力。バブル期のアダル社を代表する椅子「リンクラウンジ」を「LINK LOUNGE2.0」として復刻した。サイズは幅920mm×奥行800mm。商品化の予定はない。
両社は木材活用率100%を目指すプロジェクトを2023年1月から開始しており、今回の展示はその一環となる。
大型の成型合板によるシェルが特徴的なリンクラウンジを従来の方法で製作しようとすると、大型の金型投資と大量の電力を消費する高周波プレスが必要となり、大量生産も前提となる。
そこで、粒状の素材であるペレットをそのまま造形材料にできる「ペレット溶解積層方式3Dプリンター」を活用することで、座面を支えるシェル部分を約3時間で3Dプリントすることに成功した。
座面の造形素材として使用されたペレットの作製には、井上企画社が開発した技術が用いられている。井上企画社は、粉末化した廃材を樹脂と混ぜて粒状のペレットとして再資源化する方法を開発。今回はオーク材の廃材を粉末化し、樹脂と混ぜたものをペレット化して使用している。

木材の廃材でつくる3Dプリンター製家具 ― リコージャパン

まとめ

AM規格に関する制定は、量産化の動きと連動している。AMはプロセス保証だ。発注者側はそのプロセスを保証する取り組みが本当に適正かを検討する必要がある。第三者の認証を得ることで適正さを監査するコストと手間を省き信頼性を確認できるだろう。こうした準備を行う前提には、買い手側企業へアピールするべきアプリケーションが育っている証拠ともいえるだろう。

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